2011/07/14
「清楚」という言葉の意味は、「清らかで飾り気がないさま」。女性からしてみると、「地味」という言葉に近くて、流行に左右されない、やや古めかしい印象をもつ人も多いのではないだろうか。しかし、男性は「清楚」が大好き。理想の女性のファッションといっても過言ではないようだ。漠然としていて、よくわからない「清楚」について、美容ジャーナリストでエッセイストの齋藤薫さんに話を聞いた。
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女にとってはちょっと謎なのが、『AKB48』の異常な人気である。もちろん『身近な印象の女の子を、自分たちが応援してアイドルに育てていく』というコンセプトはわかるけど。たとえば前田敦子が一番人気なのは、その複雑な男心を象徴していて、顔はいかにも清楚顔。ときどき10歳くらいの少女に見えるほどあどけなく清らかな印象。けれど意外にグラマーで、でもそれを女子高生の制服みたいなコスチュームで、ひた隠しにしてくれることがうれしいのだ。
女子高生っぽく見せるのは、単なる若づくりではなく、『女』をひた隠しにする一見保守的で古風なところに、ちょっとオタクな男たちが大拍手をしてくれるから。
男が望む『清楚』の定義のひとつはまさにそれ。何も知らない、ただのウブを求めているのじゃない。女の成熟もどこか禁欲的な制服っぽい服によって、恥じらい隠す、大人のゆかしさこそを清楚と呼ぶのである。
もうひとつ、周りの男たちはおそらく、AKBよりKARAや少女時代といった韓国系アイドルの方がいいと言っているはずだが、その支持のカギも実は清楚にある。韓国の女性は日本人の目から見ると、とても透明度が高い。すっきりした目もとや端正な口もと、なによりきめ細かい白い肌にはやはり民族の違いというものがあり、食べ物の違いや儒教の精神なども反映しているかもしれない。
ともかく存在そのものの透明度が高いのだ。ちゃんとオトナな女なのに。幼く見せようとしないのに。
言い換えればそこに宿るのは、何をしても決して壊れない清潔感。だからどんなにお尻を振ろうと、どんなに生脚をあらわにしようと、清潔感は壊れない。むしろ、そういう表現のセクシーによって清潔感が一層きわだつほど。だから彼女たちのコスチュームは決して清楚ではないのに、ちょうどいい清楚の香りが漂うのである。
【『BAILA』2011年8月号(7月12日発売)『あのー、「清楚」ってどーいうことですか!?』より】
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