第4回 テレビ:水平分業型への移行が顕著に,勝機は規模の維持と総合力
Samsung社は既に水平分業型
実は,業界最大手の韓国Samsung Electronics Co., Ltd.も,テレビ事業で既に,水平分業型に近い体制をつくりつつある(図4)。同社は傘下に強力なパネル事業や半導体事業を持ち,典型的な垂直統合型企業と一般には思われている。しかし,実態は異なる。「Samsung社は既に,半数のパネルを外から買っている。シャープの堺工場が稼働すれば,おそらく同社からも購入を始めるだろう」(モルガンスタンレー証券の小野氏)。
水平分業体制は特に,今後激化する新興市場での競争で絶対に必要になる。明らかに価格競争力がカギになるからだ。ただし,他社も似た戦略を取ってくるとすると,次に重要になるのは生産量。数がまとまれば良い部品を安く買えるからだ。つまり体力をいたずらに消耗せず,一定以上の生産量を維持・拡大する戦略の立案が,生き残りの必須条件になる。
モルガンスタンレー証券の小野氏は,国内メーカーのブランド力は新興国でも通用し,十分な価格競争力とセットにすれば,有効に使えると説く。例えば,Samsung社は最近中国で,家電下郷の対象になる価格帯のテレビを出荷して,ユーザーの購買意欲を大幅に引き上げたという。「手が届く価格ならば,海外ブランドを選ぶ人は中国でも多い」(小野氏)。
国内メーカーではこれまで,パネルなどの「コア技術」で他社に差をつける戦略が是とされてきた。しかし技術が成熟し,主要な部品がどこからでも購入できる状況になった現在のテレビ産業では,こうした戦略は通用しにくくなりつつある。
モルガンスタンレー証券の小野氏は,CEATECでの展示を例に挙げて,「ソニーとパナソニックの3Dテレビは,他社と明らかに完成度が違った。国内メーカーはこのような,部品の性能を引き出すノウハウで,まだまだ差異化が可能」とみる。今後は,部品を組み合わせた状態で,より性能を発揮させる「総合力」がもう一つの勝負所になりそうだ。
―― 次回へ続く ――
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