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原始地球の熱 半分が残存 東北大・井上教授らの研究チーム
地球が形成された約40億年以上前に発生した熱が、現在も地球内部に半分残っているとする研究結果を、東北大ニュートリノ科学研究センターの井上邦雄教授(素粒子実験)らの国際研究チームが明らかにした。地球内部の放射性物質の崩壊で発生する「地球ニュートリノ」の観測で判明。成果は英科学誌ネイチャージオサイエンス電子版に18日、掲載される。 地球の内部で生じている熱(地熱)は約44兆ワット。この熱エネルギーはマントル対流や大陸移動、地震などを起こすとされる。地球ニュートリノが発生する時にも熱が発生するが、地熱の何割を占めるかは、地球科学における謎の一つだった。 研究チームは、岐阜県飛騨市にある東北大のニュートリノ観測施設「カムランド」で、7年8カ月間に106個の地球ニュートリノを検出した。これまでに地球ニュートリノを検出できる割合が分かっており、それから総量を計算すると約21兆ワットになった。 この結果、地熱の約半分が、地球内の放射性物質起源によるものと判明した。 宇宙のちりが集まって誕生した地球は、溶解して鉄を中心とした重い成分が中心に沈み、約40億年以上前に核を形成。このとき発生した重力エネルギーが、原始の熱に変換されたと考えられる。 地球ニュートリノ以外に地熱に寄与する大きな要因はなく、研究チームは残りの約23兆ワットが地球形成時の原始の熱であると推定。地球の核が徐々に冷えながらも、原始の熱を残しているとの結論を出した。 井上教授は「地球ニュートリノを道具として、地球内部を調べることが可能になり、今回は謎の一つを解明できた。地球科学の謎はまだあるが、地球ニュートリノ観測によりさらに解明が進むだろう」と話している。
[地球ニュートリノ] ニュートリノは物質を形成する素粒子の一つで6種類ある。地球ニュートリノはこの中の「反電子ニュートリノ」で、地球内部のウランやトリウムの崩壊により、熱を伴って発生する。他の粒子とほとんど反応せず、地球や人体を通り抜けるため観測が難しいが、東北大などの国際チームにより2005年、世界で初めて検出が発表された。
2011年07月18日月曜日
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