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居酒屋「くいしんぼう」(熊本市)2011年05月25日
枝豆、冷ややっこ、きんぴら、お好み焼き、ラーメン――。次々と目の前に置かれるのは料理を注文する前に出てくる付き出し、お通しだ。熊本市小峯2丁目の居酒屋「くいしんぼう」では13年前からこのスタイル。もちろん料理のメニューもあるが、ほとんどの客は付き出しだけで満足する。 あまりの皿の量に初めての客は言葉を失って顔を見合わせるが、最後は笑いに包まれる。これが店主の冨永正宗さん(58)にはたまらない。その日の気分で変わるという付き出しの数は10皿以上で、400円。もうけはほとんどない。だが、「お客さんの驚く顔が利益」と冨永さんはにこやかだ。 この形態になるまでは普通の居酒屋だった。ある時、急に翌日店を休まなければいけなくなり、このままでは使う予定だった食材が余ってしまうと困惑。捨てるくらいなら、とたくさんの種類の料理を山盛りに載せた大皿を出した。客の驚く顔を見て「こりゃあ、おもしろい」とやみつきに。やがて皿を分けて続けざまに持って行くようになり、「これなら驚く顔が10回見られる」。 客を楽しませたい、喜ばせたいという思いは、20歳で初めてバーを開いた時から変わらない。バーテンダーとしてオリジナルカクテル作りなどにこだわり、「くいしんぼう」でも「まいったなジュース」「何かわからないジュース」など興味をそそられる名前のメニューが並ぶ。 「驚きはたくさんのドラマを生んできた」と冨永さん。別々に来た客が、驚きの体験を共有して意気投合することもある。やがてカップルで訪れ、結婚し、子どもができたという客も少なくない。 「驚く時の人間のふぬけで無防備な顔をもっと見たい。死ぬまで勉強し、追求したい」。冨永さんは次なるサプライズのネタを真顔で考えている。(山本恭介)
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