金融庁が7月7日に、新日本有限責任監査法人と同法人所属の公認会計士に対して処分を発表しています。
(金融庁HP: http://www.fsa.go.jp/news/23/sonota/20110707-1.html)
(新日本有限責任監査法人HP: http://www.shinnihon.or.jp/about-us/news-releases/2011/2011-07-07.html)
内容を見ると、平成18年3月期における、ある企業の架空売上に関する処分なので、「平成18年度の処分をいま頃になって」という金融庁の処分の遅さが気になりますが、それよりも問題は会計士の関与の仕方。
金融庁の発表によると、残高確認状の回答が得られなかった取引先に対する代替手続きが不十分であったのみならず、「A会計士は、監査報告書提出の数日前に当該売上先からX社に対する債務の認識がない旨の通報を直接受け、B会計士は、当該通報があった旨の報告を受けていた。更に、ほぼ同時期に既に当該売上先へ納入したとされていたシステム機器が、実際には当該売上先へ納入されずに物流倉庫に保管されていたことも判明し、A会計士及びB会計士は、この事実を認識していた。」(金融庁発表文の一部。本文では社名および会計士の名前は開示されている)
つまり、この会計士2名は、監査報告書提出直前という厳しいタイミングであるものの、架空売上げを認識したまま監査証明を発行した。
職業倫理の欠如、ここに極まれリ。
ちなみに、新日本有限責任監査法人は、中央青山監査法人を吸収合併(?)した過去があります。
中央青山監査法人は、所属した会計士が深く関与したカネボウ粉飾事件で、監査法人として立ち行かなくなった監査法人です。
その「中央青山的」というか、「ひと昔前の監査法人」的体質の残滓を、新日本有限責任監査法人は払拭しきれていないということ。
最近は、どの監査法人も監査証明を出す前には、法人内で審査を受けることになっているし、レビューをする部門もある。
しかし、そういった体制があるにも関わらず、架空売上げを認識したまま、見切り発車的に監査証明を出しまう監査法人とは、いったいどういった監査法人でしょうか。
監査法人としては、法人としての業務停止処分を受けていないことを指して、「個人の資質問題」に矮小化したいようだが、それはちょっと無理があります。だってコンプラ研修を法人内でやっている筈で、それが浸透していないのは法人の責任。
また、「だから」というのは牽強付会ではあるが、新日本有限責任監査法人が出した東京電力の監査証明も、実に「東京電力に優しい」。
もっとも、問題の本質は監査報酬を企業から貰っていることにあるのだが、それはまた別の話。
いずれにしても、新日本有限責任監査法人そのものを「監査」する必要があるといわざるを得ないし、同法人の出す監査証明が「無限定」に「適正」であるかどうか、信用できるかどうか、疑ってみる必要があるかも知れません。