【コラム】テクノマートに行きたい
記者個人としては、多くの電子製品を見て回るだけで、リラックスできる。売り場の前を通り過ぎると、従業員が「何かお探しですか」と尋ねてくる。現代の百貨店では消えた「呼び込み」の伝統が今も生きていることを感じるのも悪くない。映画好きの息子は8階のDVD専門売り場を回り、新作映画を物色するのが趣味だ。最新の映画や名作ドキュメンタリーがインターネット上よりも安く売られていることもある。一方、音楽好きの娘は、3階の楽器コーナーでエレキギターやサクソホンなどの楽器に触れながら楽しんでいる。そして、地下1階のアイスクリーム店には家族全員が集まる。駐車も便利で、映画館や、さまざまな飲食店、ショッピング施設を備えたテクノマートは、単純な電子製品モールではなく、家族が休日のひとときを過ごすことのできるリラックスした空間でもある。
しかし、今月5日にテクノマートの建物で異常な揺れが生じるという事件が発生して以来、私の家族は一度も訪れていない。正確に言うならば、行くことができないのだ。家族の誰かが「用事があるので行きたい」という言葉を切り出す雰囲気でもない。子どもが先に立って制止するほどだ。最近テクノマートの来店客は3分の1から10分の1に減少したという。1995年の三豊百貨店崩壊のトラウマを持つ韓国では当然のことかもしれない。
人間のトラウマには2種類があるといわれる。一つは恐怖感で、恐怖の対象が具体的なときに生じる。もう一つは不安感で、対象が不確実な場合に生まれる。私の家族がテクノマートに行かないのは「建物が崩れるかもしれない」という恐怖感よりも「地上39階建ての巨大ビルが10分間も揺れた理由を誰も正確には分からない」という不安感に近いようだ。
ソウル市広津区庁は、テクノマートで起こった揺れについて、建物内のフィットネスセンターや4D映画館で生じた揺れが、建物全体の微細振動と重なり、増幅された「共振効果」が原因と推定している。しかし、それすらも説明に自信を伴わない見方だ。フィットネスセンターと映画館も「根拠不足の説明だ」と反発している。風による振動だという専門家の意見もあるが、公式には確認されていない。
広津区庁は「揺れの原因は分からないが、建物の安全には異常がないことが確認された」と話している。しかし、そんな不明確な説明は、人々の不安感をむしろ増幅させるだけだ。「何階と何階の間の柱の連結部にこういった問題が発見された」という具合に正確な発表があれば、恐怖感もすぐに消えるはずだ。
今、当局がなすべきことは「安全上の問題はないので心配するな」とむやみに市民を説得することではなく、科学的で正確な診断により「建物の揺れの原因と問題部分を発見した」と発表することだ。そうすれば、私の家族も安心して再び週末にテクノマートに足を運ぶことができるようになるはずだ。
キム・ドンソク社会部次長
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