【コラム】2018年、平昌冬季五輪の魔法だけでは不十分

 冬季五輪の平昌招致が決まった南アフリカ・ダーバンのドラマは、われわれに「2018年=平昌」というイメージを与えた。江原道民の熱い願い、全国民のサポート、2回の苦杯の末に勝ち取った3度目の成功など話題に事欠くことなく、喜びと感動はより一層膨らんだ。

 しかし2018年は、われわれにとって平昌冬季五輪の「魔法」を語るだけでは不十分だ。国内外から、例年になく困難かつ複雑多難な高次方程式の課題が突きつけられる年でもあるからだ。とりわけこの年は、2008年のリーマンショックから10年目に当たる。危機で崩壊した国もあれば、危機をチャンスに変えて発展した国もあり、このころにはその差が一層明確に表れるだろう。 また、中国が世界一の経済大国として実質的に米国を上回っているかもしれない。世界銀行は、2020年ごろには中国が米国を追い越すと予想しており、また最近の国際通貨基金(IMF)の報告書によると、2016年には購買力(PPP)基準で中国の国内総生産(GDP)は米国を上回るとの見通しが示されている。

 また、世界人口の40%近くを占める中国とインドの軍事・技術競争はさらに加熱するだろう。無人宇宙船で中国に一歩後れを取ったインドは、これまで2020年を目標に掲げ取り組んできた有人宇宙船の月への着陸計画を2018年に前倒しした。これに負けじと中国も、2020年に宇宙ステーションを建設するという野心を抱いている。米国のゲーツ元国防長官は「中国は試験飛行を早期に終えたが、J20ステルス戦闘機の実戦配備までにはさらに多くの時間がかかる」と話した。ところがこの発言とは異なり、外信は「2018年には中国が5世代戦闘機を前倒しで実勢配備するだろう」という見方を報じている。

 国際秩序での軍事力・経済力の版図が大きく変化し、中国の影響力が一層大きくなるとみられる時期に、北朝鮮の金正日(キム・ジョンイル)総書記は77歳になっている。また後継者の金正恩(キム・ジョンウン)氏は30代半ばで、韓国の対北朝鮮政策も正恩氏を念頭にいて検討していかなければならない時期を迎えていることだろう。

 このように国際情勢が緊迫するのは間違いないが、韓国は今よりも弱体化した経済力でその時期を迎えなければならない。これまでは青年・壮年のごとくひたすら走り続けてきた韓国社会だが、2018年には、65歳以上の人口が全体の14%以上を占める高齢化社会を迎える。またこの時期から人口の減少も始まり、経済成長で人口増の恩恵を受けた時代は幕を下ろす。空き家が増え、働く若者は減る一方で、支援が必要な高齢者や貧困層が増加するため、より熱心に働いても国の基盤が今以上に弱まるといった状況は避けられない。

 「2018年平昌冬季五輪」を招致した感動が冷めやらぬうちに、このような不安材料を取り上げるのには理由がある。政治家の頭の中で、2018年がどのように描かれているのかが分からないからだ。来年の2012年には大統領選挙と国会議員選挙を控えているが、候補者たちは無責任な発言ばかりを繰り返している。その現場を目の当たりにすると、彼らの頭の中に2018年の韓国は描かれていないのではないかと疑ってしまう。つまり2018年にどのような状況になろうとも、今は票を集めるために金をばらまいておけばよいということだ。

 2018年まで、あと7年しか残っていない。平昌冬季五輪の開催に向けて競技場を建設するだけでも、それほど余裕があるとはいえない。しかし、その間に世界は大きく変化するだろう。国際秩序の新たな動きをしっかりと把握しながら、大韓民国が内外で直面するであろう難題や障害を慎重に克服する知恵深い政治のリーダーシップが何としても必要だ。しかしそれが実現しない限り、われわれは2018年の「平昌のドラマ」を喜んで迎えることができるだろうか。

姜京希(カン・ギョンヒ)経済部長

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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