生体腎移植を巡る臓器売買事件で逮捕された会社役員、江口祐子容疑者(47)が、開業医の堀内利信容疑者(55)とドナー(臓器提供者)の石川竜哉容疑者(21)に対し、宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)側から移植に至る経緯を聞かれた際の対応方法を指南していたことが捜査関係者への取材で分かった。堀内、石川両容疑者の偽装養子縁組の発覚を防ぐ目的だったとみられる。警視庁組織犯罪対策4課は仲介役の指定暴力団住吉会系組長、坂巻松男容疑者(70)が江口容疑者に指示を出していたとみて追及している。
堀内容疑者は昨年6月、生体腎移植を受けるため、石川容疑者との養子縁組を偽装したとされる。手術の可否を判断する同病院の倫理委員会には「実の親子のような関係で、お互いに手術を望んでいる」などと虚偽の説明をし、弁護士が作成した同様の内容の報告書を提出。石川容疑者も「わが子のように心配して面倒をみてもらっている」などと記した直筆文書を出し、倫理委は移植を承認した。
捜査関係者によると、江口容疑者は倫理委の聞き取り調査に備え、養子縁組や臓器提供の理由などについての受け答え方法を石川容疑者らに細かく指南し、弁護士の報告書の作成過程にも関わったという。江口容疑者が役員を務める医療コンサルタント会社は坂巻容疑者の強い影響下にあったといい、組対4課は坂巻容疑者がこうした経緯を主導したとみている。
組対4課は14日、「宇和島ルート」のドナー紹介の見返りに坂巻容疑者らに800万円を渡したとして、堀内容疑者と妻則子容疑者(48)を臓器移植法違反容疑(売買の禁止)などで再逮捕した。堀内容疑者は「どうしても移植をしたかった」と供述しているという。組対4課は、暴力団側への金の流れを解明するため住吉会本部を家宅捜索する方針。
一方、「板橋ルート」で逮捕されていた堀内夫妻と仲介役の住吉会系組員、滝野和久(50)ら5容疑者について、東京地検は14日、同罪などで起訴した。【川崎桂吾、前谷宏、喜浦遊】
毎日新聞 2011年7月15日 東京朝刊