悲しき無知…菅&枝野ビビッて「債権放棄」発言撤回のワケ

2011.06.24


金融機関を震撼させた枝野官房長官の債権放棄発言。ここにきてトーンダウンした真相は…【拡大】

 東京電力福島第1原発事故の賠償問題で、枝野幸男官房長官(47)が東電の取引金融機関に債権放棄を求めた発言が尾を引いている。枝野氏は当初、貸し手責任を強調していたが、ここにきて「債権放棄発言はしていない」と一気にトーンダウン。理由は、「債権放棄となった場合、3メガバンクなどが即座に菅政権を相手に行政訴訟を起こす準備を進めているとの情報を察知したため」(永田町関係者)という。銀行界の反撃態勢にあわてて、前言を撤回したというのだ。

 福島第1原発の賠償支援策に関し、枝野氏の口から金融機関に債権放棄を求める発言が飛び出したのは5月13日午前、閣議後記者会見でのことだった。

 枝野氏は、事故発生前に金融機関が実施した融資は「事故のリスクを考慮に入れて融資がなされいているというのがマーケットの基本だ」とし、金融機関が東電の貸し手責任を負わない限り、「国民の理解は到底得られない」などと話した。

 ところが、今月に入って枝野氏は「私は債権放棄発言はしていない」、「そうしたお尋ねに対して国民の理解が得られるかを答えたものだ」と急にトーンダウンしだした。

 一体、何があったのか。

 「そもそも、枝野氏に知恵を付けたのは、金融知識に詳しくない官邸の、ある幹部です」(永田町関係者)

 この幹部は、東電の原発賠償について「金融機関の責任も問うべきだ」と仙谷由人官房副長官にささやき、それが仙谷氏から枝野氏に伝えられ、「あの債権放棄発言につながった」というのだ。

 金融に明るい専門家ならいい。だが、仙谷氏に入れ知恵したこの幹部はプロパーの役人ではないという。先の関係者は「金融に詳しくない人物。金融や市場に関する知識に浅い者が、安易に金融機関の債権放棄を入れ知恵した。それが関係者を混乱させ、銀行株の急落をはじめとする市場の混乱を引き起すことになった」と内幕を明かす。

 株価が急落する事態に直面した金融機関は激怒。「実際に債権放棄となった場合、三井住友フィナンシャルグループなどメガバンクが即座に訴訟を起こし、対抗できるよう顧問弁護士とともに『行政訴訟』の準備に入った」(同)という。

 東電の取引金融機関は3月末、2兆円を東電に緊急融資した。そのうえで安易に債権放棄に応じれば、株主代表訴訟を受けかねない厳しい事情がある。

 そのための対抗策として出てきた案が菅政権を相手取った行政訴訟。その準備は着々と進んでいるようで、あるメガバンクの幹部は「仮に訴訟になれば勝てると思う」と強気だ。

 ■東電への追加融資のため枝野豹変

 全国銀行協会の奥正之会長(三井住友銀行頭取)も6月16日のお別れ会見で、東電への対応について「企業再生といっても一般産業とは少し性格が違う。(法的整理した場合)債権の順位を考えると、被害者の方に本当に賠償ができるのかという問題になる」と東電の法的整理を否定した。

 そのうえで、今回の「原子力損害賠償支援機構法案」に言及し、「原子力事業者を債務超過にしないようにすることが示されているもので、われわれが債権放棄することは当然ない」と強調した。

 3メガバンクをはじめとした主力取引銀行の東電向け融資残高は4兆円規模に膨らみ、東電はその残高維持を要請する一方、追加融資も視野に入れている。

 メガバンクなどはこの東電の要請に応じる構えだが、その前提はやはり、債権放棄はしないということにある。

 取引銀行から追加融資を引き出すためには前言を撤回するしかない…。それも枝野氏が“豹変”した理由のひとつのようだ。 

 

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