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【北陸発】

工事代 商品券で相殺 J・T・P介護施設

2011年6月30日

工事代金の代わりに送られてきた大量の商品券=金沢市内で

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下請けへ一方的送付 独禁法違反疑い

 金沢市の介護施設運営会社「ジェー・ティ・ピー」(J・T・P)の関連会社で、介護施設の建設を担当した建築会社が下請け工事業者に対し、J社が運営する飲食店の食事券や商品引換券の商品券を一方的に送り、工事代金と相殺していたことが関係者への取材で分かった。識者は独禁法違反(優越的地位の乱用)の疑いがあると指摘している。

 J社と関連会社の「清泉の宿」(金沢市)をめぐっては、介護報酬を不正に受けていた疑いがあり、石川県が三月に立ち入り調査を実施。介護保険法違反がなかったか調べている。

 複数の下請け業者によると、二〇〇八〜一〇年ごろにかけて、J社の建築部門にあたる「シンクタンク」(J社へ合併)が定期的に数万〜数十万円分の食事券などを「工事代金を相殺致しました」と記載した領収書とともに郵送。これらの商品券はJ社が運営していた飲食店やカラオケなどで使用できるとされていた。

 だが商品券は、有効期限が短く、店舗が閉鎖していたケースがあるなど金券としての機能を十分に果たしていなかったという。シンク社は商品券以外にも、広告協賛金などの支払いを業者に求め、工事代金から差し引いていた。

 独禁法に詳しい甲南大法科大学院の根岸哲教授(経済法)は「商品券は、期間や用途が限定的で工事の対価とは認められない」と指摘。その上で「これまでにあまり聞いたことがないケース。事実ならば(J社は)工事代金の支払いをせず、遅延させている状態と言える。下請け業者が今後の取引を恐れて反論できないでいるのは、優越的地位の乱用に当たる可能性がある」との見解を示した。

 本紙の取材に対し、J社は「対応は弁護士に任せている。取材には応じられない」とコメントしている。

「受注1600万円 現金は350万円」 

業者ため息

短い期限 券の使い勝手悪く

 食事券や商品引換券の大量の束を手に、下請け工事業者の男性が大きなため息をついた。券はすべて有効期限が切れ、使用できない。「月末はいつも憂うつになった。発注元(シンクタンク)から支払いがないから、うちは材料費を支払えない。信用はがた落ちだ」

 介護施設の建設の際、この男性はシンク社から何度も工事を受注。二〇〇八年冬ごろから昨年秋ごろまでほとんど毎月、商品券が送られてきた。

 「工事代金を相殺され、千六百万円で引き受けた工事で、三百五十万円ほどしか代金を受け取ることができないこともあった」と漏らす。

 「もっと(商品券分を)少なくしてほしい」と何度もJ社とシンク社に要請したが、送られる商品券の額が減ることはなかった。「文句を言うと残った支払いがどうなるか…」。それ以上、抗議することができなかった。

 石川県内の別の下請け業者は「有効期限も数カ月ほどと使い勝手が悪かった。期限が切れる前にと一時間以上かけて金沢に行ったのに既に店がつぶれていたことがあった」と打ち明ける。

 シンク社の元従業員は「工事以外にも広告費などさまざまな支払いを商品券で相殺していた」と説明。元従業員によると、商品券を配った企業の中には地元マスコミ関連会社もあったという。

 ◇優越的地位の乱用◇ 取引上立場の弱い業者に不当な値引きなどを強いること。大規模小売業者が、納入業者との取引で協賛金や返品、従業員の派遣などを不当に求める行為も該当する。不公正な取引方法の一種で、独禁法で禁止される。2010年1月施行の改正独禁法で、課徴金の対象となるよう規制が強化された。

 

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