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東京電力:株主総会 相次ぐ厳しい質問 会場外で抗議行動も

東京電力の株主総会冒頭で頭を下げる幹部ら。中央は勝俣恒久会長=東京電力提供
東京電力の株主総会冒頭で頭を下げる幹部ら。中央は勝俣恒久会長=東京電力提供

 福島第1原発事故後初の東京電力株主総会が28日開かれ、会場のホテルには過去最多だった昨年の3倍近い約9200人が詰めかけた。周辺では福島県民や環境保護団体が抗議活動を繰り広げ、株主からも「原発を一民間企業が担えるのか」との声が上がった。収束のめどが立たない事故の深刻さを映す異例の総会となった。【袴田貴行、浅野翔太郎、喜浦遊、日下部聡】

 会場となった東京都港区の「ザ・プリンス パークタワー東京」には、開会2時間前の午前8時ごろから株主が集まり、入り口に長蛇の列ができた。警視庁機動隊が警戒にあたる中、防護服を着た環境保護団体のメンバーらが「脱原発で責任を!」などと書いたパネルを掲げ、福島県から来た女性が脱原発を訴え、物々しい雰囲気に包まれた。

 開会を待つ個人株主たちからも、原発事故への批判が相次いだ。

 広島で胎内被爆したという奈良市のコンサルタント業、田川正則さん(65)は「機会があれば発言したいと思って来た。安全が確認されたら原発を再稼働するというが、ハードが良くても、それを操る人や組織の問題が検証されていない現状での再稼働には反対」。原子力政策に関心があり、数十年間東電株を保有しているという。

 一方「私たちも陰の被災者」というのは、月約6万円の国民年金で暮らす東京都武蔵野市の無職、矢田ヨリコさん(81)。安定した配当金で年金を補充しようと、08年ごろに約600万円をはたいて東電株を購入。しかし、今回の事故で価値は約10分の1に。「見通しが全く見えない。民間会社として存続するか、国の管理下で立て直すのか、しっかりと見極めたい」と話した。

 福島県伊達市出身で東京都在住の会社員、川島睦子さん(59)は株主ではないが駆けつけた。「伊達市では家族が今も暮らしている。不安が募る。どうか株主のみなさんには原子力撤退の議案を可決してほしい」と語り、原発に反対する株主でつくる市民団体「脱原発・東電株主運動」のビラ配りを手伝った。

 今回の総会では、同団体による「脱原発」を求める提案が採決される。一般の株主の中には「今回の事故で原発を恐ろしいと思うようになった。東電にも問題を隠そうとする姿勢を感じる」と、賛同の意思を固めて来た男性(77)がいる一方、「現実的に考えると代替エネルギーはない。総会で話をしっかり聞いて判断したい」と慎重な男性株主(68)もいた。

 総会は午前10時に開会。会社側の説明終了直後、女性株主から、すぐに質疑を求める動議が提出され、冒頭から拍手と怒号が飛び交った。「事故は人災ではないか」「役員報酬は賠償に充てるべきだ」「汚染水はすでにあふれているのではないか」。相次ぐ厳しい質疑に、東電側は「鋭意、努力している」と繰り返すばかりだった。

毎日新聞 2011年6月28日 東京夕刊

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