東日本大震災
東日本大震災に関する情報や復興を目指す被災者の様子を伝える。
【社会】本郷館今月限り 築100年の下宿2011年7月16日 夕刊
東京・本郷で百年以上続く木造三階建て下宿「本郷館」が、今月いっぱいで姿を消すことになった。解体業者が十一日、「八月一日から解体する」との告知を現地に張り出した。建物をめぐっては、住民や建築家らによる保存運動も続いている。 (井上圭子) 本郷館は、東京大学の西約二百メートルの場所に、一九〇五(明治三十八)年に建てられた。現存する日本最古の木造三階建て下宿で、延べ床面積約千五百平方メートル、約七十室がある。戦前までは高級下宿で、作家の林芙美子や台湾初代総統の蒋介石も住んだとされる。 現代になっても、風情ある暮らしを好む人たちが住み続けてきたが、二〇〇六年、家主が集合住宅への建て替え計画を提示した。住人が拒んだため立ち退き訴訟に発展した。 住人側は敗訴したが「建物には、重要文化財級の価値がある」と指摘する専門家もおり、住民や建築家らによる保存運動が起きた。先月、保存を求める要望書と約三千人分の署名が家主と文京区に提出されたが、家主から返答はなく、区も「所有者の同意が得られず保存活用は困難」と回答した。 家主側はこれまで訴訟などで「老朽化が激しく、何かあってからでは遅い。一刻も早く取り壊すのが、家主の義務」と主張していた。 解体を請け負う横浜市の業者は「文化的価値の話は聞いたが、保存について言う立場にない」としている。 ◇ 建物の歴史価値を訴える住民や建築家らでつくる「本郷館を考える会」代表の伊郷吉信さんは「まだあきらめない。多くの人に本郷館の存在を知ってほしい」と話し、同館を題材にした絵や写真、詩などを本郷の街角に飾る「わたしの本郷館」を二十三日から開催することを決めた。 「わたしの本郷館」への作品応募は二十日までに郵送で〒110 0001 台東区谷中六の二の四二の二〇一 本郷館を考える会事務局。問い合わせはメール=hongoukan@gmail.com=へ。 PR情報
|