ここから本文エリア

現在位置:asahi.comマイタウン北海道> 記事

「未知の活断層」 平行線 泊・大間原発

2011年06月23日

写真

■泊・大間原発近くの海底

 大震災に耐えられるのか、その安全性に道内で関心が高まる泊原発(泊村)と大間原発(青森県大間町)。ともに近くの海底に未知の活断層がある、と変動地形学者らが指摘してきたが、電力会社側は否定し、見解は平行線をたどっている。東日本大震災で崩れた原発の安全神話。学者らが「大地震を引き起こしかねない」と危惧する活断層はあるのか、ないのか。

■研究者指摘
■隆起、存在の証し

 泊原発がある積丹半島西方沖約10キロの日本海。その海底に「未知の活断層がある」と東洋大の渡辺満久教授が発表したのは2009年10月だ。「長さ60〜70キロで、マグニチュード(M)7・5級の地震が起こりうる」と警鐘を鳴らした。

 大間原発では、広島大の中田高名誉教授とともに「下北半島大間崎の北西沖約5キロに未知の活断層がある」との分析結果を公表。渡辺氏によると、長さは40キロを超え、「M7級以上の地震が起きる可能性がある」という。

 二人は変動地形学が専門で、土地の隆起や地質調査を手がかりに活断層を見つけ出している。島根原発(松江市)をめぐっては、中国電力が「活断層はない」とした場所を掘削して活断層が確かに存在する、と証明した実績を持つ。

 泊原発では昔の海岸線の高度を調べた。泊地区は高さ30メートル。北隣の神恵内地区は60メートルで「積丹半島の先端に向かって高くなっていた」。その近くでは「離水ベンチ」と呼ぶ海岸が隆起し、干上がったとみられる形跡が見つかったという。

 渡辺氏は「断層運動で隆起した可能性がある」とし、周辺海域の地形などを踏まえて「活断層がある」と判断した。その土地の隆起が大間原発では「より顕著」と中田氏は指摘する。

 下北半島先端の大間崎周辺では昔の海岸線の高さが約60メートル。それがわずか10キロ南側では20メートル以下と急激に低くなる。中田氏は08年の原子力安全委員会で「これが海底活断層で大間崎周辺が隆起した証し」と、安全審査のやり直しを求めた。

■電力会社側見解
■否定姿勢変えず

 一方、泊原発を運転する北海道電力と大間原発を建設中の電源開発は、ともに「未知の活断層」の存在を否定し続けている。

 指摘を受けて、北電は10年2月から積丹半島西岸をボーリング調査し、昔の海岸線の高さを探った。堆積物(たいせきぶつ)が多く、正確には分からなかったが、堆積物の分布などから「泊村から神恵内村にかけての標高差はほとんどない」と判断。指摘された昔の海岸線の高低差を打ち消し、活断層の存在を否定した。

 電源開発も海岸地形調査を行った。土地の隆起を認めたものの、「離水ベンチは土地の隆起ではなく、海水面が下がって生まれた可能性がある」などとして活断層の存在を否定。「従来の耐震安全性評価に影響を及ぼさない」とした。

 だが、ともに「未知の活断層」の現場海域は調査していない。海底の探査は容易ではなく、福島第一原発事故の後も両社の姿勢に変わりはない。

 北電は5月末に原子力安全・保安院に提出した報告書で、「耐震設計上、考慮する必要はない」と繰り返した。電源開発も「海底活断層は存在しない」との立場を貫いている。

 これに対し、渡辺氏は「北電は高低差や離水ベンチが見つかるのはなぜか、事の本質を理解できていない」と批判。中田氏も「電源開発は活断層による隆起を否定する根拠のデータを示していない」とする。

 国は、北電が提出した海底活断層の存在を否定する報告書の審査を福島第一原発事故で中断。あるか、ないか判断する気配はない。議論はしばらくこうちゃくした状態が続きそうだ。

(綱島洋一)

PR情報
朝日新聞購読のご案内

ここから広告です

広告終わり

マイタウン地域情報

ここから広告です

広告終わり