2007年12月10日

●ネタ出しスター誕生!?●

2005年に弱小サークルのコピー本として誕生した『オタクの遺言状〜いつかかならず〜』は、夏コミと冬コミで売られ、ともに完売という華々しい成績をおさめました。そりゃそうでしょう。数十部しか作ってないんだから(笑)

そして年が明けて2006年、バーバラ様から舞踏会への招待状をいただいたのです!

「私が定期的にやっているトークイベントの中で、この同人誌を本にしてくれる会社を探してみませんか?」

それは、新宿のライブ会場『ネイキッドロフト』という所で行われる≪企画の鉄人≫というイベントでした。
なんと、出版社に勤める編集者さんや原稿を書くライターさん、そして出版化未定の企画を持っている人間が集まり、その場でプレゼンしたら、
「それ本にしましょう・おお原稿は私が起こしましょう・やったぜオレのアイデアが本になるぜ」
の理想の現実化が達成できるか!?
と言う、まさしく出版界版の『スター誕生!』みたいなイベントでした。

↑よくまぁこんなイベント思いつくものですよねぇ…。

「当日は例の同人誌を持って会場に来てね♪」
との指定で、おそるおそる会場に行きました。

うわっっ何これ、ちゃんと会場ほぼ満員で、しかもなんか皆さんすっごいマジメな顔してノートなんか取ってる人もいるではないですか。やっぱりこれって冗談とかお遊びじゃなくてマジな舞踏会だったのか!?(←すんませんバーバラ様、実は会場に着くまではひょっとして業界さんたちの冗談イベントかも…とか少しだけ疑っていました)
司会進行のバーバラ様が、出版社の人とか印刷会社の人とかと色々話していますが、こっちはそれどころじゃありません。
真剣に、自分の同人誌の内容を、自分がやりたい事の内容をアピールしなきゃならないんですから!ひえぇぇぇぇぇ!
いよいよ出番がやってきました。
えー、幸いと言いますか実はワタクシ、人前でしゃべる事には抵抗の無い人間なので、とりあえず精一杯しゃべらせていただきました。、どーしてオタクには遺言状が必要なのか、オタクの持ち物というのがどんなに処分がやっかいな物なのか、とにかく今のオタクには絶対、絶対、こういう本が必要になってくる時が来る、いや実はもうなってますってば!
ぜーぜー。

「はい、それでは判定です。本郷さんの企画『オタクのための遺言状マニュアル』は出版化できると考える方〜♪」



……あ。
ありませんかそうですか。

いえ、別にそんな甘い期待はしていませんよ。ちょろっと新宿のライブ会場に行って、ちょろっと壇上に上がってベラベラしゃべって、そしたら白馬の王子さまがやって来て、あらどうしましょワタシってば商業出版のめくるめく世界に連れてゆかれてしまうわぁぁ〜♪あ〜れ〜♪

なんて期待なんかしていませんでしたよ、ホントですってばっっっ!
ぐすん。

「うーん、このままだと本にはねぇ。
たとえば、オタクの人たちのそのスゴイ部屋を何人も何人もバァァァッと写真で見せて、これがオタクの生き様だ、みたいにビジュアルで見せたらいいかもしれないけど」

「いいと思うけどやっぱり、こういう企画は部数にはつながらないかなぁ」

なるほど。
アマチュアの私は単純に、世の中で必要とされている内容なら、それを言えば誰かが認めてくれて本になるのかと思っていました。でもそれはあくまでも同人誌レベルの話しであって、「商売」だと、見てもらった瞬間のビジュアルとかが大きな要素になるんですね。
そして、いただいたご意見で一番心に突き刺さり、鋭さに泣きたくなったのはこちら…。↓

「あのね、この企画の本がいちばん売れる場所って書店じゃないんですよ。
この本は、書店の棚じゃなくって、同人誌即売会の会場でならすごく売れる本なんですよ。
全国の本屋さんの棚に一冊ずつ配本しても売れません。
必要としている人たちの目の前に持っていくと売れる本なんですよ」

ビジュアルをどうとか、死に方じゃなくて生き様を出す本にすればとか、私はそんな事をしたくてここに来たんじゃないんです。
もしも自分や、自分のようなオタクが死んだらどうすればいいんだろう。それを解決するための手がかりになれるものを作りたいし本にしたいんです。
その事を分かってくださって、でもそのうえで、商業出版の人間として私の企画の最大の欠点を指摘してくださった。
ありがとうございます。

イベント終了後、バーバラ様と一緒に会場に残って、色々な業界の方々とお話させていただきました。
楽しかったのですが、でも私はどうしても、会場で言われたことが引っかかっていたのです。

『必要としている人たちの目の前に持っていくと売れる本なんですよ』

……それって、商業出版の世界では出来ないことなの?
じゃあ出版社って、本を作ったら自分の本を、取次会社の決めたラインに乗せるしかしないの?
こうすれば売れる、でもそれは普通の取次ラインじゃない。だからこれは売れない本。
この論理、私にはどうしても受け入れにくいものでした。

「またチャンスはありますから。この企画は私が持っていますからね」

そう言ってバーバラ様が励ましてくれました。
まだ、チャンスはあるかもしれない。
そうよ、絶対売れるはずだもん、だってアタシみたいに死んだらどうしようって考えるオタクは絶対にたくさんいるはずなんだから!


これが、2006年の夏でした。
【ゆき緒の制作日誌の最新記事】
posted by 本郷ゆき緒 at 21:25 | TrackBack(0) | ゆき緒の制作日誌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年11月09日

●どうしてこんな同人誌作ったの?●

そもそもどうして『オタクのための遺言状の書きかた』なんてネタを同人誌にしたの?

はい、理由はかんたんです。誰もが思っているネタなのに、誰も本にしていなかったから。
いいトシをしたオタクが三人寄れば、男女問わず出てくるバカ話しとしてこんな事を叫んだ覚えがありませんか?

「もし今死んだらアタシの部屋ヤバすぎ!頼むから家族が入る前に始末して〜!」

そう言って皆さん笑っていますが、はて、もしも死んだらマジでどうなるの?
もはや私も30をとっくに過ぎた独身子無し、正真正銘の負け犬さん。興味が出てきて調べてみました。まずは書店へ、遺言状の書きかたガイドや財産相続の解説書を買ってみましょう。
ところが。
書店に並んだ数十冊の本を残らず開いてがく然としました。何とその本の中には「独身子無し、ちょっとだけ財産アリ」の人間のための本がほとんど無かったのです!
そう、世の中の財産相続と言うのは、土地だの家だの宝石だの株券だのを、配偶者や子供たちにどう譲り渡せばいいのかは書いてありますが、独身子無しの人間がどうすれば良いのかはほとんど書かれていないのです。あってもほんの数ページ。
そんなバカな〜!だって私も私の友だちも、みーんな独身子無しのオタクばっかりよ。一体どうすればいいの!?

と言うことで、自分ひとりで自分なりに調べてまとめてみたのが2005年発行の同人誌、

『オタクの遺言状〜いつかかならず〜』

でした。
弱小サークルですのでオフセットなどとんでもない。手作りコピー本をほんの数十部、コミケのスペースに出してみました。すると、文字ばっかりの地味本なのに目を留めてくれる方がいらっしゃいまして、それからは調子にのってコミケのたびに数十部ずつ(相変わらず手作りで)コピー本を出しています。
今ではすっかりサークルの定番商品になっています。
posted by 本郷ゆき緒 at 01:39 | TrackBack(0) | ゆき緒の制作日誌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

●ごあいさつ●

はじめまして。本郷ゆき緒と申します。
このたび自分の作った同人誌を一般書籍にしてしまい、栄光の新刊書店に進出しようともくろむ身のほど知らずです。ネタはズバリ、

『オタクのための遺言状の書きかた』

95%のガラクタと5%のお宝が天井まで詰まっている私のお部屋、私が死んだらどーなるの!?
そんな疑問にガッチリ答え、たとえゆりかごには自分の子供がいなくても、墓場までなら安心のオタクライフを作るべく立ち上がりました。
さぁ、弱小サークル発行の、たかだか30ページちょっとのコピー本が果たして本当に「ちゃんとした本」になれるのか?
そもそもこんな企画、ホントに通って予算を出してもらえるのか?
何よりかにより、本屋でちゃんと売れるのか?

やってみなくちゃ分からない。とにかく書かなきゃ始まらない。
と言うわけで、万年弱小サークル主宰者の本郷ゆき緒、人生初の野望にチャレンジしてみます!
皆さま、どうか生温かく見守ってくださいませ。
posted by 本郷ゆき緒 at 01:30 | TrackBack(0) | ごあいさつ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年11月08日

このブログを始めるにあたってのごあいさつ

 皆様、初めまして。
 出版評論家・編集者の大内明日香と申します。

 このたび、ある同人誌を商業本にする企画が持ち上がりまして、それを担当することになりました。

 このブログでは、同人誌が商業本になる課程をできる限り赤裸々にご紹介していこうと思います。

 「本が出版されて書店に並ぶまでには色んな出来事や困難がある。ましてや、プロでない方しかも新人が書いた本なら、もっとたくさんの困難がある」ということを皆様に知っていただく、ということがこのブログの目的です。


 この本がめでたく書店に並ぶまでには色んな出来事があるはずです。

 出版社の気が変わって、他の出版社を探すことになるかもしれません。
 出版までに他の出版社に企画をパクられるかもしれません。
 偶然、他の出版社でも同じ企画が進行しているかもしれません。
 編集者や著者が途中でトンズラするかもしれません。
 出版社が倒産しちゃうかもしれません。
 配本直前に重大誤植が見つかって、回収になるかもしれません。
 原稿が間に合わなくて、発売日を遅らせることになるかもしれません。

 本が出るまで、いえ、出た後も、いったい何が起こるかわからないのが、この業界なのです。

 皆様も私たちと一緒に、この本が無事出版されることを見守ってくださると嬉しいです。

 それでは、はじめます。

 出版評論社 大内明日香
posted by 大内明日香@バーバラ at 16:25 | TrackBack(0) | ごあいさつ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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