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余剰電力を東電に供給した六本木ヒルズの自家発電システム

六本木ヒルズは、自家発電で余った電力を4月30日まで東京電力に送り続けた。地下に設置されたガスタービン型自家発電システムは、環境にも配慮した最新型だという。
2011年05月09日 10時37分 更新

 東日本大震災で首都圏の電力不足が深刻化する中、余った電力を東京電力に供給したビルがある。森ビルが運営する六本木ヒルズだ。3月18日から4月30日までの間、4000キロワットの電力を送り続けた。東京都港区という都会の真ん中にある超高層ビルの発電システムは、環境にも配慮した最先端のものだ。

自由自在に出力調整

photo 六本木ヒルズの地下に設置されたガスタービン型自家発電システム

 大規模ビルでは一定期間の電力を賄う非常用電源が装備されているケースが多いが、震災後に燃料不足が起これば、機能を停止せざるを得ない。しかし、六本木ヒルズの場合、ガスタービンを活用したシステムのため、燃料である都市ガスが供給されている間は発電が可能。まさに都心の“発電所”の機能を果たせたわけだ。

 六本木ヒルズの地下1万平方メートルに展開される発電施設は、ガスタービン、蒸気ボイラー、吸収式冷凍装置などからなる大規模コージェネレーション(熱電併給)システムだ。6360キロワットのガスタービンが6基あり、発電能力は3万8660キロワット。毎時約240ギガ(1ギガは10億)ジュールの冷熱と、同約180ギガジュールの温熱も供給。通常は六本木ヒルズ内にある森タワー、住居部分のレジデンスに電力と冷暖房用の冷熱、給湯用などの温熱を、テレビ朝日にも冷熱と温熱を供給している。システムの中心となるガスタービンはIHIが製造、システム構築は新日鉄エンジニアリングが行った。

 発電と熱供給を合わせたエネルギー効率は75%と、大規模発電所に劣らない高効率を実現している。最大の特徴は、発電量と熱電供給の割合を自在に調節できることだ。例えば電力需要が多いときは自動車のターボエンジンのように排気される蒸気を再びタービン側に戻して発電機の回転数を上げ、発電出力を増やすこともできる。震災以降の電力不足に対応し、その機能がいかんなく発揮された。

photo 六本木ヒルズの熱電供給

 都心の発電所であるために「環境面の配慮は欠かせない」(森ビル環境推進室の武田正浩上席副参事)。ガス燃焼で生じる排ガスは六本木ヒルズの敷地内にある煙突から排出されるが、三元触媒を使った処理装置により窒素酸化物(NOx)や硫黄酸化物(SOx)は基準値の半分以下と少ない。都市ガスを燃料とする高効率発電のため、二酸化炭素(CO2)の排出も抑制できる。

 また、「視覚的な配慮にも腐心した」(同)という。排ガス中に水蒸気が多いと煙に見え、火災と誤認されかねないため、排ガスの湿度も調整している。都心部に発電システムを置くことで送電ロスがほとんどなく、エネルギーの有効利用の点でも評価できる。

テナント誘致にも威力

 「東京ガスから供給されるのは事業用の中圧ガスで、家庭用のインフラに比べ耐震性が高い」。ガスが供給されている限り、電力不足や計画停電とも無縁だ。万一、都市ガスが停止しても灯油による発電も可能。「外資系企業や金融業などは入居ビルの選定で自家発電機能を重視する」(森ビル広報)ため、テナント誘致にも威力を発揮しているという。

 森ビルは六本木ヒルズ開発の際、「逃げ込める街」をコンセプトの一つとし、その観点から約100億円をかけて発電システムを導入した。しかし、多くの商業ビルでは大型の発電システムを導入することは難しい。「今後、都市電力の分散化などを進めるなら、何らかのインセンティブが必要」(武田氏)。例えば、本格的な発電システムを構築する都市再開発では、容積率を割り増すといった対応も求められている。(高山豊司)

[SankeiBiz]

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