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【防衛利権 蜜月の構図】

山田洋行元専務ら逮捕  守屋前次官に過剰接待、横領容疑で

2007年11月9日

自宅を出る防衛商社「山田洋行」の宮崎元伸元専務=8日午前11時47分、横浜市青葉区で

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 防衛専門商社「山田洋行」(東京都港区)の米国現地法人から約1億2000万円を不正に引き出し着服したなどとして、東京地検特捜部は8日、業務上横領と有印私文書偽造・同行使の疑いで、同社元専務で防衛専門商社「日本ミライズ」(同)前社長の宮崎元伸容疑者(69)=横浜市青葉区=を逮捕した。宮崎容疑者は、守屋武昌前防衛事務次官(63)と200回以上ゴルフをするなど過剰な接待を繰り返しており、特捜部は今後、宮崎容疑者と守屋前次官との癒着の解明に向け、捜査を本格化させる。

 特捜部は同日、米国滞在中の米国現地法人「ヤマダインターナショナルコーポレーション」元社長の秋山収容疑者(70)についても、業務上横領容疑などで逮捕状を取った。また、有印私文書偽造・同行使の疑いで、山田洋行元役員室長で日本ミライズ管理部長今治友成容疑者(57)=横浜市南区=も逮捕した。

 調べによると、宮崎容疑者は昨年9月から今年1月にかけて、「ヤマダインターナショナル」の秋山容疑者が管理していた数億円の裏金のうち約1億2000万円を、宮崎容疑者が山田洋行から独立して昨年9月に設立した日本ミライズの資金に使うため、秋山容疑者に指示して4回にわたって日本に送金させ、着服した疑い。横領した金の大半を、ミライズの資金として使ったという。

 秋山容疑者は長年、宮崎容疑者から指示を受け現地法人役員に対する報酬名目で小切手を振り出して換金した後、複数の口座に分散して裏金をプールしていたとされる。

 宮崎容疑者は逮捕前の取材に「1億円は山田洋行が(自分を含めた)3人の役員に払った賞与。会社設立の際に借りたことを横領というのはおかしい」と話した。また、宮崎、今治両容疑者は昨年7月、山田洋行が05年9月に米国の防衛商社「エイベックス・エアロスペース・コーポレーション」と結んだ販売代理店契約を解除させようと計画。両容疑者は既に山田洋行を退社していたが「山田洋行の経営陣が交代した場合、契約を解除できる」との項目を追加し、当時対立していた山田洋行が不利になるよう契約書を偽造した疑い。今治容疑者は契約書の原本を廃棄していた。特捜部はエイベックス社も偽造を認識していたとみており、関与の有無を追及する。

    ◇

事実解明待ちたい

 ■日本ミライズの話…前代表取締役宮崎元伸らが逮捕されたことは誠に遺憾。ご迷惑をおかけしていることをおわび申し上げる。当局の捜査には協力し、事実が解明されることを待ちたい。

    ◇

<解説> 防衛利権にメス

 東京地検特捜部が防衛専門商社「山田洋行」の元専務宮崎元伸容疑者(69)逮捕に踏み切った狙いは、巨額の防衛装備品調達をめぐる宮崎容疑者と守屋武昌前防衛事務次官(63)との癒着の全容解明にある。

 特捜部は、2006年にあった防衛施設庁官製談合事件の捜査過程で、守屋前次官が、沖縄の基地関連の建設工事で地元業者が受注できるよう口利きしたとの疑惑をつかみ、内偵捜査を進めた。最終的にその捜査は中止されたが、その後も守屋前次官周辺の疑惑について情報収集を続けていた。

 先月29日の証人喚問では、宮崎容疑者が守屋前次官に対し、ゴルフ接待や飲食接待を繰り返すなど、癒着の一端が明らかになった。多額の接待などの見返りに、防衛装備品調達をめぐって守屋前次官が、宮崎容疑者に何らかの便宜を図ったのでは−。これが特捜部の描く事件の構図だ。

 しかし、「(宮崎容疑者と)知り合ったのは23年前」(守屋前次官)というように、家族ぐるみの付き合いもあり、過剰な接待の見返りとしての便宜供与を直接、職務権限と結びつけることは容易ではない。

 宮崎容疑者は、多額の交際費を使って防衛族議員やほかの防衛省官僚も接待していたとされる。当面は、宮崎容疑者からの資金の流れや趣旨の全容解明が焦点。巨額の防衛利権は国防の観点から秘密性が高く「聖域」とされ、本格的な捜査が入ったことはなかった。特捜部が政官業の癒着をどこまで白日のもとにさらせるのか注目される。

 (東京社会部・加藤文)

 

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