生体腎移植を巡る臓器売買事件で逮捕された開業医、堀内利信容疑者(55)が宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)で移植を受ける直前、ドナー(臓器提供者)の石川竜哉容疑者(21)について「手術が終われば用はない」と妻の則子容疑者(48)に話していたことが捜査関係者への取材で分かった。警視庁組織犯罪対策4課は、石川容疑者との養子縁組が移植目的の偽装だったことを裏付ける発言とみている。
捜査関係者によると、堀内容疑者は指定暴力団住吉会系組長、坂巻松男容疑者(70)にドナー探しを依頼。紹介された石川容疑者と昨年6月に養子縁組を結んだ。石川容疑者は坂巻容疑者側から数十万円の借金の帳消しと100万円の報酬を約束され、承諾したという。
堀内容疑者は、病院側には「実の親子のような関係」などと虚偽の説明をし、石川容疑者は「わが子のように心配して面倒を見てもらった」と書いた直筆文書を提出。病院側は「親子関係はあった」と判断し、手術を承認した。このころ、堀内容疑者が則子容疑者に、手術終了後に石川容疑者との関係を絶つ意向を伝えたという。
手術は養子縁組から約1カ月後の昨年7月30日に実施。石川容疑者は手術後、堀内容疑者とは一緒に暮らさず、坂巻容疑者らとも連絡を絶ったという。約束された報酬のほとんども渡されなかったとみられる。【川崎桂吾、前谷宏】
毎日新聞 2011年7月16日 東京朝刊