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【サッカー】先輩、後輩、恩師が語る沢の実像2011年7月19日 紙面から 不遇の時代を乗り越えついに世界一になった日本女子サッカー界を長くけん引してきたMF沢穂希(32)。多くの女子選手からもあこがれのまなざしを向けられるカリスマの実像に、チームメート、先輩、後輩、恩師らの証言で迫った。 (上條憲也) ◇ 物おじしない外交的な性格は意外にも、21歳で初めて海外挑戦した米国から帰って以来のものだという。昨季まで所属のベレーザの関係者によると、もともとは「すごい人見知りだった」というが、異国での生活で一変。沢自身はうれしそうにこう話していたそうだ。「だって米国ってみんなフレンドリー。パーティーも多いし、公園ですれ違っても『ハ〜イ』って手を振ってくるでしょ?」 その後も、計3度の米国生活のおかげで時々会話が“混乱”し、チーム内に笑いを誘うことも多々。ベレーザ時代からの同僚、INACのFW南山千秋は「米国が長かったので、たまに英語と日本語がごちゃ交ぜになったりする」とおちゃめな一面を笑う。18年前に沢を初めて代表に呼んだ当時の日本女子代表を指揮した鈴木保氏も「よく相談してくるんです。英語が好きなので将来は英語の先生になりたいとか」と、人懐っこい“まな娘”にほほ笑む。 沢はメディアに積極的に露出することを厭(いと)わない。特に女子の花形大会である五輪本大会の直前には「顔」として取材が集中する。ベレーザ時代に、広報担当が「少しは断ろうか」と心配したが沢は反論した。「女子サッカーを有名にするために全部やる」 ロングインタビューを1日4本も立て続けに受けたこともある。「次にどんな予定が入ってるのか分かんないよ」。沢の口からはうれしい悲鳴が上がりながら…。 とにかく“自分の世界”にこもるのではなく、広げることで精神的に大きくなってきた。最近では異業種のトップアスリートとも交流が深いそうだ。短距離の為末大、長距離の渋井陽子、レスリングの吉田沙保里ら各競技の一流を知ることで、また世界を広げる。 ◇ 今年1月に沢が移籍したINACには08年までプレチーナというブラジル代表選手が在籍していた。北京五輪でブラジル代表準優勝に貢献した技巧派だが、INACでチームメートのFW米津美和は「(沢は)また違うすごさ」と言う。 「プレチーナのテクニックに魅入っちゃったことがあるんです。沢さんはテクニックはそこまでではないけれど、でも安心感があってオーラがあるし、どれだけ味方がミスしても絶対にポジティブなことしか言わない。そこが一番尊敬できるんです」 影響はピッチ外にも。「今までは勝つことに必死だった。今ではサッカーの楽しさに目を向けられる。(沢を見て)うまくなりたいと一番思えている1年。モチベーションが上がります」 ◇ 沢は長年過ごしたベレーザからINACへ移籍したが、今回のW杯メンバーでもあるFW大野、近賀、そして南山が4人同時に移籍する異例の事態だった。中でも南山は自身の移籍を「葛藤(かっとう)した」と振り返る。 自信をもらったのは「プロ」にこだわる沢の言葉だった。「(移籍とは)選手としての価値を見てくれているんだよ」。ただ相談時、同じチームに移籍するとは思いもよらなかったそうで、南山は「まさか一緒になるとは。でも自分にとって幸運でした」と笑う。 その沢は今、次代を担うべき選手を強く引っ張る。5月の米国遠征で初めてなでしこ入りした20歳のFW中島依美(INAC)は沢が気にかける一人だ。中島自身「もっとしゃべって、いろんなことを聞いて、沢さんみたいになりたい」と背中を追う。 恩師の鈴木氏は、そんな沢を「女子サッカーが今日まで注目されてくる過程で、女子サッカーの良い部分も悪い部分も知っている。人気の移り変わりを知っているからこそ、もっと日の目を見るようにと若い選手を引っ張っているのだろう」と教え子に敬意を表する。 PR情報
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