「キャラクターショー」はざっくりその内容や衣装によって
・原作は実写、アクション主体の勧善懲悪もの=「ヒーロー」と
・原作はアニメ、着ぐるみ実写ものなど=「メルヘン」に
二分されています(MCの仕事に両者の差異はありません)。
ということで厳密にはヒーローとはキャラクターショーの一種となるわけですが、そもそもは40年近い歴史を持つ形態であり、当時子ども向けライブショーといえばヒーローショーだったわけです。
「仮面ライダーをつくった男たち」によれば、番組で撮影を終えたスーツを再活用する手段として、それを用いた「仮面ライダーショー」を企画したのが始まりのようで…スーツは本物、アクターはテレビにも出演している大野剣友会メンバーと、ゴージャスにもほどがあるようなショーが日曜日ともなれば開催されていたそうです。
■MCの役割
一般論として、そのイベントの進行を滞りなく取り仕切る、というのがMCの(最低限度の)仕事です。
ところがキャラクターショーの場合は、以前「完パケ」のご説明をしたのでお判りかと思うのですが、ショー部分はある程度パッケージ化されているために、かなり高い確率で粛々と進行されていくものなんです。
放っておいても。
そこで、キャラクターショーにおけるMCのメイン業務は「枠づけ」ということになります。
絵画に額縁をつけるように、ショーの前後に行われるMCのトーク=枠づけによって、イベントとしての体裁を整えるわけです。
ちなみにショーの前に行うのが「前枠」、後に行うのが「後枠」です。
まずは前枠。
ここでの目的はお客様に
1)「これから何が行われるか」について正確な情報を与えることと
2)その期待感を煽り、ショーへの参加意識を高めること
で、一例としてわたしが教えられたやり方をあげてみますと…
◇挨拶
◇ショーが始まったことの宣言
※宣言などと書いていますが
「今日はみんなのために、この○○に□□マンが来てくれています!」程度の喋り。
◇客いじり
・挨拶/応援の練習
・体操、歌
・クイズ
・プレゼント etc.
※要はお客様に声を出してもらう、なんらかの動作/行動をしてもらうもの。
◇注意事項
・安全上のお約束
・マナーに関するお約束
・その他告知すべきこと(ショー終了後のイベント紹介等)
◇ショーへの導入
上記項目は、地域や時代によって流行のパターンがありますし、またその会社のやり方によっても色々と違うものです。
伝えるべきことを伝えつつ客席をあっためればOKなのですが、小さいお客様は勝手にあったまっていますので、だらだらやらないこと。
前枠はかなり自由度の高い部分で、ここで歌や踊りを披露するMCもいますし、「つかみ」として一発ギャグを磨く人も。
またショーの企画にもよりますが、いきなりキャラクターと絡んでのコント、というケースも見たことがあります。
「電王」スペシャルトークショーでは、幕が上がるなりミニイマジンショーが始まって「つかみ」の役割を果たし、その後にMCが登場していましたね。
台本によっては前枠省略、といいますか、登場人物の1人が劇中で導入部分の喋りを行うものもあります。一度「555」のスマートレディーが例の口調で
「はーい、ちびっこのみなさーん。こんにちはー」とやってるの見たことあり。
そのときは女優さんがMCを兼ねたのだと思いますが、逆にMCが劇中の人物の衣装を着ることもあります。
ちなみにショーが行われている間のMCは色々。
完璧にすることがなく、袖やPA席でスタッフの補助をしながら休憩していればいいという場合もありますし、出演者の一人として途中でステージに出ていくこともあります。
上手い方に限っての話ですが、うっかり影マイク(女性キャラの生声アテ)担当になるとめちゃくちゃ忙しいです。
そして後枠。
お客様の興奮状態を維持させつつ、ショーの後で行われる「何か」へスムーズに誘導するのがここでの目的です。
◇ショーの感想、見てくれたことへのお礼
◇「この後」の説明
・何時から始まるか
・どこへ移動し、どこに並べばいいのか
・有料か無料か etc.
※ショーの後のグリーティングや物販、同じ会場での別のイベント等。
◇ショーが終わったことのお知らせ・ご挨拶
※「もう一度○○マンにさようならを言おうね!」等
スタンダードな内容は上記の通りで、ここもさらっと3〜5分程度。
但し、そのまま「この後」のMCになだれ込んでいくケースが多いようです。
■一日の流れ
0)食事とか
キャラショーは2回上演、または3回上演というパターンが多い(後者は西日本に多いパターンだそうです)ので、一日仕事です。
よって基本的に、食事やのみもの・交通費の類は経費として扱われます。
朝食・夕食は移動しながらみんなと一緒に、ということが多いですね。
余談ながらわたしは以前、ある大型ショッピングセンターのオープニングセレモニーの仕事をしたことがありますが、朝10時に入って30分喋るだけだったので、ギャラはふだんの倍近く出たものの、食事はなかったんです…キャラショーは量食べるの大好きな人には、楽しい仕事だと思います。
お昼は
・弁当や店屋物を控室にデリバリーしてくれる
・主催者施設の食堂を利用させてくれる
・スポンサー、代理店に連れられてご馳走になる
など、主催者側が用意してくれることが多いのではと思います。
場合によっては、バレメシ、つまり休憩時間に自分たちで近所のお店に外食しに行くことも(経費をスタッフから預かる)。
会場がホテルなどで、豪華なご飯を食べさせてくれる現場は非常に人気が高いです。
そして、アレルギー以外の好き嫌いのある人、出された食事を残す人は…要注意です。
どうでもいいですが、バレとは「解体された状態」を言います。モノをバラバラにするのも、仮予定がなくなってしまうのも「バラす」「バラし」です。
ということでバレメシはメンバーが三々五々出かけててんでに食事を済ませてくるという意味。
まあバレといいつつ、小規模なショーでメンバーはスタッフ含めて10人にもならないので、結局一緒に行動してますね。
1)現場入り&準備
ショーの前日移動することもあります(「前入り」「前のり」等という)が、多かったのは当日朝、事務所等に一旦集合し、関係者一同車移動するというパターン。
現場が繁華街などの立地で自分で移動できる先なら、直接現場集合も(「直入り」)。
クライアント(いれば)に、代理店(いれば)に、スタッフや出演者に挨拶します。
他のMCのピンチヒッターで呼ばれる場合など、その現場がどういう場所で、どういう趣旨のイベントで、「モノ(演目)」は何か、わからないまま現場入りすることもあります。
情報収集・軽い打ち合わせは、挨拶とほぼ同時に行われるわけです。
会場を見渡して安全管理上どのような注意を客に対して行うべきかチェックし、ついでにトイレと非常時の避難経路も確認しておきます。
本格的な打ち合わせ等はタイミングを見て。
2)着替え
自前衣装…多かったです。
TVではアップで映してもらえますし、室内で、お客様とMCとの距離が近い場合など、べつにシックな服装で構わないというケースもあるのですが、野外の、しかもお子様向けのキャラクターショーでは
「ここにMCがいます」とわかりやすいことが大事。
デザインはお好みで、でも色目は子どもの好む明るいもの、はっきりしたものがいいようです。
浴衣等イベントやショーの趣旨によって指定されることもあります。
衣装支給の現場で着るものは当然ながらユニフォームっぽいものが主体です。
イベントのスタッフTシャツ、ショッピングセンターの「○○祭り」と書かれたはっぴ、コンパニオン風スーツ等々。
3)告知
例えば自分の担当する「○○マンショー」が11時から始まる場合、朝から場内アナウンスを行ったり、また開始30分前、15分前にはステージ近くで直接お客様に告知し、音楽を流し、着席誘導を行います。
会場内アナウンスは他の担当者がやってくださる場合もありますし、着席誘導等は主催者側が、という場合もありますので常にではありませんが。
4)ショーMC
前述の通り。
5)グリーティング誘導など
会場によっては後枠からそのままこちらになだれ込んで喋り続けることになります。
「今日はこの後、この会場で○○マンの握手会があります。○○マンと握手会したいお友達は、サイン色紙1枚200円を買って、並んで待っててね!」と後枠でご案内した場合…握手会やサイン販売の準備が整うまで(机・椅子などを並べ、いったん引っ込んだメインキャラクターが一息入れて再登場してくるまで)、MCもただ黙っているわけにはいきません。
興を醒まさせないためには黙らないこと。
「お釣りはできるだけないようにお願いします」
「間もなく握手会が始まりますよ」
「握手したいお友達は…して待ってね」(後枠の内容の繰り返し)
「こんにちは!今日は○○マンかっこよかったねー」
「今日はどこから来たの?」
「この○○祭りでは、他にも××や△△と、楽しい企画が盛りだくさんですよ」
等など…ある商業施設では当日のチラシを渡され、特売のご案内をしろと要請されたこともあります。
会場近くを通りかかった人々を呼び込み、並んでいる人に退屈させず、料金はいくら、立ち止まらないでなどと伝えるべきことを伝え進行していくわけです。
6)撤収
MCだけ派遣されてきたような場合はさっさと着替え、関係者に挨拶して引き上げてくればいいのですが、皆で車で来たような時には備品の片付け等も手伝います。
着替えですが、場所がない現場も結構あるんですね、控室は男性のアクターさんたちと共有だったりして。
なのでトイレで着替えたり、物置の陰で着替えたり。
ということでビニール敷物&ビニール袋を衣装袋のなかに入れておくと結構重宝します。
7)移動〜解散
別にこれはMCの仕事じゃないのですが…車での移動の場合、帰りはみな眠くなりうとうとしています。
ドライバーが居眠りしないよう必死で話し相手をしたり、横道から幹線に入るときなど
「すみません、割り込みさせてください」と笑顔をふりまいたりという役割はMCに割り当てられる感じです。
解散のご挨拶は爽やかに。
お疲れさまでした。
ざっとこんな感じです。
- 関連記事
- 4コママンガ えきすとら以蔵
- キャラクターショーMCのお仕事(2)
- キャラクターショーにおけるMCのお仕事(1)
お疲れ様です〜。
一気に読み終えたらば自分まで一仕事終えたような気分になりました(^O^)/
2007.10.15 18:13 URL | fog #P8wp.wzU [ 編集 ]
fogさんどうもです
こんな長文を一気に!ありがとうございます。
拘束時間は長いんですが、実働は短いですよまじで。
2007.10.15 21:04 URL | maki #mxyayG2g [ 編集 ]
ふむふむ
先日見たショーではイベントの内容(水、ダムなど)を織り込んだストーリーだったので、
この日のために脚本書いたんだろうなぁなんて思いながら見ていました。
MCのお姉さんは写真撮影が終わるまで確かにずーっと喋りっぱなしでした。
本当にアクターさんはじめチームの方たちには感謝の気持ちでいっぱいになります。
これからも子どもと楽しんでヒーローを応援したいと思いました。
2007.10.16 15:44 URL | 子猫ちゃん #4C5bA0qg [ 編集 ]
子猫ちゃんいらっしゃいませ!
やってるほうは、そうやって楽しんで観ていただけるのが一番うれしいんです。
現場にいるとお客様の気持ちってその場で直に伝わってきますから。
これからもお近くであれば、ぜひ足を運んでくださいませ。
2007.10.17 11:55 URL | maki #mxyayG2g [ 編集 ]
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2008.10.01 09:01 | # [ 編集 ]
内緒さまいらっしゃいませ
もうMCの仕事から離れてかなり経ちますし、無責任なことはできません…ごめんなさい。
お住まいの地域によっても違うと思いますし、内緒さまの経歴や意向でも、やり方は変わると思うんです。また残念ですが中には変な会社もあるそうですので、ご自分で確かめるというのが一番だと思います。
・川下から探す(求人情報誌等をチェックする)
・川上から探す(地元広告代理店や大型商業施設がどこにショーの仕事を発注しているか調べる)
・向こうから紹介が来るポジションにいる(アナウンススクールに入る等)
主な方法は上記の通りですが、わたしの元同僚は、ショーを観に行って、現場のスタッフに直接
「司会をしたい」と申し込んだと言ってました。何にしろ体育会系の仕事なので最後は熱意ということになるのでしょうか。ご健闘をお祈りします!
2008.10.01 17:04 URL | maki #mxyayG2g [ 編集 ]
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といってもわたしも1ヶ月も出遅れていたわけですがw
台風後、沖縄はひどかっただろうな→前田さん沖縄だったな→ブロmaki「琉神マブヤー THE MOVIE 七つのマブイ」が来る?ごぶさたしてます。久々のコメントですね(^^;)
いや〜、さすがmakiさん、どこでこんな情報を?
ありがとうございます。
マブヤー、結構好きなんですよ〜!
うちにマなゆ外国向けサムライCMままれりんさん、いらっしゃいませ!こんにちは!拓さんのファンなんですね。
坂口拓さんといえばマジ当ての早い拳、と思ってて剣殺陣のイメージがなかったのですが、すごく雰囲気出ていますよね。maki外国向けサムライCM坂口拓!こんにちは。
このMIZUNOの
良いですよね〜っ!!
最近、
坂口拓中毒です。
高岩さんも忘れちゃいけませんねままれりんコカ・コーラのCM 「Super Heroes編」が熱いせーけさん、いらっしゃいませ!> 俺もこんな仕事に関われたらなぁ
広告に関心がおありですか?
この手の人を勇気づける、人の行動を変えさせるメッセージ広告というのはなかなか難しいのだろうとmaki