東京都板橋区で99年12月、元会社事務員、茅野百里香さん(当時28歳)が絞殺された事件で、警視庁高島平署捜査本部は8日、現場の遺留物とDNA型が一致した住所不定、元土木作業員、内田清次被告(38)=強盗傷害罪などで札幌地裁に起訴=を強盗殺人と住居侵入容疑で逮捕した。捜査本部によると、内田容疑者は「民家に盗みに入り、女の人に騒がれたので首を絞めて殺した。誠に申し訳ない」と容疑を認めているという。
逮捕容疑は、99年12月28日夕、板橋区新河岸1の茅野さん方に強盗目的で侵入し、2階6畳間に1人でいた茅野さんの首を絞めて殺害したとしている。
捜査本部によると内田容疑者は当時、窃盗罪で服役した刑務所から出所した直後で、荒川区内の更生保護施設に入所していた。今年4月に札幌市内の会社事務所から現金を盗んだとして逮捕された。その後の捜査で強盗や傷害事件を繰り返していたことが判明、札幌地検が起訴していた。
捜査過程で内田容疑者のDNA型を調べたところ、茅野さん方に残された体液のDNA型と一致することが判明。捜査本部は8日、北海道から身柄を東京に移して逮捕した。【山本太一、内橋寿明、小泉大士】
12年前の強盗殺人事件の容疑者を浮上させたのは、警視庁捜査1課が09年11月、全国に先駆けて設置した「コールドケース」(長期未解決事件)を担当する特命捜査対策室だった。最新の方法で再鑑定した遺留物のDNA型が、別の事件で逮捕された内田容疑者と一致したことが逮捕の決め手となった。
対策室の大きな武器は精度が飛躍的に上がったDNA型鑑定だ。警察庁によると、型が一致しても別人がいる確率は、96年は「2万3000人に1人」だったが、現在は「4兆7000億人に1人」。
今回の事件で対策室は、現場で採取された体液を再鑑定し、警察庁が運用するDNA型データベースに登録。北海道で逮捕された内田容疑者のDNA型もデータベースに登録された。今年6月、二つのDNA型が一致したという連絡が捜査本部に入ると、捜査員から歓声が上がったという。
対策室は現在、約70件のコールドケースに向き合う。昨年4月の刑事訴訟法改正で殺人事件などの公訴時効が廃止され、遺族らからは「時間がたってもDNA型鑑定で容疑者特定に期待できる」という声も上がっている。【山本太一】
毎日新聞 2011年7月9日 東京朝刊