ブックリスト登録機能を使うには ログインユーザー登録が必要です。
  シーカー 作者:安部飛翔
第一章
2話
 その時突然女性達の悲鳴が響き渡り、スレイは悲鳴が聞こえた方へ走り出す。
 悲鳴が聞こえた“試練の間”最奥の広間に駆けつけたスレイが見たものは凄惨な光景だった。
 まず3つ、重武装をした人型のモノがあるいは頭を潰され、あるいは関節がありえない方向に捻じ曲げられ、あるいは完全な血だるまとなってそこにある。
 そして他には3人の生きている人間と、惨劇を生み出したであろう主が其処には居た。
 3人の生きている人間はスレイと同年代と思われる青年1人と少女2人で、少女2人を護るように青年が傷だらけになりながらも少女2人の前に立っている。
 その手にはバルディッシュと言われる形状の戦斧を構え、その茶色い瞳には戦闘意欲が失われる事なく宿り、その勝ち気さを示すように髪はツンツンに尖った茶髪である。
 そして護られている2人、この2人が先ほどの悲鳴の主だろう。
 1人は豪奢な金の髪をツーテールとし、同じく金の瞳に恐怖を湛えながらもう1人の少女を抱きしめる、尖った耳からエルフと思われる少女。
 もう1人は腰まであるストレートの茶髪に同じく茶色の瞳から涙を流し動けないでいる様子の少女。
 彼ら3人は共通した服装をしていた、確かあれはこの迷宮都市に存在する探索者養成学園の中でも名門と呼ばれるエルシア学園の制服だったハズだ。
 そして惨劇を生み出したであろう主、重武装を身に纏った巨大な人型の骸骨、B級ボスモンスター、アンデッド・ナイトは今にもその手に持った巨大なハンマーを茶色の髪と目をした青年へと振り下ろそうとしていた。
 すぐさま敵の名前が浮かんだのは、探索者となった者は迷宮に出現するモンスターであればそのランクと名前はすぐに頭に浮かぶように、肉体改造の際に改造されているからである。
 ともあれ一瞬でそれだけの情報を見て取ると、スレイはB級のしかもボスモンスターにこのような初心者用の迷宮で遭遇したことに驚きながらも、すぐさま闘気術と魔力操作の併用で一気にその身を雷速へと加速させる。
 モンスターとボスモンスターの違いは単純な物である、同じランクの中でも下級から中級までのモンスターが通常モンスターで通常エンカウントする敵であり、同ランクの中では最上級に位置して、特別なイベントや場所、例えば今回のように最奥の広間でしかエンカウントしなかったりするのがボスモンスターである。
 B級ボスモンスターであるアンデッド・ナイトはこのような迷宮で出会うにはあまりにも場違いな存在であった。
 しかし闘気術によりスレイの身体と武具は強化され、魔力操作によりコーティングされた身体と武具は物理法則の縛りを殺す。
 そして闘気術と魔力操作の併用により強化された状態で、一瞬で茶髪の青年の前へと躍り出たスレイは、振り下ろされる巨大なハンマー目掛け、剣を振り上げる。
 魔力操作により重力の縛りから解き放たれた剣はハンマーに触れると同時にそのハンマーの質量をも奪い去る。
 闘気術により強化された筋力で振り上げられた強化された剣は、巨大なアンデッド・ナイトの力を圧倒し折れる事もなくハンマーを思いっきり弾く。
 結果、その体重差や力の差からは信じられないような光景、スレイに吹き飛ばされる巨大な骸骨という冗談のような光景が演出される。
 広間の石壁に重量感ある音でめり込むアンデッド・ナイト。
 信じられないような光景を3人のエルシア学園の学園生達が呆然としたように眺めていた。
 3人に対しスレイは落ち着いた声をかける。
「おい、大丈夫か?いったい何があった?」
「お、お前はいったい?」
 スレイの声で我に返ったのか、茶髪の青年が疑問の声を投げかける。
 だが、めり込んだ石壁から骸骨の身体が引き剥がされる音が響き渡ると、スレイはそちらに向き直り、静かに告げる。
「いや、話は後で聞くことにしよう。今はあいつを片付けるから、お前達は大人しくしていろ」
 言うや否や、スレイは闘気術と魔力操作の併用で現時点での最高到達速度である雷速に至り、残像すら残さないような超スピードでアンデッド・ナイトに斬りかかる。
 コマ落としのように消え去ると同時に敵の数メートル手前に出現すると思いっきり剣を振り上げ一瞬で飛び上がり、前転をするように、巨大なハンマーを持った敵の右腕の肩を、高い防御力を持つと思われる肩当てごと叩き斬る。
 闘気術による内部強化と魔力操作によるコーティングを受けた剣は、その素材差すら無視して、敵の右肩を肩当てごとあっさりとバターのように切り裂いた。
 右腕とハンマーが落ちていく。
 だが敵もさるもの空中でゆるやかに落ちているスレイに向けて無事な左腕を伸ばす。
 だがスレイは空中に魔法で空気の足場を作り蹴ると、ほんの刹那で地上に着地し伸ばされた手を躱す。
 スレイは自分が斬った結果を見る事もせず、地上に足を付くと同時に雷速で敵の足の手前まで移動し、まず剣で巨大な敵の片足の脛に当たる部分を横薙ぎに叩き斬る。
 バランスを崩し倒れかけながらもなおスレイに手を伸ばすアンデッド・ナイト。
 それを雷速で容易く躱すと、スレイは残った逆の足の脛に当たる部分を再度突撃し叩き斬る。
 完全に崩れ落ちる敵モンスター、ガシャンと膝を付き、それでも身体は起こしたまま、膝立ちになったような状態である。
 スレイは瞬時に敵の頭蓋骨の前まで飛び上がると、剣を思いっきり振り上げ、魔力操作で空気抵抗を殺していたのを解除し、空気抵抗のある中で超音速で剣を振るい、巻き起こる衝撃波と重ねて魔力の刃を放ち、衝撃波と魔力の刃で頭蓋骨から股関節まで真っ二つに斬り裂いた。
 そして開いた骨と鎧の中、人体で言う心臓の部分に黒い核と思われる部位を見つける。
 アンデッド系モンスターには核となる部分があり、そこを壊せば敵を倒せるという常識から、スレイは空中にまた足場を作り蹴ると敵の胸元まで突撃し、アンデッド・ナイトに反応すらさせずに、闘気術による強化と魔力操作によるコーティングを施した剣で、思いっきりその弱点である核に向かい突きを放つ。
 その威力に耐えられずアンデッド・ナイトの核が砕け散るのと同時に、闘気術と魔力操作でとことん酷使された剣が、スレイの闘気と魔力に耐え切れず寿命を向かえ、粉々に砕け散ってスレイの手は空となる。
 それと同時に核を砕かれたアンデッド・ナイトは、塵と化して消えて行き、その場に残るのは巨大なハンマーと骸骨が身につけていた豪奢な鎧、そして剣を失ったスレイと、呆然とする3人のエルシア学園の生徒のみとなっていた。
 スレイがエルシアの生徒達に向き直ると茶髪の青年は糸が切れたように気絶し、2人の少女はただただ呆然と動きを止めていた。

「つまりあのアンデッド・ナイトは、決して初心者用の始まりの迷宮に出る様な代物では無いと?」
「ええ、本来あの迷宮のあの場所にいるボス級モンスターはスライム・アークという巨大なだけのスライムでランクはE、決してランクBのアンデッドナイトが登場するような場所では無いのよ」
 スレイに対し、腰まで伸ばした赤毛と茶色い瞳が特徴の明るく闊達な雰囲気の美少女リリアが彼女には似合わない深刻な表情をして淡々と答える。
 そんな彼女に水を差すように、壮年の男性の威厳ある声が響き渡る。
「それで、どうしてお前までここにいるのだねリリアよ」
 そこには声に相応しい、厳しい顔つきをした男性がいた。
 恐らくは年齢故のアッシュブロンドの髪と髯に茶色い瞳の、40代前半と思われる威厳のある男性。
 探索者ギルドのギルドマスターである。
 ここは探索者ギルド本部、ギルドマスターの個室であった。
 流石に大陸でも有数の権力を持つと言われる探索者ギルドのギルドマスター、高価でありながら華美にはなりすぎず趣味の良い調和の取れた部屋である。
 尤もこの男が傑物である事は探索者ギルドのギルドマスターという時点で明らかな事であったが。
 迷宮都市とはかつて数多の邪神との戦争で劣勢にあった神々が自らの戦力となる称号:勇者達を生み出す為に創り上げられた修練場だ。
 邪神との戦争が終った今でもその機能は生きているし、神々が残した伝説の武具であるシークレットウェポンや高度なマジックアイテムなどの財宝の類も山ほど眠っている。
 故に探索者ギルドのギルドマスターとは、光神ヴァレリアの最高司祭・聖王の神託により選ばれる人物であり、今までギルドマスターが愚鈍であったことなど一度も無い。
 それこそが探索者ギルドが国家と同等以上の権力を持つ所以なのである。
 今この部屋にはギルドマスターと先の1件で呼び出されたスレイの他、4人の人間の姿があった。
その内3人は先の1件での渦中の人物達であり被害者でもあるエルシア学園の生徒達である。
 そしてもう1人がスレイの探索者ギルドへの登録を担当した少女リリアであった。
 確かに彼女がここにいる理由が分からないな、とスレイは思う。
 だが彼女の次の一言で疑問は一気に氷解する。
「固い事言わないでよお父様、スレイくんは私が始めて審査と登録と肉体改造の儀式まで全てを受け持った探索者なのよ?その彼が巻き込まれた事件だというのだから私が興味を持っても当然でしょ?」
 リリアの言葉に壮年の男は深いため息を吐き、諦めたように視線をスレイ達に向けた。
「さて、スレイくんだったね?あとの君達はあのエルシア学園の生徒か。まずは名乗らせてもらおうか、私は探索者ギルド・ギルドマスター、ゲッシュ・アルメリアという」
「ああ、そうだ。スレイで間違い無い、平民ゆえ姓は無い」
 スレイに続き茶髪の青年、金髪の少女、茶髪の少女が緊張した顔をしながら順に名乗っていく。
「エルシア学園戦士科所属3年生の、アッシュ・グラナリアです」
「同じくエルシア学園魔術科所属3年生の、森エルフ・グラナダ氏族出身エミリアと申します」
「お、同じくエルシア学園闘士科所属3年の、ルルナ・グラナリアですわ」
 ゲッシュはまず3人の学生達へと向き直り、そして深く頭を下げた。
「さて、まずは謝罪をさせて貰おう。まさか学園の卒業試験でこのようなアクシデントに巻きこまれるとは、大変すまない事をした。君達の成績は調べさせてもらったが卒業になんら問題の無い成績だ。学園の卒業に関しては私の方で便宜を図らせてもらった、君達は無事に卒業できるだろう。そして今回君達に試験官として付き添い犠牲となった教師達の家族へも見舞金を含め、色々と便宜を図る事を約束しよう、真にすまなかった」
 1国の国王と同等以上の権限を持つとすら言われる探索者ギルドのギルドマスターの真摯な謝罪に、学生達は戸惑いを隠せず、そしてスレイはゲッシュの言葉に嘘を全く感じなかったが故に強い好感を抱いた。

 暫し時が経ち現在。
 エルシア学園の生徒3人は怪我と精神の療養という事で癒しの神イアンナの神殿へと連れて行かれた。
 ここに残っているのはゲッシュ、スレイ、リリアの3人のみである。
「でも、ふふっ」
 突然リリアがこぼした微笑にゲッシュとスレイの二人は怪訝な表情をする。
 ゲッシュは眉間に皺を寄せ、威厳のある声音で娘に注意した。
「リリア、3人もの死者が出ているというのに何がおかしいというのだ?不謹慎だぞ」
「ええ、そうだったわね。ごめんなさい、お父様」
 リリアは表情を変え、今度は痛ましげな顔をして素直に反省の色を見せる。
 娘の素直な反応に拍子抜けしつつも、ゲッシュはつい好奇心から尋ねてしまう。
「それでいったい、何を笑っていたのだ?」
「いえ、スレイくんの探索者登録をした時、あまりの運勢の悪さに、邪神にエンカウントしても不思議じゃないって言ったんだけれども、それからすぐにこんな事件でアンデッド・ナイトに遭遇するなんて、本当にそういう運勢なんだなと思って」
 リリアはスレイの方に視線を向け答える。
 怪訝な表情をするゲッシュ。
 流石にどれだけ有望であろうとも、未だ何かを成し遂げた訳でもない、初心者探索者の情報までは、ゲッシュの所までは上がって来ない。
 疑問に思ったゲッシュはスレイに向き直る。
「すまないがスレイくん、君の探索者カードを全能力値まで含めて見せてもらっても構わないだろうか?」
「まあ、隠すような事も無いし構わないが」
 大した気負いも無く、スレイはカードに念じて全能力値を表示すると、ゲッシュに渡して見せた。
 カードの表示を見て、ゲッシュは僅かに表情を変える。
「これは……!?」
 表示されていた内容は、

スレイ
Lv:7
年齢:18
筋力:E
体力:D
魔力:D
敏捷:S
器用:A
精神:EX
運勢:G
称号:不死殺し(アンデッド・キラー)
特性:天才、闘気術、魔力操作
祝福:無し
職業:無し
装備:革のジャケット、革のズボン、革の靴
経験値:610 次のLvまで90
所持金:0コメル

となっていた。
 流石にこの能力値には様々な探索者を見てきたゲッシュと言えども多少の驚きは隠せない。
「リリア、彼の登録時の初期能力値を教えてもらえないか?」
「そうね、私が見た初期能力値から変わってるのは当然Lvが上がっているわね。それと称号に不死殺し(アンデッド・キラー)が追加されてるわ、これはアンデッド・ナイトを倒したからでしょうね、仮にもB級ボスモンスターな訳だし。あとは特性に闘気術と魔力操作が追加されてるわね。他は装備が変わっているけれども、特性にある天才と能力値自体は以前と変わらないわ」
 横からカードを覗き込んで、やはり多少驚いた様な表情を見せていたリリアはこう答えた。
 娘の答えにゲッシュは二重の意味で驚愕する、まずその初期より変わっていないという初心者としては驚異的でアンバランスな能力値に、そしてその称号と特性にだ。
 本来、対不死族に強力な補正が付く不死殺し(アンデッド・キラー)の称号は、例えB級と言えども、ボスモンスター1体倒した程度で付く称号ではない、それこそ不死族系のモンスターを3桁単位で狩ってるような探索者に付く称号なのだ。
 そして初期からあったという天才の特性、これは探索者ギルドでギルドマスターという地位にいる彼でさえ知らないような特性だ、全くもって効果も何も分からない、こんな特性が存在したことすら知らなかった。
 更に闘気術と魔力操作、それぞれ体内と体外に干渉し強化を行うこれらは全く性質が別のものであり、そのどちらも身につけない者さえ数多く居て、身につけたとしても本来その探索者の性質に合ったどちらかのみを身につける物で、両方を兼ね備えた者などこれもまた聞いた事も無い。
 だが初期から存在したという天才の特性、新しく増えた本来合わせ持つ筈など無い闘気術と魔力操作の特性、そしてアンデッド・ナイト1体を倒したのみで手に入れたという不死殺し(アンデッド・キラー)の称号から、おおよその予測が付いた。
 おそらく天才の特性とは称号や特性を特別な形で急激な速度で身に付けて行く、文字通りの天才的習得能力のことなのではないか、そういう予測が。
 まあこれはあくまで予測であって正しいかどうかは分からないが。
 だが例え予測が正しかったとしても、不死殺し(アンデッド・キラー)の称号はともかく、やはり闘気術と魔力操作を両方身に付けるというのは前代未聞なことだ。
 天才という特性にはそれ以上の何かがあるのかもしれない。
 それが何なのかは長年探索者ギルドのギルドマスターを務めたゲッシュをしても全く分からないが。
 しかしこの能力値を見て決心が付いた、この青年にはあのことを話しておこうと。
 カードをスレイに返しながら、ゲッシュはスレイに語りかける。
「スレイくん、君に話しておきたい事がある」
 ゲッシュが姿勢を整え声色を重くしてスレイを強い視線で見つめてくる。
 その声に何かを感じとったスレイは、姿勢を正しゲッシュの目を強く見返す。
 そしてゲッシュは娘に向かって告げる。
「リリア、ここから先は一介のギルドの職員が聞くような話ではない、席を外しなさい」
 リリアは機嫌の悪い表情になると、ゲッシュの先手を取るように言葉を発して退室を拒否する。
「いやよ、どうせ今回の事件は何者かの工作によるもので、スライム・アーク召喚の魔法陣がランダム召喚の魔法陣に描き変えられていたって話でしょ?そのくらい私もう知ってるんだから」
 ゲッシュは微かに驚いた表情をして見せ、娘に問う。
「お前、どこでそれを?」
 そんな父親に反抗的に舌を出してみせてからリリアは答える。
「私にだって色々情報網があるってことよ。このくらいの事なら調べられるくらいのね?」
 ゲッシュは呆れたようなどこか感心したような溜息を付きながら諦めた表情を見せ、スレイに向き直り彼に話しかける。
「あー、つまりそういう事だ。今回の事件は明らかに人為的な工作により引き起こされた形跡がある、娘に先に言われてしまったが、このことを君に伝えておきたかった」
 スレイは特に感情の動きは見せず、静かに問い返す。
「何故俺にそのことを?」
 そんなスレイの問いかけに今度ばかりは少しばかりの茶目っ気を出し、ゲッシュは答えた。
「いやなに、娘に『邪神とエンカウントしても不思議じゃない』とまで言われた運勢Gの君のことだ、今回の事件を起こした犯人の工作にまた巻き込まれる可能性も高いと思ってね?始めから心構えをしておいてほしかったのだよ。もしかしたらそのまま君が事件を解決してくれる可能性もあるだろうしね」
「それはギルドの仕事では?」
「だから、念の為に、なのさ」
 スレイは特に何の感情を見せる事もなく問いかける。
 ゲッシュはそんなスレイに悪戯げに笑って答えるのだった。

 あれから暫く、今スレイはリリアに道を案内してもらっていた。
 リリアに案内してもらっている目的地は職業神ダンテスの神殿である。
「でも本当にいいの?」
「くどい」
 既に何度目かの問いを投げかけられる。
 それにスレイは短く返す。
「だって、スレイくんは今Lv7なのよ?初心者の迷宮では確かにもう出現モンスターの魂への慣れのせいで経験値を稼ぎ難いかも知れないけど、それでもあと290の経験値でLv10になるんだもの、Lv10になってから戦士にクラスアップした方が良くない?剣士って本当に剣技にしか補正が付かないのよ?戦士だったら能力値アップの補正もあるのに」
「それで充分だ、能力値はLvさえ上げていけばそのうち上がるのだろう?それよりは剣技に対して高い補正のかかる剣士の職業の方が俺にとっては魅力的だな」
 スレイは淡々と返す。
 スレイの態度から、もう決して意見を覆す事は無いだろうと悟ったリリアは溜息を吐いてぼやいた。
「はいはい、分かったわよもう。親切で言ってあげてるのに、後で困っても知らないんだから。戦士だったら魔術師や騎士ほどではないけど魔力だって上がるから魔法を使えるようになるかも知れないのに」
 スレイはさらりと返す。
「魔法だったらもう使えるぞ?」
「はいはい、魔法はもう使えるのね、それは良かったわね……って、えーーー!?」
 軽く流しかけたリリアはスレイの言葉の意味に気付いて大声を上げた。
 耳を押さえ顔をしかめながら、スレイは一言呟いた。
「うるさいぞ」


面白いと思ってもらえたらどうぞ宜しくお願いします。



+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。