「民意がねじ曲げられた」。国主催による6月の県民説明番組で、メールの賛否を覆すほど大量の「賛意」を送りつけていた九州電力。抽選で参加者を募った7月8日の県主催の説明会(佐賀県多久市)でも、募集枠を上回る人数が“サクラ応募”した結果、会場の6人に1人が九電関係者だったことも明らかに。番組出演者や佐賀県民からは憤りの声が噴出した。
「本当の民意がねじ曲げられた」。説明番組と説明会にパネリストとして出演した佐賀県玄海町の農業、平田義信さん(49)は、8日の説明会で抽選に漏れた多くの民意に思いをいたす。説明会は定員370人に1092人の応募があったが、実はこのうち428人が九電関係者で、当日の参加者約350人中63人を占めた。平田さんは「多くの人が会場で直接伝えたいこと、聞きたいことがあっただろう。それがつぶされた」と怒る。
「あきれを通り越して怖い。こういう会社が原発を扱い、人の命を預かっているのかと」。同じく番組出演者の映画評論家、西村雄一郎さん(59)=佐賀市=は九電不信を隠さない。西村さんは番組で九電の“殿様商売”ぶりを指摘したが、「ここまで危機意識のない会社だとは。九電は未来永劫(えいごう)会社が続くと思っているのでは。地域独占をやめさせ、競争原理を持ち込むしか体質を変える方法はない」と突き放した。
一般県民からも厳しい指摘が出ている。玄海町の農業男性(62)は「九電は信用されんようになる。いくら電気が足りないといっても玄海原発の再稼働はもうちょっと考えないといかん」と話した。
一方、4日の時点で九電の中村明・原子力発電本部副本部長から「やらせメール」の事実を否定され、11日には「部下の独断」との説明を受けていた鹿児島県議会。原子力安全対策等特別委の中村真委員長(自民)は「彼にやらせの認識があったかをこれ以上聞いても水掛け論。どうしてこんな姑息(こそく)なことをしたのか」とあきらめ顔。二牟礼正博副委員長(無所属)は「九電はすべてを明らかにしていない」と憤り、「事故や安全性について情報を隠しているのではと常に疑わざるを得ず、原発の運転を任せられない。信頼回復にはすべてを公表することが第一歩だ」と強調した。
伊藤祐一郎知事も「説明番組の信頼性や九電への信頼を損なう行為であり、誠に遺憾。信頼失墜行為を反省し、信頼回復に努めるべきだ」との談話を発表した。【阿部周一、原田哲郎、福岡静哉】
毎日新聞 2011年7月14日 21時59分