中西準子氏も指摘するように、電磁波の健康への影響は昔から多くの研究者が報告してきたが、日本のマスコミは無視してきた。携帯電話会社は、電力会社を上回る大スポンサーだからである。しかしWHOが携帯電話を発癌物質に指定して、本書にある多くの調査結果が世界のメディアで紹介されるようになった。
- スウェーデンのカロリンスカ研究所は「10年以上の携帯電話利用者は聴神経の腫瘍を発症するリスクが3.9倍になる」と発表した。
 
- テルアビブ大学は、長期の携帯電話利用によって耳下腺腫瘍の発症率は1.5倍になるという調査結果を出し、米上院の公聴会でも発表した。
 
- 2008年にはイギリス王立協会で電磁波と健康についての国際会議が開かれ、20代では神経膠腫の発症率が5倍になるという調査結果が発表された。
 
- オハイオ州の医療チームの調査では、携帯電話は男性の精子にも影響を及ぼし、生殖機能を低下させる。
 
- フランスの国立応用科学院の調査によれば、携帯電話の基地局から300m以内に住む人に頭痛や吐き気などの症状が出ている。
私は、ソフトバンクが携帯電話をやめろといっているのではない。逆である。原発から出るガンマ線も携帯から出るのも電磁波であり、リスクはゼロではない。前者だけを誇大に騒いで「人命を守るためには何兆円コストをかけてもいい」などというのは、リスクを減らす社会的コストを考えない極論である。携帯電話も原発も、リスクを管理して使うしかないのだ。