2011年7月17日22時23分
東京電力が福島第一原子力発電所の事故収束に向けた工程表を発表して17日で3カ月が経ち、工程表の第1段階(ステップ1)の期限を迎える。最大の目標は原子炉の安定的な冷却だが、その実現の要となる放射能汚染水の浄化処理施設では不具合が相次ぎ、改善が必要な状態だ。政府と東京電力は19日、課題はあると認めつつも、ステップ1の目標をおおむね達成したとの見解を示す。
東電は4月17日に工程表を初めて公表した。3カ月後を終了のめどにした「ステップ1」で原子炉の安定的な冷却を、最長で来年1月までの終了をめどにした「ステップ2」で、原子炉が十分に冷えて安全な状態になる「冷温停止」状態を、それぞれ実現するとの目標を掲げてきた。
政府と東電は、原子炉の安定的な冷却は達成できたとみている。溶けた核燃料を冷やすことで出る高濃度の放射能汚染水を、浄化して原子炉の冷却に使う「循環注水冷却」システムが動き始め、汚染水を増やすことなく原子炉を冷やす仕組みができたため、というのがその理由だ。
これを受け、政府は緊急時避難準備区域の解除の検討を始める。その前提となる、(1)窒素注入によって水素爆発の危険性をほぼゼロの状態にできたこと(2)発電所外への新たな放射性物質の流出が限りなく低く抑えられた状態になったこと――も19日に示す予定だ。
だが、原子炉の安定的な冷却の前提となる循環注水冷却システムはトラブルが続いている。システムの要である放射能汚染水の浄化処理施設は6月17日に稼働を始めたものの、配管の水漏れなどの不具合が相次ぎ、一時停止を繰り返している。
また、4月当初の工程表では実施を明記していた、格納容器を密閉して内部を水で満たす冠水の作業は、5月の時点で事実上断念した。放射能汚染水の処理が思いのほか手間取ったのに加え、原子炉建屋の放射線量が高く、復旧作業ができなかったためだ。
冠水させて原子炉をさらに冷やして冷温停止状態にするために、ステップ2で格納容器の損傷部の補修作業に取りかかる。だが、どこが損傷しているかわかっていないうえ、圧力容器から格納容器内に燃料が漏れ出ている可能性があり、作業は難航も予想される。(坪谷英紀)