酷暑のなか、土用の丑(うし)の日(21日)を前にうなぎが恋しい今日このごろだが、料理店やスーパーでウナギの価格が高騰している。養殖用稚魚のシラスウナギが2年続けて不漁なのに加え、輸入ウナギの価格上昇も影響しているようだ。
「赤字覚悟の高値でも何とか買おうと頑張りよりますばってん、仕入れに難儀しよります」
1873年創業の「吉塚うなぎ屋」(福岡市博多区)の店主徳安憲一さん(64)は嘆く。徳安さんによると、今年の仕入れ値は昨年の約1・5倍に高騰している。仕方なく6月下旬には、かば焼き(上)2700円を3千円に値上げした。せいろ蒸しが名物の福岡県柳川市のうなぎ店も、同じ事情で「わずかですが値上げしました」。
スーパーも同様だ。イオン九州は販売価格を約2割高くした。担当者は「お客さんは丑の日前の購買意欲が少し鈍いようです。うなぎを食べたくなってもらえるよう、さらに暑くなってくれれば…」と気をもむ。
全国養鰻(ようまん)漁業協同組合連合会(熊本市)によると、卸値は昨年より1割高い。その背景はシラスウナギの不漁と、養殖に欠かせない重油と餌の値上がりだという。
水産庁の調査では、今漁期(昨年12月-今年4月)のシラスウナギの推定漁獲量は7・5トン。不漁といわれた昨漁期(9・2トン)より落ち込み、その前年と比べると約7割も減った。同庁職員は「2年連続の不漁は初めて。海流の影響など諸説あるが原因は分かりません」と首をかしげる。
お手ごろだった中国や台湾からの輸入ウナギも日本国内の品薄状態を見越して高騰が続く。財務省の貿易統計によると、5月の1キロ当たりの輸入ウナギの価格は2763円。昨年同期より1252円も上がった。
吉塚うなぎ屋の徳安さんは「稼ぎ時の丑の日が迫っとるのに、ウナギがなくて休業する問屋もあります。来年はもっと値が上がるかもしれん。食文化の危機です」と心配する。
=2011/07/17付 西日本新聞朝刊=