【台北・大谷麻由美】台湾バナナの卸売価格が先月末から暴落し、農民が窮状を訴える中、中国政府が産地に乗り込んで大量のバナナを購入し、台湾の「農民救済」に乗り出した。中国への警戒感が強い野党・民進党の地盤である台湾南部の農民に対し、バナナ購入という「善意」を示すことで、将来の統一に向けた布石を打つ狙いがありそうだ。
中国側は、台湾の馬英九総統が状況を把握する前に大量購入していた。馬総統は「なぜ(農民は)先に言ってくれなかったのか」と嘆いたが、民進党は「(総統の)反応が鈍い」と批判している。
台湾バナナは高温続きで収穫量が急増。卸売価格は2月の1キロ約36台湾ドル(約101円)から今月は約13台湾ドル(約36円)まで下落。こうした中、中国国務院台湾事務弁公室の鄭立中副主任が8日に訪台し、南部を訪問。高雄市と屏東県のバナナ200~300トンの緊急輸入を即決した。
地元の農業協同組合関係者によると、購入価格は1キロ15台湾ドル程度で、農民らは「中国大陸の人は誠意がある」と好評。同弁公室はさらに購入を続ける考えを示しているという。
一方、中国のバナナの産地・海南省でも卸売価格が暴落し、農民は困窮している。
毎日新聞 2011年7月12日 東京朝刊