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  シーカー 作者:安部飛翔
第一章
10話
 ギルド内にアッシュの叫び声が響き渡る。
「だ~っ!!何を考えてるんだ二人とも!!エルシア学園を卒業してから一年間は、探索者として金銭的には実家から、一切援助を受けられないのを忘れたのか?!なんで探索と関係無いただの買い物でそんなにお金を使っているんだよ!!」
 アッシュの怒りの原因は単純だった、ただ二人の少女のカードを見れば事足りる。

ルルナ・グラナリア
Lv:15
年齢:18
筋力:C
体力:C
魔力:E
敏捷:C
器用:C
精神:D
運勢:D
称号:エルシア学園卒業生
特性:闘気術、格闘技上昇
祝福:闘神バルス
職業:闘士
装備:ダマスカスのガントレット、ダマスカスのブレストプレート、絹の服、絹のズボン、革の靴
経験値:1450 次のLvまで50必要
所持金:820コメル

エルフ・グラナダ氏族のエミリア
Lv:14
年齢:18
筋力:E
体力:E
魔力:B
敏捷:D
器用:C
精神:C
運勢:C
称号:エルシア学園卒業生、森エルフ
特性:思考加速、魔法上昇、精霊の祝福
祝福:森神ルディア
職業:魔術師
装備:祝福の杖、エルフのローブ、エルフの靴
経験値:1380 次のLvまで20必要
所持金:1310コメル

 そう、昨日の買い物で女性としての購買意欲を存分に刺激された二人は、スレイという荷物持ちを最大限活用し、探索とは関係の無い女性用の品物の数々を、それも高級なものをかなり買い漁ってしまったのである。
 この2人にしては珍しい事だ、特にエミリアは森の民たるエルフとして質素さというものを備えている筈だった。
 そのエミリアからして所持金の残高は1310コメルである。
 恐らくはスレイという意識する異性が現れた事により、そういう女性的な物により気を使うようになったのだろう。
 特に今までそんな感情を持った経験の無かった二人のことである、今までの反動が急激に出たのであろう。
 だが例え、どんな理由があろうともアッシュの怒りはなかなか収まらない。
 探索の備えとして回復薬や魔力回復薬などの様々なアイテム類は、探索者としての必需品にも関わらずなかなかに高価なのである。
 更にこの迷宮都市では特にそれらの品物の需要が高いだけあり、この都市での値段は他と比べてかなり高くなっているのだ。
 以前の探索はあくまでスレイが行った事がある階層で、1度のみの戦闘でスレイが3人の力量を確かめる為に行った物なので、そういったアイテム類は必要無いというスレイの言葉に従って特に準備はしなかった。
 しかし今日からは、少なくともスレイを除いたアッシュ達3人は【静炎の迷宮】を地下6階から本気で探索していくつもりになっている。
 なので3人にとっては探索のためのアイテム類の準備は必須なのである。
 だというのに無駄遣いを行った少女2人の買い物に対してアッシュは怒りを抱いていた。
 それはスレイに対し、責めるような言葉も出ようものである。
「スレイ!どうして2人を抑えて、無駄な買い物を控えさせてくれなかったんだ!?」
 だがスレイにも言い分はあった。
「男が、女の買い物に口を出せると思うか?」
 どこか疲れたような物言いに、それもそうかと思ったアッシュの怒りは多少静まる。
「それに金の問題なら、今日からの探索で充分に稼げるだろう」
 スレイの変わらない口調で語られた言葉に、アッシュは流石に鼻白む。
「それで、スレイは今いくら所持金があるんだ?」
「2540コメルだな」
 アッシュは多少は落ち着きを取り戻し、言葉を続ける。
「ふぅ~、それじゃあ仕方無い。今日だけは俺の所持金で消耗品や必需品は買っておくけど、次からは折半だからな?もう二度とそんな無計画な買い物なんてするなよ!」
 流石に反省した様子の2人の少女は、ただ肯定の返事をするしかなかった。
「わかりましたわ」
「以後気をつけます」
 そしてアッシュが持つ10240コメルから、およそ8000コメル以上もの金額が出され、その日の探索の準備が整えられたのだった。

 さすがに他の探索者達が持ち去ったかと、スレイは安堵していた。
 スレイは一昨日の夜中自らが放置していた、モンスターを倒した後の換金用部位が全て持ち去られているのを見て、他3人に不信感を与えずに済んだ事に安堵していた。
 流石にモンスター退治後の換金用の部位が、持ち去られる事もなくそのまま放置されているのを見れば、3人も何らかの不審を感じただろう。
 その不審がスレイに繋がるとは思わないが、一つでも不安要素は少ない方が良い。
 だがやはり迷宮に潜る探索者の多さを考えれば、換金用の部位が放置されていれば探索者によって剥ぎ取り持ち去られるのは当然の事で、スレイの心配は杞憂に過ぎなかったようだ。
 そんな中、スレイは基本的に自らに襲い掛かって来るモンスターのみを切り裂き倒す事に徹して、ほとんどのモンスターの相手は3人組に任せて観察していた。
 元々ここのモンスター達は、一昨日の夜中に尋常で無い数を葬った事もあり、魂の力に慣れが出来てしまって、スレイには殆ど経験値は入らないし、何よりパーティを組んでいる以上、他3人が倒した魔物の魂でも、微々たるものではあるがスレイの経験値となる。
 そのため3人が経験値とは別の戦いにおける経験を積む事を優先する事にしたのだ。
 ちなみに一昨日の夜中の件だけは伏せて、それらの事は3人にも伝えてある。
 なので3人は張り切って抜群の連携を見せて、着々と経験値を稼ぎLvを上げ戦闘経験も積み、その成長をスレイに見せつけていた。
 フレイヤの頼みでもう暫くは3人とのパーティを続けなければならないスレイではあるが、いくら夜中に1人での探索を行いより多くの経験を積む事にしたとは言っても、やはりこの3人がスレイにとっての足枷になっていることには変わり無い。
 まして、スレイの能力値には炎の精霊王の加護という隠し続けねばならない秘密ができたので、パーティを組み続けるにはその内無理が出てくるであろう。
 暫く付き合うと約束した以上は、当分は付き合うが、その当分を短縮できるようにスレイは色々と考えていた。
 この3人だけで迷宮探索を行うのにもう何ら心配は無いと判断した時点で、パーティ解散をしても問題は無かろう。
 元よりフレイヤのお願いとて後輩達のことを気遣ってのことであろう。
 もはやその目的は達せられていると言っても構わないだろう、これだけ精神的に安定した戦闘を行えているのだから。
 このまま3人には自分達の実力にある程度の自信を付けさせ、スレイにも事情がある事を差し支えない程度に説明し、その上でその目的には3人では付いて来れない事も話し、理を持って説き、例えパーティを解散しても友人付き合いをやめるつもりが無い事を話せば、パーティ解散をそこまで強固に拒む事は流石にあるまい。
 それに時々だったら臨時のパーティ登録をして一緒に迷宮探索をしても構わないと思う。
 その為にも3人の成長は急務であるし、何よりこの迷宮ならばイフリートの協力も得られる可能性がある。
 この迷宮を含め、あと2、3の迷宮を攻略後に、パーティ解散の目処を付けたスレイは、そのままエンカウントするモンスターとの戦いを着実にこなす3人の後から自分に襲い掛かるモンスターを切り裂きつつ、3人の後を付いていくのであった。

【静炎の迷宮】地下15階(最下層)“蒼炎の間”最奥の広間
 やはり素質があるのだろう、一昨日のスレイよりは劣るが学園を卒業したばかりの初心者探索者としては異常なまでの速度で3人は迷宮を踏破し、この迷宮のボスモンスターだと彼らは思っている、イフリートとの戦闘を見事な連携でこなし、勝利を収める。
 イフリートが只のB級ボスモンスター程度の力しか出してなかったとはいえ、これは快挙だろう。
 つまりはあのアンデッド・ナイトと同レベルの相手を、3人のみで連携して倒してみせたと言うことなのだから。
 イフリートは3人に倒されたふりをし、崩れ落ち消えていきながら、スレイへと意味ありげな視線を向け笑って見せていた。
 送られてくる魂ではなく精霊の強大な力、見ると3人も何か違和感に戸惑うようにその力を受け容れている。
 流石にこれはやりすぎだろうと、苦笑するスレイ。
 今の一戦のみで、3人とスレイは大幅な経験値を得ていた。
 結果、今回の探索によって3人とスレイは大幅なLvアップを果たしていた。

スレイ
Lv:14
年齢:18
筋力:C
体力:B
魔力:C
敏捷:S
器用:S
精神:EX
運勢:G
称号:不死殺し(アンデッド・キラー)
特性:天才、闘気術、魔力操作、闘気と魔力の融合、思考加速、剣技上昇、炎の精霊王の加護、炎耐性
祝福:無し
職業:剣士
装備:ミスリルのサーベル×2、鋼鉄のロングソード×2、革のジャケット、革のズボン、革の靴
経験値:1340 次のLvまで60
所持金:2540コメル

アッシュ・グラナリア
Lv:19
年齢:18
筋力:B
体力:B
魔力:E
敏捷:D
器用:C
精神:D
運勢:D
称号:エルシア学園卒業生
特性:狂化、戦技上昇、炎耐性
祝福:戦神アレス
職業:戦士
装備:ダマスカスのバルディッシュ、ダマスカスのプレートメイル、重量軽減のアミュレット
経験値:1829 次のLvまで71必要
所持金:2120コメル

ルルナ・グラナリア
Lv:18
年齢:18
筋力:B
体力:B
魔力:E
敏捷:C
器用:C
精神:D
運勢:D
称号:エルシア学園卒業生
特性:闘気術、格闘技上昇、炎耐性
祝福:闘神バルス
職業:闘士
装備:ダマスカスのガントレット、ダマスカスのブレスとプレート、絹の服、絹のズボン、革の靴
経験値:1750 次のLvまで50必要
所持金:820コメル

エルフ・グラナダ氏族のエミリア
Lv:18
年齢:18
筋力:E
体力:E
魔力:A
敏捷:D
器用:C
精神:B
運勢:C
称号:エルシア学園卒業生、森エルフ
特性:思考加速、魔法上昇、精霊の祝福、炎耐性
祝福:森神ルディア
職業:魔術師
装備:祝福の杖、エルフのローブ、エルフの靴
経験値:1700 次のLvまで100必要
所持金:1310コメル

 だがこれで、あと1つでも迷宮の探索を完了させればパーティ解散も可能になるだろう。
 スレイは心の中でイフリートへと感謝の念を抱いた。

 ギルド内換金所、メアリーは並べられた品々に微かな驚きの表情を見せる。
「へぇ~!これだけの量を入手してくるだなんて、いったいどれだけモンスターを倒したんだいあんた達?品目からすると静炎の迷宮に潜ったんだろうけど、それにしてもこの量はねぇ。それに何よりこいつは……」
 メアリーは今回の探索のパーティの戦利品の中から、一つの火の精霊石を持ち上げるとその純度と大きさに溜息を吐く。
「本当に大したもんだ。恐らくイフリートからの戦利品だろうけど、これだけの物が出ることなんて滅多にないよ。この純度はあり得ないと分かっていても或いは火の純元素が籠ってるんじゃないかと思える程だし、その上この大きさならかなりの金額になるね。更にもし武器への属性付加に使えば相当の火属性の魔法強化が期待できる代物だよ。それでどうする?もし引き取るなら他全部合わせて12000コメルに、こいつ一つで100000コメルで、合計で112000コメルって相当な額になるけど、こいつだけは武器強化に使うってのも有りだと思うよ?」
「そうだな、構わない。全て換金してしまって「ちょっと待って下さい!その火の精霊石はスレイさんの剣の強化に使ってもらえませんか?!」」
 スレイの言葉に被せるようにエミリアの大声が響いた。
 つられたようにアッシュとルルナも賛同の声を上げる。
「そうだな、俺たちは相当スレイに世話になってるしそうした方が良いと俺も思う」
「そうですわ、それに前々からスレイさんが使うにはその武器では釣り合いが取れてないと思っていましたの、この機会に強化されるのが宜しいと思いますわ」
 3人の言葉に一瞬戸惑うスレイだが、思いなおしたように頷く。
「わかった、今回は厚意に甘えさせてもらう。ただその代わり換金した12000コメルは全て3人で分けてくれ。今回の俺の取り分はその火の精霊石と言う事で、それでも俺の方がかなりの得をしてしまっているが」
 3人はただ笑う。
「そんなこと気にしないで下さいませ、わたくし達がスレイさんにお世話になったのは間違いございませんもの」
 代表したルルナの言葉に他2人も頷いた。
「そうか、こういう時に言うべき言葉は違ったな。ありがとう3人共」
 そして4人は笑い合った。
「青春してるねぇ~」
 メアリーは目を細めて笑っていた。

 換金所を出て次にギルド内の銀行で3人がそれぞれ自分のカードに4000コメルずつ振り込む。
 次に銀行を出てギルド内の鍛冶工房へ行くと、ダンカンにミスリルのサーベルの1本と火の精霊石を渡し剣の強化を頼んだ。
 剣の強化を行うのには丸1日かかるので次の日に来てくれと言われて、そのまま4人は鍛冶工房を出る。
 するとギルド内が常になく騒がしいと同時に、探索者の数も少ない事に気付く。
 少々気になった4人はギルドのカウンターへと近寄っていった。
 そこには何やら忙しそうにしている職員達がいて、その中にはリリアも居た。
 スレイはリリアに話しかける。
「久しぶりだな、リリア」
 すると動きを止めたリリアは4人に目を向けスレイの顔に少し表情を明るくするも、2人の少女を見た後スレイにじとーっとした視線を向け、少々苛立たしげに答える。
「本当に久しぶりねスレイくん、それで何か御用かしら?私、今ちょっと忙しいんだけど」
 リリアの態度に少々疑問を覚えながらも、スレイは率直に問いかける。
「そのことなんだが、何やらリリアだけでなくギルド全体がいつもより騒がしい感じがするんだが、何かあったのか?」
 リリアは少し不機嫌そうになるも、思いなおしたように他3人の顔を見た。
「そうね、スレイくんにもそちらの3人にも無関係な事じゃないし、話しておいた方がいいわね。実はギルド内の死体安置所から死体が一体消えたのよ」
 スレイは疑問の声を上げる。
「俺たちと無関係でないだと?」
 リリアは続ける。
「ええ、消えた死体があのアンデッド・ナイトの事件で死亡した3人のエルシア学園の教師の内の1人だからね、スレイくん達にも無関係じゃないでしょ?それでアンデッド・ナイトによって殺されたという事もあって、アンデッドになって街に出た可能性も考慮して人海戦術の捜索依頼を出しててね。だから探索者の中でも初心者のそういう依頼をこなして生活を成り立たせてる人達は、早速依頼を受けて動いてるから、ちょっと私達ギルド職員とかそういった探索者達は慌しく動いてるって訳」
 突然エミリアが割り込んでくる。
「あの、もしかして、その消えた死体というのは、アレスタ教師の死体でしょうか?」
「確かにそうだけども、どうしてその事を?」
 エミリアは納得したように頷くと、以前街のカフェテリアでアレスタ教師らしき姿を見かけた事を話す。
「本当!?それじゃあやっぱりアンデッド化してる可能性が高いってことね。情報提供ありがとう、その事は上に伝えておくわね」
「あの、わたし達にも責任があることですしわたし達も協力した方が」
 エミリアの意見をリリアは一蹴する。
「あれは何者かの手で起こされた事件なんだから、あなた達に責任なんか無いわよ。それにこうやってギルドも大きく動いてる事だし、すぐに解決すると思うわ。だから、そんな事気にせずゆっくり休みなさいな。迷宮を探索して来たばっかりなんでしょ?疲れが顔に出ているわよ?」
 リリアの言葉にルルナとアッシュの2人も賛同する。
「そうですわエミリア。こうしてギルドも動いてる事ですし、わたくし達がいたからと言ってそれほど役に立てるとは思えませんわ」
「それに迷宮探索で俺たちが疲れてるのも事実だしな。早めに帰って休もうぜ」
 エミリアも納得したように頷く。
「そうですね、探索者としては休養も重要な事ですし、気にはなりますけれども今回は2人の言うように休むべきでしょうね。ただリリアさん、この件が解決したら教えて頂けますでしょうか?やはり気になりますので」
 リリアが了承したのにエミリアが納得すると、4人はそのままギルドを出る事にした。
 突然、スレイの背中にリリアが呼びかける。
「スレイくん、迷宮探索に夢中なのもいいけど、たまには私のところにも顔を出してよねー!!」
「そうだな、考えておこう」
 苦笑するスレイ。
 リリアはまだ何やら言っていたが、そのままギルドの外へと4人は出て行った。

 ギルドから出てそれぞれ解散しようとしていた3人にスレイは声をかける。
「すまないが3人共、大事な話があるので俺と一緒に宿まで来てくれないか?」
 3人は疑問を顔に浮かべながらも了承し、そのままスレイと共に3人はフレイヤの宿へとやってくる。
 そして宿の食堂のテーブルに4人でかけると、スレイは話を切り出す前にフレイヤに声をかける。
「すまないフレイヤ。大事な話があるのでフレイヤも聞いてくれないだろうか?仕事が忙しければ終るまで待たせてもらうが」
 フレイヤは4人の元へやってくる。
「ええ構わないわ。ちょうど今は夕食時の前で仕込みなんかも全部終ってるし、お客さまもそう居ない時間帯だしね」
 フレイヤが席に着くのを待ち一呼吸入れると、スレイは切り出した。
「3人共、それにフレイヤも、すまないが次の迷宮探索が終ったら俺はパーティを解散してソロに戻らせてもらいたいと思う」
「え!?」
「そんな?!」
「どうしてですの!?」
「スレイさん!?」
 驚きの声を上げる4人に対して、誠実であるよう心がけながらスレイは話を続ける。
「フレイヤには少しだけ話したことがあるが、実は俺にも迷宮探索するのには目的がある。そしてその目的の為には3人と一緒にいると、ちょっと都合が悪いのでな」
 3人が口々に何かを言おうとするのを制してスレイは続ける。
「はっきり言ってもう3人共俺がいなくてもやっていける自信は付いていると思う、だからフレイヤ、その点は心配しなくていいぞ。それに何よりあくまでこれはパーティ解散という話だ、3人の事は大事な友人だと思ってるし3人とはこれからも友人付き合いを続けたいと思っている。それに時々臨時でパーティを組んだりする分には構わない、あくまで目的の為に普段はソロで迷宮探索に臨みたいというだけだ」
 席が静まりかえる中、まずフレイヤが口を開く。
「本当に、3人だけでやっていって問題無いとスレイさんは判断したのね?」
「ああその通りだ」
 フレイヤは黙り込み、そして頷き肯定の意思を見せる。
「わかったわ」
 フレイヤが肯定したのを見るとまずルルナが慌てて言葉を発する。
「その目的というのはお聞きするわけにはいきませんの?」
「ああ、すまない」
 次にエミリアが問う。
「目的の為にはどうしてもパーティを解散する必要があるんですか?」
「そうだ」
 最後にアッシュが、重々しく口を開いた。
「次で最後という意志は変えられないんだな?」
「ああ」
「だが俺たちとの友人関係は続けていきたいと?」
「そうだ」
 黙り込むアッシュ、そして数十秒後。
「わかった」
「アッシュ!?」
「お兄様!?」
 叫ぶ2人にアッシュは落ち着いて諭す言葉を発する。
「男にはな、やらなきゃいけないってことが何かしらあるもんだ。今となってはスレイの言うように、俺たちも3人で充分やっていけるだけの自信は付いたと思う、スレイとの間の友人関係が切れる訳でもない。だから、黙ってスレイのやりたいようにさせてやろうじゃないか?」
 黙り込む2人。
 そんな4人の暗い雰囲気を払拭するように、フレイヤが明るく声を上げる。
「さてと、それじゃあ4人の為に思いっきり腕を振るわなきゃね」
 4人が不思議そうな顔をする。
「フレイヤ?」
 スレイの疑問の声にフレイヤは答える。
「次が最後の探索で、スレイさんと3人はパーティを解散するんでしょう?いくら友人としての付き合いは続けると言っても、けじめのためにも3人共、最後は明るくスレイくんを送り出してあげなさいな」
 納得したように3人は頷いた。
 そしてその日の4人はテーブル席で明るく騒がしい一時を過ごしたのだった。
 パーティ解散の晩餐後、遅くなった為その夜は3人も宿へと泊まる事となった。
 そして夜、スレイはルルナとエミリアの2人に呼び出され2人の部屋を訪れた。
 ノックし名乗ると開いていると答えが返ってきたため、そのまま扉を開き中へと入る。
 そこには買い物の時と同じ服装の2人がいた。
 真剣な表情の2人に多少戸惑いつつも問う。
「どうした、呼び出したりして何か用か?」
 スレイが聞くと2人は顔を見合わせた。
 そして2人揃ってスレイに告白をする。
「私、スレイさんのことが男性として好きです!」
「わたくしもですわ!」
 予想しないでもなかった告白なので、即座に答えを返す。
「悪いが、今俺には関係まで持ってる相手がいる、だから2人の好意には答えられない」
 だが、2人は予想外の答えを返してきた。
「知っています」
「フレイヤさんのことですわよね」
 スレイは思わず問いかける。
「知っているなら何故?」
 ルルナとエミリアの2人は顔を見合わせ、ルルナが答える。
「フレイヤさんから聞きましたの、でもわたくしはそれでもかまいません」
 スレイは唖然とする。
「フレイヤのことだけじゃない、俺は旅の中で他にも関係を持った相手がいる、それで構わないというのか?」
「ええ、私達2人も貴方の恋人になれて愛してくれるなら、それで構いません」
「次で最後の探索と聞いて、証が欲しくなりましたの。スレイ様の言う友人関係では物足りないですわ、わたくし達はスレイ様の恋人になりたいんですの」
「フレイヤさんも後押しをしてくれました、貴方はただ1人の恋人に納まるような人では無いと、これからも数多くの女性を虜にして物にしていくだろうと」
「だからわたくし達を抱いてくれませんか?少しでもわたくし達に女として好意を抱いていてくれるのなら」
 スレイはあまりにも自分にとって都合の良い展開に微かに呆然とする。
 だが2人の姿とその誘いはあまりに魅力的だった。
 この2人が自分以外のものになる、そう考えると苛立ちすら湧いてくる。
「本当にいいんだな?」
 最後の確認をする、スレイはもう自分の欲望が抑えられない所まで来ている事を自覚した。
 そして後押しに2人の返事が返る。
「はい、どうぞスレイ様の思うままにわたくし達を愛して下さい」
「もう覚悟はできています、私達をスレイさんのものにして下さい」
 もう限界だった、スレイは2人を両手で抱き寄せ、その豊かな胸と、サイズこそ普通だが形の良い胸を揉みしだく。
「あっ」
「きゃっ」
 そしてそのまま交互に2人の唇を吸い、唾液を飲み飲ませて、ディープなキスを続ける。
 2人の緊張で硬くなっていた肢体がかすかに柔かさを取り戻して行くと、スレイはそのまま2人をベッドに押し倒した。
「悪いがもう逃げられないぞ、俺は2人を俺のものにする、エミリアもルルナも俺だけのものだ、他の誰にも指一本触れさせるな、いいか?」
 独占欲丸出しのその荒々しい言葉に2人は頷いた。
 そしてスレイは、目の前にある2つの女体をときほぐし、最後まで征服しつくすために、あらゆる方法で2人の身体を開かせていった。


面白いと思ってもらえたらどうぞ宜しくお願いします。



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