玄海町を変える?“薬草”の研究
玄海町を変える?“薬草”の研究 07/06 20:06

佐賀県の玄海町は、原子力発電所で注目を集めていますが、「原発の町」というイメージから脱却しようと、いま、九州大学と共同である薬草の栽培研究を進めています。

成功すれば、国内での漢方薬の製造に画期的な効果をもたらすと期待されています。

玄海原発に程近い1万8000平方メートルの敷地に、温室が並んでいます。

なかで栽培されているのは、すべての漢方薬の約7割に配合されているという甘草です。

現在、千数百株の甘草が栽培されています。

●薬用植物栽培研究所・古賀芳典園長
「例えば、815番の甘草が極めて優秀ならば、この細胞さえあれば、根でも葉でも培養で増やすことが出来る。一気に1万、2万株に増やせる」

玄海町は、3年前に九州大学との間で甘草の共同研究に着手しました。

●玄海町・岸本英雄町長
「(日本では)甘草自体の品種登録がされていない。日本で栽培した甘草の品種登録を、ぜひ早い時期に国のほうにしたいと思っている」

●梶井記者
「漢方で使われるのは、甘草の根の部分です。少しかじってみると、その名の通り確かに甘いです」

甘草は肝機能やアレルギーに効能があるとされますが、国内では自生していません。

また、雨の多い日本では育ちにくいため、これまで、栽培もされていませんでした。

このため、ほぼ100パーセントを中国からの輸入に頼っていますが、乱獲による数の減少が問題となっています。

●長崎国際大学・正山征洋教授(九州大学名誉教授)
「中国自体の需給バランスが崩れ、供給が追いついていない。中国も輸入に回るのではないかといわれている。そうなると、中国は他国には出さず、自国で使いたい。そうすると、いずれ日本にも入ってこなくなるのではないかと思い、“漢方薬の危機管理”をやろうとしている」

中心となって研究を進める正山教授は、甘草に関する規制の多い中国を避け、モンゴルに足を運んで、直接、甘草の種を持って来ました。

ただ、ここからが大変です。

甘草は、日本で薬草として認められるためには、グリチルリチンという成分が2.5パーセント以上含まれていなければなりません。

ここでは、様ざまな環境のもとでとにかく多くの甘草を育て、そのうちの優秀な個体をクローン化することで、大量生産につなげようとしています。

●正山教授
「正確にグリチルリチンの含量をはかって低いやつは全部捨てる。そして高いものだけを残す。ものすごくシンプル」

グリチルリチンの含有量が安定して2.5パーセントを超えていることを証明するには、少なくとも4年から5年が必要とされています。

●正山教授
「いま5パーセントぐらいのは出てきているので、それを増やす。いいサンプルを見つけるのが大変だが、それはクリアできているので、あとは努力次第、熱意次第」

玄海町では、将来的に甘草を品種登録し、ビジネスにつなげたい考えです。

すでに、製薬会社などからも問い合わせがあると言います。

●玄海町・岸本町長
「製薬会社や化粧品会社、醤油屋から問い合わせがきている。“すぐに使えるか”“大量に入れることが出来るか”という問い合わせ。どちらもすぐには出来ないので、もう少し時間が欲しいと返事」

とかく、原発のイメージがつきまとう玄海町。

実は、この研究所の建設費用にも玄海原発でのプルサーマル発電を受け入れた際に国から支給された交付金が充てられています。

いわば原発を元手に始まったわけですが、玄海町は、甘草の研究で、町のイメージチェンジを図りたいとしています。

●玄海町・岸本町長
「原子力より、玄海町って薬草の町だよねとなったら、もっといいですね」

●薬用植物栽培研究所・古賀園長
「(特産品が)何かないかという地元農家のニーズはある。何か見つけてくれという声も入ってくる。一朝一夕にはいかない、簡単ではないが、前進あるのみ。いいものを作りたい」

甘草の研究のほかにも250種類の薬草が栽培されていて、誰でも見学できるということです。