2011年06月28日

隠蔽された市議の当て逃げ

 道路

 いわき市議会が揺れている。松本正美市議(57)が2月に当て逃げ事故を起こしていたことがわかり、対応を迫られているのだ。それにしても、この事故を巡る周囲の動きは、実に不可解だ。ここにも「ムラ社会」のしがらみによる隠蔽体質が見え隠れしている。

 事実関係をまとめてみる。
 事故は2月9日午後10時ごろ、いわき市久之浜町の波立海岸近くのトンネル内で起こった。松本市議が運転していた車がセンターラインをはみ出し、平方面に向かっていた東京電力関連会社社員と接触した。その際、対抗してきた車のサイドミラーがもぎれ、松本市議のミラーも破損した。松本市議はそのまま停まらずに走り去り、松本市議の後ろを走っていた車を運転していた男性が追走し、ナンバーを控えて警察に通報した。

 松本市議が事実関係を認めたため、数日後に3人が立ち会って現場検証が行われたが、警察の動きが重く、被害者の男性は、市内の報道機関に事故を知らせて回った。しかしどこの社も取り合わず、「市議の当て逃げ事故」は闇から闇へと葬られそうになった。ところが今月22日、ゲリラメディアともいえる「いわき経済報・あおいぽすと」が事故内容を匿名で報じ、福島民報が追従。さらに読売、毎日など数紙があとを追った。
 いわき市議会は松本市議から事情を聞き、倫理委員会を開いて対応を協議しているが、難しい問題が横たわっている。松本市議は事故を起こした日、地域医療対策特別委員会に所属している3人の同僚市議と懇親会を開いていたのだ。ここで、松本市議の酒酔い運転か酒気帯び運転の疑惑も浮上し、同席市議の制止義務問題まで波及しそうな勢いになった。懇親会は午後7時半ころに終了したという。
 その後の松本市議の行動も、問題になりそうだ。これがはっきりすると、逃げた理由も明らかになっていくだろう。 

 疑問はいくつもある。まずマスコミはなぜ、早い時点で被害者から情報を得たにもかかわらず「市議の当て逃げ」というニュースバリューのある情報を記事にしなかったのか。さらに、この事故を発表しなかった警察の広報姿勢は、明らかに不平等で、「権力に弱い」という弱点を露呈していないか…。社会の理不尽さが次々と浮かび上がってくる。
 メディアは「刑が確定してから」と様子を見ていたというが、これは談合と同じではないか。横並び意識が強く、リスクを負おうとしない「記者クラブムラ」の弊害だろう。市議の当て逃げ、しかも酒気帯びまでつながりそうなものに対して自ら調べることもせず、放置した。何のコネも力もない市民の事故の記事が載っていることを考えると、溜息が出る。記者の使命感、正義感はどこに行ってしまったのか。

 いわき市議の定数は40人。このうち、県議選(大震災のために延期中)に転出するために辞職した3人、酒気帯び運転で辞職した1人、そして津波で行方不明になっている1人と、いま5人減の状態だ。さらに松本市議が辞めることになると、補選の可能性も出てくる。

 懇親会に出席した、といわれている議員の携帯電話に電話したら「ただいま、電話に出ることができません」のコールが鳴った。市議会の今後の動向をチェックしながら、引き続き調べていきたい。

この記事へのトラックバックURL

http://trackback.blogsys.jp/livedoor/aryu1225/51947163
この記事へのコメント
すみません。もう少し調べてから、書いていただけますか?
マスコミの動きも含め。
当方が存じ上げている、事案が明るみになるまでの動き、マスコミの動き、警察の動き、ちょっと隔たりがありますね。
批判するのは結構ですが、どうもやり口が気になります。
ご自分だけが特別、なんですか?
Posted by 通りすがりのランチュウ at 2011年07月09日 23:29
> ちょっと隔たりがありますね。
その隔たりがどういったものか知りたいですね。
ここに書いてくださいな。
Posted by 通行人 at 2011年07月11日 11:43
松本市議の罪状は、ひき逃げと事故申告義務違反になりました。真実を知ることが目的ですから、確かに「隔たり」について知りたいですね。その「隔たり」を明らかにしてもらい、再度取材して間違っていたら、取材経過も含めて、さらに詳しい事実を書きたいと思います。
松本市議は結局、区検察庁の判断が出たあとに辞任し、来年の選挙に再び立候補するようです。
Posted by 安竜昌弘 at 2011年07月11日 14:07