中国電力(広島市)が山口県上関町で進める上関原発計画について、予定地から30キロ圏内にある山口県の8市町議会の意見書が出そろった。上関原発は現在、原子炉設置許可申請が出ている全国唯一の新設原発。計画の白紙撤回を求める動議を否決した上関町を包囲するように、各意見書は「中止」「凍結」などを求めている。広域に被害が及んだ東京電力福島第1原発事故を目の当たりにし、不安が顕在化した格好だ。
「中止」を求める共産が、可決を優先させるため保守系会派に「凍結」で譲歩するケースも多かった。意見書は、埋立免許更新を認めなかった知事判断に作用したとみられる。
一番厳しい意見書は、一部のみが30キロ圏内で、海岸沿いにコンビナートを抱える周南市議会の「中止」。全国から賛同メールなどが40件近く届いたという。一番早い5月27日に可決したため、他議会にも影響を与えた。
電源立地地域対策交付金を受ける予定の5市町(上関町除く)は、おおむね「凍結」とし、建設再開の余地を残した。5市町は原発建設で今後、約11億~23億円の交付金が支給される。しかし、5市町長は「現時点では交付金の手続きに入る状況でない」などとしている。原発予定地の上関町は今後約86億円の交付金支給が予定され、既に各種交付金計約45億円も受けている。
6月30日に「凍結」を可決した光市議会は、計画実施の際には周辺自治体の合意を必要とする法令などを条件につけた。「凍結」とした他の議会の多くが「安全性の確立」という追認しやすい条件をつけた中では、厳しい条件となった。一方、「上関町の意向を大切に」とした隣接の柳井市議会など、上関町に配慮をにじませたところもあった。
上関町と周辺8市町の全人口は約50万人だが、同町は3550人(0・7%)にすぎない。9月に原発計画を争点にした9回目の町長選が控えるが、周辺自治体の懸念がどう反映されるか注目される。【小中真樹雄】
毎日新聞 2011年7月2日 地方版