橋下徹大阪府知事が知事就任前に出演したテレビ番組で、山口県光市母子殺害事件の被告弁護団に対する懲戒請求を視聴者に呼びかけた発言によって「請求が殺到して業務に支障が出た」として、弁護団のメンバーら4人が橋下氏に損害賠償を求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第2小法廷(竹内行夫裁判長)は15日、360万円の支払いを命じた2審判決(09年7月)を破棄し、弁護団側の請求を棄却した。
最高裁が今年6月に弁論を開いたため、2審判決の見直しが予想されていたが、橋下氏側の逆転勝訴が確定した。
橋下氏は07年5月、出演した民放番組で、被告少年(事件当時)の殺害動機を「失った母への恋しさからくる母胎回帰」と位置づけた弁護団を批判。「(弁護団を)許せないと思うなら、一斉に弁護士会に懲戒請求をかけてもらいたい」などと発言した結果、08年1月までに4人に約2500件の懲戒請求が寄せられた。
1審の広島地裁判決(08年10月)は「(橋下氏の)発言の一部は名誉毀損(きそん)に当たり、懲戒請求の呼びかけも不法行為になる」と判断して800万円の賠償を命じたが、広島高裁は弁護団批判の部分について「意見や論評の域を出ていない」と名誉毀損の成立を否定し、懲戒請求の呼びかけに限定して賠償を命じていた。
【伊藤一郎】
毎日新聞 2011年7月15日 16時25分(最終更新 7月15日 17時09分)