欧州に大規模停電危機 独の脱原発受け、多額の経済的損失確実 (1/2ページ)

2011.7.13 05:00

ドイツ中部のグラーフェンルハインフェルトにあるエーオンの原発。同国の脱原発を受け欧州に大規模停電の危機が迫っている(ブルームバーグ)

ドイツ中部のグラーフェンルハインフェルトにあるエーオンの原発。同国の脱原発を受け欧州に大規模停電の危機が迫っている(ブルームバーグ)【拡大】

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 東京電力福島第1原子力発電所の事故を機にドイツが原発の全廃を決めたことを受け、欧州に大規模停電の危機が迫っている。同国が電力の輸入国に転じることにより、欧州域内の送電網に負荷がかかるためで、最悪の場合、欧州の約半分の地域が影響を受け、多額の経済的損失が発生するとみられている。

 ◆06年1000万人影響

 ドイツの送電網規制当局、連邦ネットワーク庁は脱原発政策を踏まえ、2006年以降で最も広範にわたる停電が欧州で発生する恐れがあると警告している。06年に独エーオンが引き起こした大規模停電ではドイツをはじめ、オーストリアやベルギー、フランス、イタリア、ポルトガル、スペインなど周辺各国も含め1000万人に影響が及んだ。

 メルケル首相は3月、福島第1原発のメルトダウン(炉心溶融)を受け、国内にある最も旧式の原発7基の停止を指示。さらに国内で反原発の機運が高まったため、従来のエネルギー政策を転換し、2022年までに国内の全原発を停止する方針を決めた。ドイツは昨年、電力需要の23%を原発でまかなっている。

 連邦ネットワーク庁は、原子力政策の転換により、7カ国以上の送電網でリスクが高まると分析している。欧州には30万5000キロメートルに及ぶ送電網が国境を越えて張り巡らされており、最も需要が大きく、最も高い電気料金を支払う場所に電力を送り届けている。

 同庁は、欧州全域で需要がピークを迎える冬季には、送電網の最大40%が過負荷となる恐れがあると予想。冬季に国内の電力需要が増えすぎた場合、停電を回避する最後の手段として自動車工場などへの電力供給を停止する可能性があり、「大規模な経済的損失」につながるとの見通しを示す。12月の電力需要予測は最大8万メガワットで、6月上旬の下限だった3万5000メガワットの2倍以上という。

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