【東京】米軍用地の返還に伴う特別措置法(軍転法)で定められた米国に基地内立ち入りを要請する制度が、事実上形骸化していることが18日、分かった。
同法では県や市町村が返還前の基地内立ち入りを要望する場合、国が米側に「あっせん」をするよう定めているが、国はあっせん申請の受付窓口を設けておらず、同法に基づく立ち入り申請は1度も行われていない。同日の参院決算委で島尻安伊子氏(自民)が明らかにした。
基地内立ち入りをめぐっては、県や市町村は同法による申請ではなく、1996年に日米が合意した「合衆国の施設および区域への立ち入り許可手続き」に基づき、提出しているのが現状。申請は沖縄防衛局が仲介するが、実際には県・市町村と米側の直接やりとりとなる。
軍転法に基づけば、日本政府が主体的な仲介役として米側に立ち入りを申請するが、国の窓口がなく事実上機能していない。
県はあっせんの形骸化を問題視。「要請があった場合は国が所要の措置を講ずることを規定する必要がある」とし、軍転法に代わる2012年度以降の新法で国の責任を明確化するよう求めている。
島尻氏は同日の決算委で「立ち入り申請の仕組みが法律で定まっているなら、きちんと履行するべきだ」と指摘した。
内閣府沖縄担当部局は日米合意に基づく申請が手続き的に簡便なため、軍転法のあっせん申請窓口設置の必要性が議論されなかったと説明。「新たな法律を考える中で課題として議論したい」としている。