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再読 こんな時 こんな本

「再読 こんな時 こんな本」は、朝日新聞の土曜朝刊に挟み込まれてくる別刷り紙面「be」に掲載しています。この記事の下部から、書籍の購入ページへ飛ぶこともできます。

書店員に聞く 韓国人とのつきあい方の本

韓国人の作法 [著]金栄勲

[掲載]2011年7月16日朝刊be

表紙画像著者:金 栄勲  出版社:集英社 価格:¥ 735

 韓流ドラマの洪水の中で、かつて「近くて遠い国」だった韓国が本当に近い国になった。とはいえ、ドラマを見て理解しがたいシーンに首をかしげた人は多いだろう。韓国人と友達づきあいをするために、役立つ本を紹介したい。

■三省同神保町本店 福澤いづみさんのおすすめ

(1)韓国人の作法 [著]金栄勲

(2)心で知る、韓国 [著]小倉紀蔵

(3)朝鮮紀行 [著]イザベラ・バード

 ▽記者のお薦め

(4)韓国がわかる60の風景 [著]林史樹

 スペインのバルセロナで1992年に開かれたオリンピック大会の最終日、私は競技場の記者席にいた。男子マラソンの本命は日本選手だったが、一着でゴールに入ったのは韓国の選手だ。記者会見で日本の選手を追い抜いたときの気持ちを聞かれた彼は一言、「ハン!」と答えた。

 ハンを漢字にすれば「恨」だ。かつて韓国を植民地とした日本への思いをぶつけた。植民地時代に日本選手としてマラソンで優勝した孫基禎氏が競技場にいて、「もう死んでもいい」と泣いた。戦後、半世紀近くたっても憎悪の感情を抱く韓国人と仲良くつきあえる日がいつか来るのか、と暗澹(あんたん)たる気持ちになった。

 それからわずか11年、テレビ放映された「冬のソナタ」が爆発的なブームを呼び、2004年には「ヨン様」が流行語大賞になった。今や日本女性が韓国に押しかける。韓国は経済だけでなく文化、スポーツでも自信を持ち、日本より元気だ。

 とはいえ、韓国人と日本人の国民性の違いを感じる機会は多い。感情表現を控えがちな日本人に比べ、韓国人は全身で激しく表現する。ならば、違いを知っておけばいい。そのためにぴったりな本がある。

 福澤さんがまず挙げた(1)『韓国人の作法』は、韓国の文化人類学者が外国人留学生からよく受ける64の質問に答える形だ。「韓国人について知るには最適の一冊。日本と異なる常識・非常識を知っていれば、上手につきあえるはず」と福澤さん。

 (2)『心で知る、韓国』は、逆に韓国に詳しい日本の学者の作だ。韓国人の考え方や美の感覚などを、日本と韓国を比較しながら解き明かす。なぜ韓国では大統領も整形手術をするのかの分析や、韓流ドラマは日本の任侠(にんきょう)映画に似ているという指摘など、読み物としても面白い。

 (3)『朝鮮紀行』は、名高い英国人の女性旅行家が100年ほど前に朝鮮各地を旅して見た姿をつづった。日本が植民地化する前の現地の人々の様子が手に取るようにわかる。「朝鮮独特の民俗・風俗の原点が垣間見える」と福澤さん。

 私が薦める(4)『韓国がわかる60の風景』は、韓国女性と結婚した日本の学者が体当たりで書いた。「飲む」「愛する」など60の動詞をキーワードに、両国民の思考と行動の違いを語る。

 たとえば日本で人気の牛丼チェーンが韓国で惨敗したのは、食べ物を混ぜる韓国の習慣を理解しなかったから。韓国人と食事をするなら「割り勘」は禁物。あるいは韓国で名刺を使うなら肩書をいやと言うほど書け、などのアドバイスが満載だ。

 読み進むうちに、疑問に思っていたことがいくつも氷解してきた。(伊藤千尋)

    ◇

〈見るなら〉下流人生〜愛こそすべて〜

 「韓流」と銘打たれた韓国映画の隆盛の裏側で、韓国の老練な映画人はなす術(すべ)もなく淘汰(とうた)された。

 しかし、「風の丘を越えて〜西便制」などの名作で知られるイム・グォンテク監督(75)は別格だ。2007年には、100本目の作品「千年鶴」をものにした。

 日本では劇場未公開の「下流人生〜愛こそすべて〜」(04年)は、軍事政権下の映画統制を知る巨匠だからこそ描ける韓国現代史の暗部がテーマになっている。

 李承晩政権下の1950年代末期、ならず者の高校生テウンは腐敗した政治家と癒着したヤクザ組織の手先となった。61年の5・16軍事クーデターを機に堅気になろうとしたテウンは映画製作に手を出したが、検閲でフィルムをズタズタにされ失敗。裏稼業へ舞い戻り、軍納入業者の談合組織を仕切って成り上がる。だが、破滅の時は近づいていた。(龍)

表紙画像

韓国人の作法 (集英社新書)

著者:金 栄勲

出版社:集英社   価格:¥ 735

表紙画像

心で知る、韓国

著者:小倉 紀蔵

出版社:岩波書店   価格:¥ 2,520

表紙画像

朝鮮紀行 (講談社学術文庫)

著者:イザベラ・バード

出版社:講談社   価格:¥ 1,733

下流人生 ~愛こそすべて~

発売元:メディアファクトリー

価格:3,990

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