さよなら、ぴあ
21日発売の号をもって「ぴあ」(首都圏版)が休刊となる。学生時代の愛読書だった。20数年前はインターネットやホームページも発達していないから、関西から芝居を見るために深夜バスで上京した際など、ぴあは必需品だった。例えば1泊2日で4本の作品を効率よく見るためには、上演時間と終演時間を把握しなければならない。
胸躍らせながら、見たいものをピックアップし、どの順番で見ればよいか。作っている人には申し訳ないが、一冊が重いので必要なところをコピーするか、破って携帯することが多かった。ぴあに載っている劇場に電話して終演時間を教えてもらい、移動時間をプラスしてプランを練るのだ。乗り慣れない東京の地下鉄を使って、いつも駆け足で移動していたように思う。
読み応えのある、掘り下げたインタビューも好きだった。全劇場を網羅するほどの無数の作品名を見れば、よくこんなにもたくさん上演、上映されているものだと感心した。同時に本当に評価され、チケットが完売し、満員になる劇場はわずかだ。学生ながらも成功させることの大変さを少しは理解できた。作品のあらすじや、出演者を読むだけでも、意外な配役があっていろんな発見ができて飽きなかった。
そのとき将来、新聞記者になるとも思っていなかった。まして映画や演劇を取材することになるとも想像しなかった。しかし、この時に、ぼんやり気の向くまま、ぴあを見て読んだことは、ずいぶん役だってくれているだろう。
ぴあと言えば、イラストレーターの及川正通さんが手がける表紙も印象的だった。「時の人」が表情豊かに生き生きと、その人以上に本人らしくパワーを備えて表紙を飾ってきた。売れるまでに苦労した俳優が登場すれば、大物になった証しのような気がしてうれしかった。
最終号には付録として1972年の創刊号が復刻版として付くという。青春時代にお世話になっただけに、お疲れ様の意味も込めて、買い求めようと思う。
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