生体腎移植を巡る臓器売買事件で逮捕された指定暴力団住吉会系組長、坂巻松男容疑者(70)らが、ドナー(臓器提供者)の無職、石川竜哉容疑者(21)に対し「ドナーになれば借金を帳消しにした上、報酬として100万円を支払う」と約束していたことが捜査関係者への取材で分かった。しかし、実際には報酬はほとんど支払われなかったという。石川容疑者の前にドナー候補になった坂上文彦容疑者(48)も、報酬を示されてドナーになることを承諾した経緯があり、暴力団がドナーあっせんをビジネス化する危険性が改めて浮かんだ。
警視庁組織犯罪対策4課の調べなどでは、旧知の開業医、堀内利信容疑者(55)からドナー探しを頼まれた坂巻容疑者は、知人の江口祐子容疑者(47)と交友関係があった矢野勇介容疑者(30)を通じて石川容疑者を紹介された。石川容疑者はパチンコ店に勤めていた08年夏ごろ、客だった矢野容疑者と知り合い、生活費など数十万円を借りていたといい、坂巻容疑者らは借金の帳消しと100万円の報酬を提示して誘ったとされる。
これに応じた石川容疑者は堀内容疑者と養子縁組を結び、昨年7月に宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)で移植手術が行われた。坂巻容疑者らはドナー仲介の謝礼として堀内容疑者から約800万円を受け取ったとされるが、石川容疑者に報酬はほとんど支払われなかったとみられる。
堀内容疑者は当初、別の住吉会系組員、滝野和久容疑者(50)から紹介された坂上容疑者をドナー候補として板橋中央総合病院(東京都板橋区)で移植を受ける計画だった。しかし、滝野容疑者が追加報酬を要求したため金銭トラブルに発展。昨年6月の手術直前に計画は頓挫した。【川崎桂吾、前谷宏】
毎日新聞 2011年7月14日 15時00分