高木義明文部科学相は15日の閣議後会見で、高速増殖原型炉「もんじゅ」について、「原子力政策、エネルギー政策の見直しの中で、一つの課題として方向性を出す。結論はおのずと出てくる」と述べ、開発中止も含めて検討していく方針を明らかにした。菅直人首相が「脱原発依存」を打ち出したことを踏まえた発言で、原発の使用済み核燃料の再利用を図る核燃料サイクルが見直される可能性も出てきた。
高速増殖炉は、使用済み核燃料に含まれるプルトニウムとウランを混ぜたMOX燃料を使い、発電しながら消費した量以上の核燃料を生成できる原子炉。ウラン資源を効率的に利用できる。
しかし、実用化は2050年ごろと見込まれており、菅首相が13日の記者会見で「段階的に原発依存度を下げ、将来は原発がなくてもやっていける社会を実現していく」と表明したことで、高速増殖炉の開発継続の是非が政府内で議論になることは確実だ。
高木文科相は「(東京電力福島第1原発事故は)相当に重大な事故なので、改めて議論することは当然。政府のエネルギー環境会議での議論を踏まえ、もんじゅに対しても対応していかなければならない」と語った。
もんじゅは性能試験中の95年12月にナトリウム漏れ事故を起こし、長期間運転が止まった。昨年5月に性能試験を再開したが、同8月に燃料交換用機器の一部が炉内に落下するトラブルがあった。今年度予算には運転費や耐震工事費など216億円が計上。これまでの総事業費は1兆円近くに達する。【西川拓】
毎日新聞 2011年7月15日 11時55分(最終更新 7月15日 12時32分)