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  シーカー 作者:安部飛翔
第二章
5話
 あれから暫く経った。
 薬草は天狼の子に必要なものなので、ジュリアはほんの僅かだけ薬草を集めてそれを袋にしまいこんだ。
 スレイは双刀を収めジュリアに回復魔法を受けていたが、傷は全て塞がってもエーテルによる強化を長時間使った副作用によりひどい倦怠感に襲われ、木に寄りかかるように座りこんでいる。
 天狼はあれから僅かに身体を震わせると、すぐにその傷は塞がり血の跡すら残さない純白の毛並みに戻り、何事も無かったかのように悠然と立っていた。
 全く以って、どちらが勝者なのか分からないような有様である。
 ジュリアは天狼に礼を述べる。
「それでは、貴重な薬草を分けて頂きありがとうございます」
『それは賭けに勝った汝等の当然の権利であろう。賭けに負けた我に礼を述べられても困るな』
 苦笑するような天狼に、ジュリアは頷きながら返す。
「ええ、この薬草はスレイ君が勝ち取った正当な権利だと分かってはいますが、いずれ生まれてくるであろう貴方の子供達にとって、貴重なものなのは間違いありません。それにスレイ君が勝利したのは確かですが、それは貴方がスレイ君に全ての力を出す為の時間を与えてくれたという、手心を加えてくれたことも一因です。ですのでやはり礼を言わなければと」
 天狼は快活な思念を発して笑う。
『ハハハッ、薬草については本当に僅かな量で済ませて貰ったことに我が礼を言いたいくらいだ。それに時間を与えたのは、我がその者の全力を見たいという好奇心から、自分からやった事だ。そしてその者は期待以上の物を見せてくれた、むしろ我は満足感すら覚えているよ』
 2人の会話を聞き、スレイが立ち上がり天狼の元へと歩いてくる。
「俺からも礼を言わせてもらおう。アンタのおかげで俺は俺の限界を越える事ができ、更に俺の武器の真の姿も知る事ができた。本当にあそこまで胸を貸してもらって感謝している」
『紅刀アスラと蒼刀マーナか、まさか我が血を啜り我が精神を喰らい力を増すとはな。実に危険な力を持った武器だ、正直に言ってシークレットウェポンとしても異端の物であろうな。ところでその刀に付いてる鞘は迷宮で見つけ出された時に元から付いていた物なのか?』
 天狼は僅かに顔を顰めて双刀を見ながら質問する。
 スレイはその質問の意図が分からないながらも正直に答える。
「それは良く知らないな、ギルドマスターに聞けば分かるとは思うが」
『ならば即刻確認するが良かろう、もし鞘が元々のその刀の鞘でないのなら、成長した刀身の切れ味に耐え切れず、鞘自体が切り裂かれる危険性もあるからな。それに、それほどのシークレットウェポンの鞘ならば、何か隠された能力がまだあるやも知れん、調べておいて損は無いと思うぞ』
 天狼はスレイに忠告する。
 スレイは頷いて返す。
「分かった、忠告ありがたく頂いておこう」
『それと、だ』
 言葉を続ける天狼。
『我に勝ったからとはいえ、あまり自分の力を過信するではないぞ?この世には我よりも強いものが山ほどいるからな』
「な!?貴方より強い方がそんなにいらっしゃるのですか!?貴方を越えるような力の持ち主はそれこそ晃竜帝国の竜皇陛下やヘル王国の魔王ぐらいのものだと思っていましたが」
 ジュリアは驚愕の声を上げる。
 天狼は笑って答える。
『ハハハッ、確かに人が知る限りではそのようなものであろうな。だが、例えば竜人族の皇帝殿以外にも、伝説に語られる竜種の上級モンスターの中にはSSS級の中でも上級以上のものが何匹も実在しているし、他にも精霊王達などは自らの配下の精霊を全て従えた状態ならばSSS級でも上級以上の力を発揮するぞ』
 そのまま天狼は続ける。
『更に神々と同格のEX級の存在として、例えば島国ディラクには我と同じ神獣でありながらEX級に至っている九尾の狐がいるし、かつての聖戦で邪神に対抗するための戦力として神々が召喚し、聖戦後は迷宮に縛りつけたという異界の神々もこの世界の神々と同格のEX級の力を持っている』
 最後に溜めを作ると天狼は畏怖するような念で続けた。
『それに神々を越え下級の邪神達に匹敵する存在として、EX+級のアスール火山に棲むと言われる伝説の不死鳥も実在しているし、更には中級の邪神にすら匹敵するランク付けできない測定不能な力の持ち主として、伝説に謳われる失われし名持ちの邪龍が存在している。世の中は汝らが思うより広いぞ』
 スレイは黙って話を聞いていたが、天狼が語り終えるとボソリと呟いた。
「だが、闇の種族が傍観に徹していたとはいえ、それだけの強者達が居ながら、いや恐らくは今在るそれ以上の数の強者達が居ながら、かつての邪神との聖戦では邪神の打倒は敵わず封印するしか無かったのだな」
 天狼は少し遠くを見るような目をすると、答えた。
『いやただ1人、下級ではあれども邪神の1柱を倒した人間の男がいた。故に封印に囚われし邪神は最上級1柱、上級3柱、中級3柱、下級2柱の計9柱だ。尤も最上級の1柱である憤怒のイグナートは邪神の中でも格が違っていて、今でも封印できたことすら信じられないくらいだが』
「なっ!?下級とは言え邪神を倒した人間がいるのですか?!」
『ああ、美神ミューズの恋人だった男で、唯一闇神アライナの魂ごと消滅させる粛清から生き残った“天才”だった。しかしその男であっても憤怒の邪神イグナートの前には一瞬で殺され、その魂は輪廻の輪へと還ったがな』
「天才……ですか?」
『ああ、“天才”だ、唯一の邪神打倒の鍵だった男だ。だが結局はイグナートの圧倒的な力の前では無意味だった訳だがな』
 天狼の言葉には、紛れもない恐怖が混じっていた。
 ジュリアは邪神を倒したという人間の存在に驚き、だがそれ以上に、その人間すら一瞬で殺し、さらに天狼ほどの存在がそれほどに恐れる憤怒の邪神イグナートに、素直に恐怖を抱いた。
 天狼の言う“天才”と自らの言う天才のニュアンスの違いには気付く由もない。
 スレイは邪神と比しての自らの現時点での力の不足に不甲斐なさを感じ、そのような災厄の塊を解放してしまった罪悪感と自分がそれを倒すという責任感から、更に力を求める決意を強くする。
「天狼よ、享楽の邪神ロドリゲーニと智啓の邪神シェルノートは知っているか?」
『ああ、知っている。どちらも上級にあたる邪神だが良くその名を知っているな?その2柱がどうかしたか?』
「いや、確認をしておきたかっただけだ」
 スレイは不完全な形ではあれど、上級の邪神の2柱に既に出会ってしまっている事に、自分の運勢:Gというのはとことん強敵を惹き付けるらしいと、諦観を抱く。
 だが、シェルノートの場合を考えると、少なくともロドリゲーニに関しては、上級の邪神であっても人の身に堕した以上、その力はかなり落ちているだろうという希望的観測も抱いた。
 そうして2人は天狼に別れを告げると、比翼の首飾りで森に入った外周部分へと戻り、そこから都市まで歩いて戻ることにした。
 都市まで歩きながら、スレイとジュリアは自らの能力値を確認してみる。

スレイ
Lv:38 
年齢:18
筋力:A
体力:S
魔力:A
敏捷:SSS
器用:S
精神:EX
運勢:G
称号:不死殺し(アンデッド・キラー)、神殺し(ゴッド・スレイヤー)、双刀の主
特性:天才、闘気術、魔力操作、闘気と魔力の融合、思考加速、思考分割、剣技上昇、刀技上昇、二刀流、無拍子、高速詠唱、炎の精霊王の加護、炎耐性、毒耐性、邪耐性、神耐性
祝福:無し
職業:剣鬼
装備:紅刀アスラ、蒼刀マーナ、鋼鉄のロングソード×2、革のジャケット、革のズボン、革の靴
経験値:3782 次のLvまで18
預金:15100コメル

ジュリア
Lv:83
年齢:22
筋力:SS
体力:SS
魔力:S
敏捷:S
器用:SS
精神:S
運勢:S
称号:不死殺し(アンデッド・キラー)、寵愛者、癒し手、職業神の神殿騎士
特性:魔力操作、思考加速、魔法上昇、戦技上昇、回復魔法効果上昇、光属性、聖属性、炎耐性、水耐性、土耐性、風耐性、毒耐性、闇耐性、魔耐性
祝福:職業神ダンテス
職業:神騎士
装備:神殿騎士のバスタードソード、神殿騎士のバックラー、神殿騎士のブレストプレート、闇狼の革の服、闇狼の革のズボン、闇狼の革靴
経験値:8201 次のLvまで99
預金:59425コメル

 2人揃ってレベルは上がっていたが、天狼は殺さなかった為に、それほど極端な伸びでは無かった。
 それでも今までの敵とはランクが違うS級モンスターを狩りまくったので、スレイの伸びは顕著な物であったが。
 そうして2人は都市へと戻ったのだった。

 今、スレイは職業神の神殿の酒場で軽い食事を取りながら、ジュリアから近況報告をされていた。
 無事ジュリアの知人の娘は天魔病から快復したそうで、今では元気にしているようだが、魔法が今までより自在に扱えるようになった為、新しい魔法をどんどん覚えたがって大変なようだ。
 学園での成績も魔法分野が急激に伸びているようだし、天魔病の逸話からすると将来はSS級相当の魔術師になるかもしれない。
 ギルドでは森での異変に対して多少騒ぎがあったらしいが、結局のところどうしようもなく、天狼が森から出て来るなどといった何かが起こっている訳ではないので、静観の構えらしい。
 そのような事をジュリアは語る。
 スレイ自身もリリア経由でギルドマスターに双刀のことについて尋ね、鞘は双刀がシークレットウェポンとして見つかった時に元々付いていたもので、何らかの機能はありそうだが、調べても良く分からなかったらしいと聞いていた。
 尤も、あれから双刀についての知識が双刀自体から流れ込むようになり、鞘の機能は結局その硬度が双刀に合わせて成長していくだけという事が分かっていたが。
 それはそれで便利な機能には違い無いし、戦いの際には応用も利きそうなのでそれでいいと思っている。
 話ながらも内心でそんな事を考えていると。
「それで、なんだが。私としては断りたくて仕方ないんだが、君に頼まなければいけないことがあってね。まあ、今回のことを君に持ちかけてくれた借りもあるし、断りきれなかったんだが」
 まどろっこしいジュリアの口調に、スレイは問い返す。
「それで、結局どんな頼みなんだ」
 するとジュリアは、少々悩ましげな表情をしながらも、こう言った。
「スレイ君、フィーナとデートしてやってくれないか?」

「ふふ、ちゃんと来てくれたんですね?ありがとうございます」
 都市の広場、いつぞやの銅像とは違う場所、噴水の前でスレイはフィーナとの待ち合わせをしていた。
 もちろんこれも幼馴染達の教育の一環で、他の娘とデートしたのと同じ場所で待ち合わせするなど言語道断なのだそうだ。
 なんというかそれでは選択肢が減っていきそうだが、そんな事は自分で考えなさい、それ以前にいったい何人とデートする気なの、と思いっ切り痛めつけられた記憶がある。
 苦い思い出だ。
 だが、スレイは内心困っていた。
 なにせ約束の1時間前に来たというのに、待ち合わせの相手の方が先に待っていたのだから。
 これでは、幼馴染達に叩き込まれた、女の子に対する誠実な対応を行えていない。
「すまない、待たせてしまったか?」
 精一杯の謝罪の気持ちを込めてフィーナに謝るスレイ。
 もし次の機会があったら、フィーナ相手には2時間は早目にやって来るようにしなければ。
 余計な事を脳内のメモ帳に書き込む。
 そんなスレイにフィーナは苦笑するように答えた。
「いいえ、そんなに待っていませんよ?わたくしもちょっと前に着いた所ですし、何より約束の1時間前じゃないですか。わたくし昨日から楽しみで仕方なくて、こんなに早く出てきてしまいました。少しだけですけど待っていた時間も楽しかったです。でもスレイさんもこんなに早く来るなんて驚いちゃいました」
 フィーナが本気で言っている事に気付いたスレイは、そのことには触れる事なく次の言葉を返した。
「わかった、それじゃあ予定より早いけど行くか。なにせ今日1日で見せたい場所が沢山あるからな。急ぐ必要がある」
 フィーナがからかうようにスレイに言う。
「スレイさんは今日1日しか、わたくしとデートしてくれる気はないんですか?」
「いや、あんたの方から誘いがあったなら、何時でもデートは受け付けるさ。ただ職業神の巫女がとれる休みというのは滅多にないんだろう?それに1人で出歩かせるのも危険だっていう話だ。今回は俺が付いているという事が条件で、始めてこの都市を歩き回れるんだから色々見たいだろうと思ってな」
 苦笑するスレイ。
 フィーナは無邪気に微笑んで答える。
「それじゃあゆっくり行きましょう。また今度、スレイさんとデートする時の為に楽しみな場所を取っておかないと」
 フィーナがあまりにも自分に対し好意的なことに、珍しくも戸惑うスレイ。
「俺は、そんなにあんたに好かれるようなことをした覚えはないんだがな」
 思わず率直な問いが出てしまう。
「いえ、わたくしが勝手にスレイさんに幻想ゆめを見ているだけです、お気になさらないで下さい」
 スレイは思わず問い返す。
幻想ゆめ?」
 フィーナは恥ずかしそうな顔をすると、スレイに答える。
「ええ、わたくし達職業神の巫女は、現在あのようにクラスアップなどという、人を人の枠から外し力を与えるということを行っています。しかし本来の職業神ダンテス様の教義とは人の前に迷わぬよう、迷っても前へ進めるよう、人生の道を示すこと。クラスアップなどというシステムは邪神という障害があったが為に生み出されただけの物の筈なのです」
 言うなり、物憂げな表情をするフィーナ。
「しかし、今となっては人は手に入れた力を手放すことができず、探索者となり、そしてクラスアップをしてでも強者であろうとします。確かに人は弱き者、この世界において本来は弱者でしょうから、安易な力を求める気持ちは分かります。現に様々な人間の道を見て来ましたが、その道は殆どがか細く弱々しい物でした。しかし、クラスアップなどという自らを改造することにより、強者たらんとする人の在り様は職業神ダンテス様の教義に叶っているのかどうか、悩んでいたのです」
 フィーナは真っ直ぐにスレイを見つめると、何気なく愛の告白をする。
「そんな時、わたくしの前にあなたが現れました。わたくしが見たあなたの道はとても広く大きく輝きに満ちていました。そのような道を持ったあなたなら、わたくしに何か答えを与えてくれるのでは無いか、そのように思い、そしてそれがその内にあなたに恋い焦がれる想いとなっていました」
 思わずスレイは自嘲するように言い返す。
「だが俺は、誰よりも力を求める男だぞ?なによりそのクラスアップのシステムに欠片も疑問を抱かず、そのクラスアップのシステムを利用している1人だ」
 フィーナは首を横に振ると、ただ静かに語る。
「いえ、それでいいのです、全てはわたくしが勝手に見ている幻想ゆめ。貴方が答えを与えてくれるという期待も、わたくしの想いも只の勝手なものです、そんなに気にしないで下さい。貴方はただ貴方であってくれさえすればいい、そう思います」
 言うなりフィーナは突然表情を明るく快活なものに変え、スレイに言った。
「それではデートを始めましょうか?不束者ですがよろしくお願い致します」
「嫁に来る訳でもあるまいし、その言葉は……」
 思わず突っ込むスレイ。
 フィーナは悪戯げに笑って答える。
「さあ?先のことは分かりませんよ?」
 こうしてスレイとフィーナのデートは始まった。
 最初に連れて行かれたのは服屋であった。
 スレイとてデートのプランは考えていたのだが、フィーナの今日は自分の行きたい場所に行かせてほしいという言葉に頷くと、何故かこうなっていたのだ。
 フィーナは服屋に色々と注文を付けている。
 自分ではなくスレイの服のことでだ。
「丈夫で、様々な耐性を持っていて、それでいて動きやすい物がいいですね。彼は探索者ですので、その時の装備として使わせたいので」
「それでしたら最近入荷しましたこちらの、ミスリルを主食とする蚕型モンスターより採取した糸より作られました、ミスリル絹のものなど如何でしょうか?」
「それはいいですね、それではそれの黒く染めた物を上下セットでお願いします」
 フィーナと店員の話は付いて、どうやら買う物は決まったようだった。
「それでは、料金は8000コメルになります」
「それでは、職業神の神殿のフィーナ宛に請求を……」
 スレイは慌てて止めに入る。
「ちょっと待った。俺が装備する物なのだから、俺が料金は支払う」
 フィーナはちょっと困った顔をする。
「でも……」
 スレイは反論を許さず、そのまま料金を支払い店を出た。
「あの、どうかしたのですか?ジュリアからスレイさんは普段着も黒一色で、現在探索時に装備している皮の服も黒く染めた物という話を聞いていたので黒を選んだのですが、お気に召しませんでした?」
 スレイは僅かに眉間に皺を寄せながらフィーナに言う。
「頼むからああいう風に、俺の物をあんたの金で買おうとしないで欲しい。まるでヒモになったような気分になる」
 フィーナは納得したように頷く。
「分かりました、これが伝え聞く男のプライドってやつなんですね?ですけどジュリアが言うには、ずっと革のジャケットと革のズボンと革の靴で探索を続けてるそうじゃないですか?しかも一部に穴が開いた物をそのまま使用しているとか。だめですよ、探索者なんですから装備にもちゃんと気を使わないと」
 スレイは頭を押さえつつも、仕方なく頷く。
「わかった、これからは気をつけることにする。それで次に行く場所だが、フィーナ?」
 フィーナはスレイの手を掴むと、また自分の行きたい場所に向かって行く。
「外には出たことがないんじゃなかったのか?」
「その分、都市のガイドブックなどは読み漁ってましたから、色々なお店を知っているんです」
 次に連れて行かれたのは靴屋であった。
 スレイは魔法のかかった特殊ラバーを靴底に使った牛鬼の革のスニーカーを買わされ、5000コメルの散財をする羽目になった。
 その後、やっと装備関係は落ち着いたかと思えば、街中の喫茶店を見やりフィーナは言う。
「あ、スレイさん、あれ頼みましょうあれ、わたくしどうしても一度やってみたくて」
 スレイはその先にある、カップルが2人で1つのコップから2本のストローでジュースを飲んでいる光景を見て頭を抱える。
「勘弁してくれ」
 だが勿論、勘弁はしてもらえず、スレイは羞恥に耐えながらフィーナと共に2本のストローで一つのジュースを飲むことになった。
 そうして一日中スレイはフィーナに振り回され、散財をする羽目になりながらも、最後までフィーナを楽しませ、現在。
 スレイは職業神の神殿の、職業神の巫女の宿舎のフィーナの部屋に居る。
 これは相当に不味い事であったが、フィーナの嬉しそうな様子に拒否することもできなかった。
 そうしてふと暇を持て余し今日一日の散財を思ってカードを見てみる。

スレイ
Lv:38 
年齢:18
筋力:A
体力:S
魔力:A
敏捷:SSS
器用:S
精神:EX
運勢:G
称号:不死殺し(アンデッド・キラー)、神殺し(ゴッド・スレイヤー)、双刀の主
特性:天才、闘気術、魔力操作、闘気と魔力の融合、思考加速、思考分割、剣技上昇、刀技上昇、二刀流、無拍子、高速詠唱、炎の精霊王の加護、炎耐性、毒耐性、邪耐性、神耐性
祝福:無し
職業:剣鬼
装備:紅刀アスラ、蒼刀マーナ、鋼鉄のロングソード×2、ミスリル絹のジャケット、ミスリル絹のズボン、牛鬼の革のスニーカー
経験値:3782 次のLvまで18
預金:1280コメル

 あまりと言えばあまりの残高に、少々頭が痛くなる。
 これは明日、すぐに迷宮に潜らないといけないなと思う。
 そんな中、ベッドに座ったフィーナが妙に静かな瞳で自分を見つめてきている事に気付く。
「どうした?」
 尋ねると、静謐な声でフィーナは答えた。
「スレイさん、決して無理をして死ぬようなことだけは止めてくださいね?私もそれにジュリアや他の方だって、既に貴方の事を大事な人だと思っています。そしてスレイさんにとってもそれは同じだと、自惚れかもしれませんがそう思っています。もう貴方の命は貴方一人のものではないんです」
「そうか……そうだな、分かっている、俺は死ぬつもりなんて無いさ。死ぬことに恐怖は感じないが、この世には大事なものや俺が果たさなければいけない責務がある。俺は俺の命を粗末にすることは無い、それでいいか?」
「はい」
 フィーナは明るい笑顔で頷き返す。
 そうしてフィーナは突然頬を赤く染め、何かを言い出そうか言い出すまいか、迷うように視線を彷徨わせる。
 昼の告白の事も有り、スレイは彼女の態度が何を示しているのか理解した。
 なのでスレイから切り出す。
「フィーナ、1つ言っておく。俺は今複数の女性と肉体関係を持っていて、その中にはジュリアもいる。だが俺は今フィーナのことを抱きたいと思っている」
「ふぁ、ふぁい!?」
 スレイの突然の言葉に妙な声を出してしまうフィーナ。
 構わずスレイはフィーナの隣に腰を下ろすと、フィーナの肩を抱き寄せ逃げられないようにする。
 顔を真っ赤に染めたままフリーズするフィーナ。
 その顎に手をやり、スレイはフィーナに口づけする。
 フィーナは一瞬大きく目を見開くと、そのままスレイに身を任せるようにする。
 スレイはそのまま舌で以ってフィーナの口を開かせ、舌でフィーナの口内を全てなぞりあげ、唾液を飲み、逆に流し込み飲ませる。
 そのまま舌を絡め、最後に甘噛みすると、フィーナがビクンと震えるのに合わせ、そのまま口を離す。
 2人の唇の間には唾液の糸が繋がっており、それが切れて落ちていく。
 そしてスレイは硬直したままのフィーナをそのまま押し倒す。
 その時になって我に返ったフィーナがあわあわといった感じでスレイに言う。
「ちょっ、ちょっと待って下さい。わ、わたくしまだそこまで準備ができていないというか、さっきのキスでもいっぱいいっぱいというか、えーと、あの、その」
「悪いが待たない」
 スレイはフィーナの着衣に手をかける。
「俺はフィーナの事が好きだ、だから抱く、他の誰にも渡すつもりはないからな。逃がすつもりも無い、多少強引にでも抱かせてもらう。それにこんな時間に自分の部屋に男を誘う意味を理解してもらわないとな」
 スレイのその強い口調の言葉にフィーナは顔を赤く染めたまま、硬直しながらもスレイを見て、肯定するようにコクンと頷く。
「わ、わかりました。ふ、不束者ですがよろしくお願い致します」
「そういえば、朝にもそのような事を言っていたな。今度は本当に俺の物にするから間違いでは無い訳だが。できる限り優しくする、だから耐えてくれ」
 スレイはそのままフィーナの着衣を脱がせ覆い被さっていく。
 そして夜は更けていった。


面白いと思ってもらえたらどうぞ宜しくお願いします。



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