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英大衆紙盗聴:メディア王、威信が失墜 英政界と蜜月、問題で一転

 【ロンドン笠原敏彦】盗聴スキャンダルで廃刊となった英日曜大衆紙「ニューズ・オブ・ザ・ワールド」を傘下に置いていた豪州出身のメディア王ルパート・マードック氏をめぐり、英政界は「マードック詣で」から「マードックたたき」へ姿勢をひょう変させている。英社会に強い影響を及ぼしてきた「マードック帝国」への不満が噴出した形で、威光は英国で急速に衰えている。

 マードック氏は、英国で最大部数を誇る大衆紙サンや高級紙タイムズを傘下に収める。マードック氏の支持は総選挙の結果を動かすと信じられ、歴代の政党指導者にとって個人的な関係を築くことは「通過儀礼」とされてきた。ブレア元首相(労働党)やキャメロン現首相(保守党)も政権交代を果たす前にマードック氏傘下の新聞から支持表明を取り付けた。

 有名人や政治家らに対する一連の盗聴スキャンダルの発覚は05年までさかのぼる。事態を深刻化させたのが、02年の誘拐殺人事件の被害少女ミリー・ダウラーさん(当時13歳)の携帯電話を盗聴した新疑惑が今月初めに発覚したことだった。

 英社会で沸き上がった非難の声を背景に、政界とマスコミの「なれ合い」(キャメロン首相)の殻を破って野党・労働党のミリバンド党首が最初に対決姿勢を示すと、各政党が結集して「英議会VSマードック氏」の構図が急速に出来上がった。

 団結した議会側は、マードック氏側を次々と「屈服」させている。キャメロン首相を含む主要3政党の党首の結束を前に、マードック氏はメディア拡大戦略の柱だった英衛星放送BスカイBの完全子会社化を13日に断念。当初は19日に予定される議会委員会への参考人招致を拒否していたが、14日に召喚状を突きつけられると出席する姿勢に転じた。

 ミリバンド党首はマードック氏が「(議会の)意思に屈した」と評し、「国民の勝利」を宣言した。キャメロン首相は、政治家がメディアと良好な関係を求めるあまり、メディアの「悪行」に「目をつぶってきた」と反省するが、議会にはしがらみから脱した英政治の「新時代」をうたう高揚感さえ漂っている。

毎日新聞 2011年7月16日 東京夕刊

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