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<セシウム汚染>稲わら、農水省の対策から抜け落ち

毎日新聞 7月19日(火)23時10分配信

<セシウム汚染>稲わら、農水省の対策から抜け落ち
宮城県北部の倉庫で保存されている稲わら=2011年7月18日、川上晃弘撮影
 肉牛のセシウム汚染を招いた稲わらは、原発事故後の農林水産省の対策から抜け落ちていた。政府は19日、福島県全域の肉牛を出荷停止としたが、汚染は県外にも広がり続けている。国や自治体が稲わらの管理・流通実態を把握していなかったことが明らかになってきた一方で、拡大防止や補償には課題が山積する。【佐藤浩、宇多川はるか、吉永康朗、田中龍士、川上晃弘、藤野基文、大野友嘉子】

 ◇「屋外分は餌と思わず」

 稲わらは牛に与えると霜降り肉ができるとされ、通常、出荷の1年ほど前から配合飼料とともに与えられる。農水省によると、00年に宮崎県などで発生した家畜伝染病の口蹄疫(こうていえき)の際、餌として輸入された中国産のわらにウイルスが付着していた可能性が指摘され、国産の稲わらを用いる機運が高まった。冬に晴天が多く乾燥に適している宮城県は、飼料用稲わらの生産量が6万8500トン(09年度)と、東北地方でトップを誇る。

 農水省は3月19日、牧草について「事故発生前に刈り取り、事故後屋内保管されたもの」を与えるよう、県を通じて畜産農家に対し通知した。そこに「稲わら」という文言はなかった。さらに、稲わらを供給する稲作農家に対しては、全く注意喚起していなかった。

 「屋外のわらはあくまで(田畑に混ぜる)すき込み用で、牛に与えるとは思わなかった」。農水省のある職員は認識の甘さを認める。

 東北地方沿岸部では秋に乾燥が不十分だった稲わらを田に放置し、春先にロールにすることがある。だが、同省の認識では、餌用の稲わらは「前年秋に刈り取って乾燥させ、ロール化し屋根付きの倉庫で保管するもの」で、今回の事態は「想定外」(大野高志・同省畜産振興課長)だった。

 国の通知を受けた宮城県も、稲わらを含む「粗飼料」について、原発事故後に屋内に保管されていたもの以外は牛に食べさせないよう農協や畜産農家団体などに通知した。だが、稲わらが集められた同県北部は福島第1原発から約150キロ離れており危機感は薄く、稲わらの放射性物質の調査はしなかった。

 ◇流通実態把握は困難

 福島県の畜産農家の多くが宮城県の稲わらを使っていた点について、飼料業界関係者は「福島の牧場は原発事故による汚染を恐れて地元の稲わらをあきらめ、県外から購入したのでは」と推測する。農水省は東北地方などから出荷された稲わらの流通状況を全国調査するが、流通実態の把握は困難との指摘も多い。

 畜産農家は地元の稲作農家と個々に契約を結んだり、堆肥(たいひ)と交換する形で稲わらを入手する。だが、天候不順で量が不足した際などは販売業者から入手する。「畜産農家が少ない地域から多い地域、例えば九州の北部から南部へと広域流通する例もある」(同省畜産振興課)といい、宮城県北部のある業者は「送り先は関東がメーン」、別の業者も「静岡や名古屋まで送ったこともある」という。

 しかも、宮城県の場合、業者の組合や協会は存在せず、横のつながりはほとんどなく、正確な取扱量は「確認していない」(JA全農みやぎ)というのが実情だ。売買契約を把握しようとしても「稲わら販売は農家の『小遣い稼ぎ』の面もあり、領収書などが残されていることはまれ」と明かす業者もいる。

 稲わらを販売する業者は飼料安全法に基づき、都道府県への届け出が義務付けられている。しかし宮城県は19日、セシウムに汚染された稲わらを出荷した県内3業者が無届けだったと発表。自治体が業者の存在自体を把握することの限界も露呈している。

 ◇補償の見通し不明

 畜産農家の間では、国の対応への批判が日に日に強まっている。福島県南相馬市の男性(27)は「もっと早く対処していれば、こんなことにならなかった。国や東京電力には、原発事故前の年収を支払ってもらうか、肉牛、牛舎、土地ごと買い上げるくらいの補償をしてもらいたい」と一日も早い補償を求める。

 しかし、文部科学省の原子力損害賠償紛争審査会事務局は「全貌が明らかになってからでないと、何とも言えない」と話す。

 今回の場合、原発事故で放出した放射性物質で肉牛が直接被ばくしたといった単純な構造ではない。

 飼料の販売業者、稲わらを与えた農家、国や自治体の指導方法、流通時の検査体制など、どの段階で誰に過失があったのかが判明しない段階で、すべての責任を東電に負わせるのが妥当かどうかは検討が必要という。

最終更新:7月19日(火)23時26分

毎日新聞

 

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