mimi_channの日記

2010-06-03 梅沢和木×tomadトークイベントテキスト

トークイベント「PUBLIC/IMAGE.SESSION Vol.04 :梅沢和木×Tomad」

興味深いトークイベントだった。新しい流れを作った2人であるし、面白い文化や表現であると改めて思った。音楽でもアートでも、彼ら以降明らかに何かが変わるのではないか。既存の文脈に捉われない2人の活動を紐解くにおいて、有効な話だったと感じた。

ただ、トークセッション後に客席から聞かれた質問、「今後どうするの?この2人の面白い活動をどう金にし、どう食っていくの?35歳になった時自分、どうなっていると思う?」これがすごく引っかかった。この質問に対し2人は具体的なビジョンを提示出来ていなかったように見えた。

梅「金の話かー…。まぁ僕は単体で作品を作って売れたら勿論金になるわけですけど、カオスラウンジって、すごい…特に破滅ラウンジなんかどっから買えばいいんだよ、みたいな。人を買うのか?とか笑。確かになんでこんなに金取ってないんだろうみたいな感じですよね。」

ト「はぁ…。僕のレーベルの場合はもっと微妙っていうか、今の段階ではほとんどお金には出来ていなくて、ほとんど赤字っていうか自分が楽しいからやっている遊び的な部分もあるんですけど。でもずっとフリーでやっていていいのか、とかあるところではちょっとお金を取ったほうが面白くなる部分もあるんじゃないかって。だから、お金を儲ける重視ではなくて、お金っていうのを絡めたら面白くなるところもあるし、そういう部分を大きくしていけたらそれはそれで楽しいのかなと思うんですけど。」


――質問。例えば、梅沢さんやtomadさんが自分たちが35歳になった時想像、というか、イメージはどんな感じなの?

ト「35歳問題…。僕の場合全く分からないですね。もしかしたら死んでるのかもしれない笑。なんかまぁただ、全然将来設計的なのは見えないんですけど、だから分からないですよね…。とりあえず、今は面白いと思ったことをずっとやっているだけ、みたいな。」梅「就活とかするんすか?」

ト「就活も多分しなきゃいけないんですよ。」

梅「リクナビとかもブクマしてんの?」

ト「リクナビも、まぁ登録しろみたいなの大学に言われて…」

梅「まぁ僕はリクナビのURL一度も踏まないで卒業したんですけど」

ト「まじすか笑。それすごいですね。まぁ、マルチネレコードとかを法人化して社長になっているとかはほとんど…。今の現状だと難しいですけど、そういうことが出来ていればそれはそれで楽しいと思うんですけど、ただ出来るかどうかっていうのは現状では、どうなんだろうな。まぁやりたいっていう願望はあるんですけど、それがマルチネレコードではないにしても、なんだろうな、レーベルとして音楽をどう届けるのとかを考えたり、そういう役目を担いたいっていうのはあるんですけど。それがまぁ企業として成功しているかっていうのは全く今の段階では分からないですね。」

梅「普通にイベントとか主催するオーガナイザーとかにはならないんですか?」

ト「まぁ、なったところで、それだけでどうにかなるかってのも分からないし。だからまあとりあえずは今面白いことをやって、それでほとんど将来は見えていないです。」

梅「僕は普通に35歳とか、消えてるか、消えてないかですよね。まぁ消えてないように頑張るしかないですよね。普通にアーティストって10年たったら今いる線にほとんどいなくなっているみたいな世界なんで、その自分の作品と自分の考えるイメージをいかに持続しつつ、消えないように頑張るかみたいな感じですね。当然食えてなきゃ意味がないし。そこは、…考えます!」


今面白いと思うことをやる。その行動力は素晴らしく、正しいことだ。その成果によってマルチネや梅ラボの活動は、多くの人に知られ、支持を集めたと思う。けれど、そういったスタンスで活動をしていて、一方では将来性が見えない、金にならないという問題にぶつかる。マルチネやカオスラウンジがそんな理由で消えていくというのなら、それは残念でならない。むしろこれらの課題は当事者より我々が考えなければならないことなのかもしれない、そう思った。日本に起きた新しい文化の流れを止めない為にも、もっと彼らの活動には注目すべきかもしれない。








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以下、2010年5月29日にPUBLIC/IMAGE. 3Dで開催されたtomad×梅ラボトークの様子を(ほぼ全文)文字起こししたものです

現在の音楽界、アート界において最も面白い2人。トーク内容は色々曲がりながら進むが、興味深いので是非。長文すみません。

※ト=tomad、梅=梅沢和木、梅ラボ

※ちなみに!一応ustのログでこのトークイベントの映像が全部見れます!笑(http://www.ustream.tv/recorded/7298516



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まずは簡単に自己紹介をお願いします!

ト「Maltine recordsというネットレーベルを2005年ぐらいから5年間やっておりまして、一応その主宰ということになっています。あと、イベントオーガナイズを年に4本ぐらい、DJを月に1回か2回くらいの割合でやって、普段は文学部哲学科3年生です。」

梅「梅沢和木という本名で、インターネットでは梅ラボという名前でちょくちょく活動させていただいています。2008年頃から美術作品を絵画のような形で発表を続けていまして、最近破滅ラウンジやカオスラウンジで黒瀬恭平さんや藤城嘘くんの企画する展示に、大きな作品を出品する形で協力して、まぁ作品以外でも色々なことで協力していて。…っていう人ということで知ってきていただいた人がいるかもしれません。まぁ美術作家という肩書きで活動させていただいております。」



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梅沢さんがカオスラウンジに参加した経緯とは?

梅「pixivっていうイラストSNSサイトを始めたのは、大学卒業制作をやってるくらいの頃で、それを始めてすぐ藤城嘘君からマイピク申請が来て、なんか一緒に面白いことやりましょうよ、という感じで、活動を続けていって、途中から黒瀬洋平さんという人が出てきて一緒にやっていく中で、いつの間にかこういう大きな、動きになっていったなぁっていうのが率直な感想です。もともと僕は東方とか、オタク的なコンテンツと呼ばれるようなものは普通に好きでして、毎日画像を保存したり、同人誌を買いに行ったり、せっせとコンテンツを消費していたわけですけど。で、それを自分の作品に全く活きていないのはおかしいなと思っているうちに今の作品のようなことをやり始めたんですね。なんていうかネットにある画像を再構成して新たなイメージを作り出すというか、カオスなイメージを絵画なり、空間に落としこめるような形で表現して僕がやっていった結果、かなり自分で言うのもなんだけど、カオスラウンジっていうもののイメージアイコンのようなものを作る人に、なった。みたいな感じですね。」








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カオス、破滅は話題になったが、当事者としての感想は?

梅「率直な感想を言うと、こんなに破滅が面白いものになるとは、っていうのが率直な感想で。まあ自分はあの中でなにをやっていたかというと、本当ずっとビートマニアっていうゲームを会場でしていたくらいで、まあ別に自分の作品も高橋コレクション日比谷で12mくらい展開していた作品の残骸のようなものを再構成した作品を貼り付けたという形で作家としては参加していたんですけど。あとはいっつもやっていた自分が快楽的に消費するゲーム活動を体で示していたと、まあ言葉にしたらなるんですけど、それをずっとやっていただけで、僕以外にもそのように好きなことをやっている人が集まっているっていう展示だったと思うんですけど、なんかそれが…楽しんでいた人以外も見ているとかもこんなに楽しんでくれるなんて、そんなに予想はしていなかった、というのが率直な感想ですね。」



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tomadさんから見た破滅、カオスラウンジとは?

ト「どうーですかね。とりあえず破滅ラウンジについて言うと、僕が参加した部分は黒瀬さんから前の日くらいにサウンドシステムを用意してください、みたいに言われて、で、わざわざ家のスピーカーの安いやつを持っていって、それを適当に配置して、小さいデスクトップ用のスピーカーみたいなのを何台も置いて、それをラインで分岐させるみたいなので、何個も連ねて、周りに配置して、みたいにやったんですけど。そこをやって、音楽がそこにどれぐらいやっていいのかとかも全然分からなかったんで、試しにDJとかをしてみて、それでゴロゴロいつも通り楽しんでいたみたいなのが、こんなにも周りに衝撃を与えるというか。yuisekiさんとかももともと友達だったりして、いつもああいうことやってたりしたんで、そういうのがここまで衝撃を与えるっていうのには、驚きました。」








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インターネットから出てくる表現として、梅沢さんは何が面白いものとして活動をしているの?

梅「インターネットで明らかに面白いものが起きてるっていうのは、インターネットやっている人間としては明らかに体感できてる訳ですけど、当然インターネットやらない人はそれを知らないわけで、それを展示やらDJやらクラブやらなんでもいいんですけど、知らない人に伝えるにはどういう形がいいのかっていうことで、僕の作品でやっていたつもりなんですけど。まあ当然それには限界があって、例えば、僕はやった作品では、音という概念は全く含まれていない訳ですよね。で、今回のその破滅ラウンジという中では、とりあえず、…あ、tomadくん、そういえばなんか近くで…、nanzukaアンダーグラウンド渋谷という会社でやっていたんですけど、その近くにtomadさんが大学に通っていまして、大学終わった後でやってくれるんじゃないかっていう軽い気持ちでやっていって、身の回りのジャンルの人が集結して、でtomadくんだけじゃなくてeseharaさんとかtwitterでDJやっている人たちを集めて、同時に次々にやるってことで、なんか音も同じというか、1から作るってことじゃなくて、同時にやっているっていうことで、自分がいつも画像を再構成してるみたいなことを音で勝手に会場でっていうことは普通に、それは自分ではできないことで、面白いなと思いました。その雰囲気っていうのはマルチネとかDENPAとかそのへんのっていうか、インターネットの面白いことがリアルでそのままで、ちょっと違う形で表現できたのではないかと、思います。」



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アートと音楽で異なるが二人の活動は共通しているように見える。tomadさんはどう考える?

ト「共通…。まあでもかなりかけ離れていますけど、作家だし、レーベルオーナーっていうよくわかんない感じなんですけど笑。でも、とりあえずインターネットが好きで、結構インターネットにいて、長い時間tumblrとかtwitterとかをやってるっていう部分では共通していると思いますね。」

梅「tomadくんは一応作家というスタンスではない?アーティストでもなんでもいいんですけど。」

ト「アーティスト…ではないですね。」

梅「アーティストではなく、自分が素晴らしいと思った人たちをネットで集めて配信する立場、というスタンス?」

ト「そう、ですね。」

梅「あの、話が飛ぶんだか分からないんですけど。テクノウチさんっていうDJがいまして、その方が「読む音楽」っていう書いた本の最後のほうにtomadくんが文章を寄せていまして、それは3年前くらい、2007年に出たと思うんですけど、もともと僕はテクノウチさんの音楽が好きで、初音ミクとかもテクノウチさんのHPでディグって最初に知ったみたいな感じなんですけど、その中でtomadっていう人が文章書いていて最初に知ったんだけど、そこで、18歳なのにめちゃくちゃ頭良い文章書いてるなっていう印象があった。で、そこでなんかすっごい単純に要約すると、東浩紀の「動物化するポストモダン」っていう本なんかも僕読んでいまして、その中で、キャラとかの諸要素の効率的な速さで消費できる能力をテクノウチは持っていて、でもDJとかクラブに行っている人たちはアーメンブレイクとかガバキックとかの諸要素とかキャラのようなものをすごく効率的に摂取する能力があって。でその二つが合わさったDENPAっていうのは凄いじゃないかっていうのを書いていた。で、さらにユリイカっていう雑誌の初音ミクの特集のときに、テクノウチさんなどが参加している座談会のなかで、テクノウチさんが東浩紀さんにちょっと論破されかかるという面白いところがあったんですけど。そこで言われていることは、DENPAとか東方とか面白いって言っているんですけどそこで本当に新しい音楽が生み出されるんですか?っていうのみたいな事を東さんはテクノウチさんに言われていたんですよね。で、そこは結局、いや出ますよみたいなことは言ってて、でも結局それが具体的になんなのか分からなかったんだけど。で、破滅ラウンジというのはなかなかそれに近いような解答を出来たのではないかと思うんですよね。まぁ言ってしまえば破滅ラウンジってアート側からの解答なわけじゃないですか、そうじゃない側、tomad君からの解答は。」

ト「破滅ラウンジで面白いと思ったのは、誰か書いていたんですけど、DJはクラブイベントだったら誰か分かるじゃないですか、誰かプレイヤーやっている人がいて、その周りが盛り上がるみたいな。そういうのはほとんどわからない状態で、みんなパソコン向かって、DJもパソコン向かっているから誰がDJかわからない状態で、でもタワーのとこから音楽は聞こえていて、盛り上がるみたいな、そういう状況は初めてですね。そこは面白いと思って。あとは、僕は最初ずっとテクノとかをかけていたんですよ、で4つ打ちを普通にかけてて、でもそれで途中eseharaさんっていう別のDJがきて変わったんですよ、それでブレイクコアとかもっと激しくコラージュされたような、あとはチップチューンとかそういうのに変わった時の方が僕のDJよりもその場所にはまっていたんだよね。だからそういうのとカオスラウンジの相性がいいのかもしれない。」

梅「でも、eseharaさん面白かった。DJじゃないっぽいDJをしていて、素人から見ても分かるくらいで、でtomadくんとかjunkMAさんとか割とDJっぽいDJをしていて、なんかそれが一緒に順番とかなく、その場でじゃあ俺ちょっと用があるからあとtomadよろしくみたいなので流れていたのって面白かったな、と。」

ト「そうですね。で、やっぱあのスピーカーがボロボロっていうか安っぽいやつなんですけど、それが微妙にいい感じに反響して初日とかは結構それで、なんか下の低音のグルーヴ感はないけど上物だけがばーっと広がるみたいな。で、チップチューンとかだとあれ、かなりローファイな音に作られているんで、逆に音が太くなったような感じがして、魅力的だったと思う。Eseharaさんとかも言っていたんですけど、ここまで、イキイキしてDJをやれたことはない、みたいな。ブレイクコアとかそういうのやる場所って普通のお酒飲んで踊りに来るみたいな人とはかけ離れているんで…」

梅「あ、そうなの?なんかブレイクコアとかかかるクラブってないんですかね?」

ト「まぁごく稀にあるんですけど笑、なんだろうナードっぽいやつとかネタものを多く使ったみたいなのはほとんどないんですよね。」

梅「すっごい個人的な印象だけどMOGRAとかでは毎日そういうのがかかっている印象が笑。」

ト「いやMOGRAはちょっと微妙に違うんですよね、空気感が笑。」

梅「じゃあ日本のクラブではブレイクコアやネタものがかかるのは破滅ラウンジだけなんですか?」

ト「いや、っていうかなんか破滅ラウンジが一番合ってた。しっくりきた感じがするんですよね。」

梅「でも普通の、ハウスでもテクノでもなんでもいいんですけど、DJやっている中でそういうのがしっくり来る場所ってあるんですか?箱によって。」

ト「…そうですね。僕の場合は箱の全体を見てここに低音が鳴るから、低音効く音楽をやろうとか、そういう感じで見るんですけど。だから箱の印象からして一番ネタもののブレイクコアとかニコニコとかにあがっているような、完全にダンスミュージックとしてはそこまで良くないけどローファイだけど、でも破壊力があるようなやつが一番合ってるような気がしましたね。」

梅「うーん、クラブとかって寝っ転がったりとか出来ないもんね。寝転がって絵描いたり、ネットやったり出来ないじゃないですか。」

ト「そうですね普通笑。」

梅「それクラブとかじゃなくて、僕駅とかでも良くやるんですよ。普通に絵を描いていたら、あ、変な人いるな、とか自己主張の強いやついるなとか見られるじゃん。でもそういうふうに見られないで自然な状態でいられる場っていうのがすごい自分的には嬉しかったんですけど。なんかクラブとかがそういう場所になったらいいなとは、個人的に思っています。だから、めっちゃ自分が好きなDJとか、ニコニコとかで毎日のように更新ボタンを押してチェックをしているプロデューサーの人がやっているイベントとか行っても結局その人の番だけ楽しんでその後立ったままとりあえずノるみたいな感じでわりと退屈だったりするんだよね。そういう時にネットとか出来たらいいな、みたいに寝転がったり出来たらいいなとか思うんだけど笑。なんか普通のクラブってそういうの出来たりしないもんなんですか?」

ト「いや、まぁないですね笑。音楽を聴くために、それに集中したほうがいいんじゃねえの的な空気が…。」

梅「ニコニコ動画とかの音楽の楽しみ方って明らかに、他のウィンドウ開きながらとか作業用であったり、要するに本筋じゃないのが正当な楽しみ方だったりするじゃないですか。破滅ラウンジとかはまさにそういう形だったと思うんですけど。要するにまぁ個人的にはクラブ関係者側からもそういうのがあって嬉しかったんですけど。」

ト「マルチネも結構yuisekiさんとか来てたりして、パソコンやりながら踊ったりとか、そういうのかなり僕的に格好良いなと思って。」

梅「あぁ俺もそれすごい思う。めっちゃ格好良いよyuisekiさん。そう、なんか…まぁ例えばtomadくんが企画するイベントでなんかそういうのあったら。破滅を超えるような。」

ト「…まぁ笑、次のイベントでそういう企画が…」

梅「え、マジすか?笑」

ト「MOGRAでわくわく大運動会っていうのが6月20日にあるんですけど…笑」

梅「わくわく大運動会笑。おぉ、中盤で告知を…!」

ト「破滅クルーのVJがいて、別のVJもいてネタ動画とかを流しつつ、DJは普通にやるんですけど、嘘君も参加して、ライブペインティングをやりつつーの、踊りーの。で、パソコンがあるとなんと1000円割引。で、iPadがあるとなんと…2000円割引!笑。」

梅「なんでそんなiPad特別扱いに笑。」

ト「いや、…あれ格好良いじゃないですか!笑。みんなでiPadを持ちながら踊るのが見たい!っていう。あと、快快っていう演劇のグループを呼んで、何かをやらせたり、ねむちゃんとかディアステのアイドルを呼んで歌ったり、みたいな。わいわい楽しいやつを。別にそれアートではないんですけど。」

梅「まあそれ、破滅ラウンジも、黒瀬さんは一応宣言文とかでばーんと言ってますけど、破滅側の人たちは全くアートとか思っていなくて、むしろアート殺すくらいの勢いでやったりするけど、周りの人たちはこれがアートだみたいな感じで言ったりしてすごい不思議な。なんかお得ではある。(だからなんか音楽とアートの新しい展開的なことが期待されているんじゃないでしょうかね。)」

わくわく大運動会特設サイト(http://wack2wack.exblog.jp/



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当事者として既存の文脈のアートに対してどういう意識でやっているの?反発?

梅「どうなんですかね。僕のやっている展示作品とかではわりとかっちり提示したりしますし、普通にそういうレールの上で面白いことやりますよ的な感じだと思うんですけど、この破滅のやつは本当にアート上等で舐め腐っているとこから始まっているのが立ち位置だと思うんですよね。で、普通にこれってあれのパクリじゃんって言える要素がふんだんに取り込まれていて、まあ個人的には全然そっちのほうが面白いと思うんですよね。そういう感じで、着実に色々なアートの文脈をすごい舐めた形でシュミレーションしていて、それはほんと全然こっちが意識して踏み込んでパクりましょうって感じではなく。そうそう…1000円札が入った財布を四日市さんが置き忘れてたら、数日後出てきて、でもそこにはなんか1000円札のコピーが入っていたみたいなのが」

ト「あれはなんなんですか笑。」

梅「いや、あれは普通に、誰かが粋な計らいを、して千円札取りましたけど、コピー入れといたんでっていうのがあったりして。なんかそういうのが普通に面白かったですね。で、それも解決しました(キリッって感じはなく、回収できちゃってたっていうこっち側からはいったりしない、普通にずるい感じでアートみたいなもので遊んでいて、こっちから見ると遊んでいただけで、何気にそんな感じでやっていた人が。面白い人たちだなぁと思って見てましたね。」








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インターネットにおける作家性の無さと破滅ラウンジに関して

梅「あの、良い意味でも悪い意味でもpixivフェスタを例に挙げたくて。pixivフェスタというのは、イラストSNSのpixivが主催しているpixivで絵描いている人に渋谷にあるデザインフェスタギャラリーで絵を展示してもらう企画なんですけど、定期的にやられていまして。デジタルデータを業者に頼んで出力してもらって、で、星をつけるシステムとかタグをつけるシステムとかもまんま紙に再現してばーんと陳列する、だけと言えばだけなんですけど。でも、それはそれで作家たちの交流になっていたりするし、まぁ興業的にどうなのか知らないですけど。で、自分的にはあれはそういうインターネットがどうとかアートがどうとか、リアルとネットとか、そんな意識無いんじゃないのって、天然で普通にイベントとしてやってんじゃないかなと、見ていて。そっかー、それと比べると確かに破滅は意識的というか。…pixivフェスタをdisってるつもりはないんですけど笑。だからそれに比べたら嘘君たちはもっとインターネットの面白いものをリアルにってことでやってると思うんだけど。…マルチネはそういうのこれからどう展開していくんですかね。」

ト「マルチネは…うーんと。でもなんかインターネットが面白いのか、そこにいる人が面白いのか、その面白い人がインターネットを使ってより面白くなっているのかとか。なんであんなプログラムの人とかは破滅的なわけのわからない行動をするのかとか笑。」

梅「プログラムやってる人たちがみんなあんなんじゃないけど笑。…まぁ人間が面白いかインターネットが面白いか的な結論に落ち着くとめちゃくちゃつまんないんでもうちょっとこう…、なんだろうな…。でも、マルチネは今のとこmp3をダウンロードするだけじゃないですか、一応。あとはイベントをやっていたり。まぁ物としてってのはまだだよね。」

ト「今後やる予定ではありますけど…。」

梅「でもなんでそんな物に、現実に落とし込みたがるんだろうね。」

ト「なんで、何で現実に…?えー、いや分からないですけど、それ僕ネットでやったほうが楽ですし、ネットで出したほうがお金もかからないですし、すぐ聞いてくれるし、それは分からないですよね笑。」

梅「例えば、現実にコンテンツがあってその時はskypeとかではなく実際に会って話したりするじゃないですか、打ち合わせとかするときね。それとか結構…変ですよね。なんだろう、なんで会ったりして話しなきゃいけないんだろうとか、…しません?」

ト「あー、でも会って話すのはそこまで嫌いじゃないというか、」

梅「まぁ僕もぜんぜん嫌いじゃないですけど、」

ト「まぁそれもそれであってもいいと思うんですけど、ただそれが組み合わさったときに面白い、インターネットとリアルの部分が微妙に組み合わさった時に面白いものが出来る気がしてるんですよね、」

梅「まぁそうなんだよね。なんか今だと完璧にインターネット側の人とかっていないんだよね。なんつーかもう絶対人と会わないし!ネットで検索し続けるし!みたいな人はいないというか、みんなほど良い感じで所要層をうまく利用しつつ、活躍しているじゃないですか。だからまぁ言われているような、インターネット的なイメージとか、って確定してないものであって、それを本気で提示していく人は結構いないんじゃないかなと。それはmp3 killed〜って言葉を掲げているマルチネレコードでさえ、と思うんだよね。」

ト「なんだろな。インターネットをやってても別にリアルに存在していなきゃ出来ないわけですから、リアルの活動もしつつインターネットもやらなきゃいけないわけで、そこは絶対分離できないというか、なんだろうな。」

梅「でも多分、例えば上のクラスタ、人たちがマルチネとか破滅に求めるのって、そういうインターネット的なイメージっていうか、新しいもの、前とどう違うのっていうのを求めてくると思うんだよね。でも実際は結構そういうイメージみたいなのって存在していなかったりして、普通にこの世代が共有している面白いことを着実に現実に反映されていくことだと思うんだけど。まぁマルチネはどういう形でその大運動会をやるのか。破滅とはもちろん違う形になるわけだし。」

ト「まぁでも思うのは、そんな音楽の場合はあんまりネットとリアルの差ってほとんどないような気もするんですけど、ただ梅ラボさんみたいなそういう平面作品というか、画像の場合はインターネット的な表現っていうか、画面を見て操作しているわけじゃないですか、それによって画面を見てスクロールとかして操作したり、ニコニコとか弾幕の動きとかから発想を得てるんじゃないか、と。」

梅「弾幕…。弾幕の話しましょうか?笑」

ト「笑。で、だから音楽の場合って、それがあんまりインターネット固有の表現っていうのが流通過程ではあるかもしれないけど、その作品として表れるようなものにまだ出てないと思うんですよ。」

梅「うん。僕が東方の弾幕やビートマニアのプレイ中にしか見えない云々っていうのは結構言ってるんですけど、別にそれってインターネット関係ないじゃんっていうのがあるんですね。」

ト「あー、うん、なんか…パソコン的な?」

梅「パソコン的な?笑。パソコン的なって言うとすーごい広いっすね笑。」

ト「うん笑。なんだろうパソコン的なって言うか、画像を収集出来るのはインターネットがあるからだと思うんですよね。」

梅「そうですね。で、まぁ結局東方とかってびっくりするくらい今インターネットとかニコニコ動画で大人気ですけど、それのオリジナルといえるゲームのプレイ体験で、まぁシューティングゲームなんですけど、そこで画面を埋め尽くすくらいの敵の弾を避けつつ、出ている脳汁とか、ビートマニアとかでプレイしながら極限まで追い詰められながら、体も疲れて、その中で体験できるような、あれ勿論映像流れてますけど、そういう中で共有できるイメージとかっていうのが、個人ででしか体験できないものだと僕は思ってるんですけど、ゲームのプレイ体験というのは。まぁエロゲでもアクションゲームでもなんでもいいんですけど、同じプログラムというか、同じ物語が用意されてるんですよね、でもその中でもそれぞれの体験というのは全然別々のものになっていて、それが勿論重要で。で、ビートマニアっていうのを何で僕が再三言うのかっていうと、あれは原曲っていうのがあって、再現するだけなんです、言ってしまえば。それを完璧に再現することだけを目的になっていて、共通の物語なりプログラムがあって、それをそれぞれが体験するっていう、ゲームのシステムに対してものすごく非道的なのだと勝手に思っているんですよ、で、その時に自分だけの体験っていうかイメージを自分の作品の中にできたらいいなと思っていて、でこれは一見すると東方とか音ゲーとかインターネット関係ないんじゃないかって言うんだけど、操作しているものはインターネットにあるイメージだったりっていうのがあって、それを配置していく中で、どういう美的感覚で配置していくのかとかは言われるんだけど、それは東方で受ける感覚だったりとかすごくたくさん食ってきた音楽が合わさって養われた精神力で配置してます、みたいなことを言っていて笑。」



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インターネット的なカルチャー、キャラクターの元ネタを知らない人に関して、絵画として提示していくこととは

梅「僕が作品で使っているようなキャラクター知らない人っていうのは、すごいうらやましいな、と。僕が体験できないイメージを体験しているわけですよ、僕は知らないけど。僕は知っているから知っている人でしか自分の作品は体験できないんだけど、それを全部知らないで体験している人っていうのは、僕は普通に見ていてそれぞれのキャラや諸要素をすごい憂鬱だなって感じで見るのではなく、それを取り除いたイメージだけで見ているわけですよね、なんかそれって普通に羨ましいなと思うんですよね。僕にはできないことなんで。だからそういう体験ができる、一般的な絵画的な体験ですよね、だからそれは…羨ましいとしか言えないですね。Tomadくん観点で、どう?」

ト「いや、なんだろな。単なるコラージュ的なものだけじゃなくて遠くから見ても普通に色が綺麗とかそういう感覚を揺さぶられるようなものがあるっていうのは思いますし、色が綺麗で遠くから見て思って、寄ってみるとあぁなんかこれ見たことあるアイコンがあって楽しい!って、なるほどー!って、そういう感じはありますね。」

梅「それは嬉しいですね。…そうか、そうか。まぁそれ、インターネットだけで完結できるし。現実じゃなくても僕の作品っていうのは展開出来るじゃないかっていうのは言われるけど、僕の絵画っていうのは以前にも言ったことだけど、近くに寄ったりしたら楽しめたりして、ネットよりもいいですよねっていう話をしたんだけど。それってまた音は違うんじゃないですか」

ト「そう、ですね。まぁ近くに寄ったりとかは…。まぁ流れていくものですからね、それをどう体験するのかっていうのもそれぞれ別々になっていくるし、」

梅「まぁもちろん自宅ですごいいいステレオやらヘッドフォンで聞くよりも、パソコンで聴くみたいな。踊ったり。」

ト「だから難しいんですよね、音は全部一応それはCDに入っているのもアナログに入っているのもmp3もデータなんだけれど、ただそれを再生しちゃうともう物みたいになっちゃうから、それによって全然テクスチャーていうか表面の色合いが、感じがスピーカーとかによって変わってくるみたいな」

梅「音に色や表面…?」

ト「なんか表面っていうか、質感?音の質感みたいな感じが、ヘッドフォンで聴くのとか、クラブの真ん中で聴くのとか、全然変わってきてしまうから。」

梅「僕は結構その感覚は分からない。へぇーって感じで、そうなんだ。」

ト「なんか聴く場所で結構、変わってきちゃうような感じはするんですよね、音のイメージが同じ曲だったとしても。スピーカーで出しちゃう時点でどれが本物の音なのかっていうのもわからないし、どれが正式な。まぁ絵画だったらあるデータが、これが本物ですって言えるけど、音の場合はどこで鳴っている音が本当に正しいのかとかは。まぁある程度はそれは出来ますけど、完全には同じものを聞くことは出来ないんじゃないか。」

梅「そうだね。音作っている人ってさ、聞く人以上に当然だけど細かいとこまで気を使って作っているわけじゃないですか。あのimoutoidとかすごく好きなんですけど、imoutoidが音を作るときに、普通の人では考えられないくらい細かい部分を作るために自分でプログラムを、っていう話があったけど。そこまで繊細な部分っていうのは、例えば、imoutoidの作品に否定的って感じる人も、自分のパソコンに落としてパソコンのスピーカーで聞くのは分からないわけじゃないですか。でもそれはそれで正しい的な」

ト「まぁただ若干分かると思うんですけど、色々変わってくるというか、大きい音で聞いたほうがいいのとか、携帯電話で聞いたほうがいいような音、まぁ良いっていうかよりわかりやすい音っていうか、だからその、難しい。絵とかと比べる場合に。」

梅「まぁ無理やり絵と比べるのも違うかなと思うけど。」

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出力するときに聞こえ方が変わる音楽。Tomadさんはデータが理想か。データがピュアか

ト「いや、僕の場合はそうでもないですけど、その変わる部分を楽しむ、まぁDJとかでもそうなんですけど、ただ曲を作るほうとしてはより、自分の頭の中にあるイメージをそのまま伝えたいみたいな部分が絶対あると思うんですよね。うん…。」

梅「…えっ?笑。ごめんもう一回いい?ごめん笑。」

ト「うーん、データがピュア…?ピュアってなんなんすかね。」

梅「音楽に近ぇんだよ!みたいな、そういうこととか?」

ト「あぁ、なるほどなるほど。だから普通のCDとかアナログレコードとかで買っても中身はほとんど同じだと思うんですよね。エンコードの劣化の問題とかはあるかもしれないけど、ほとんど同じに聞こえる。ただmp3のほうが不要な音の周辺に付くイメージが別に音だけが聴けるみたいな。なんだろう、CDだとジャケットがあって、それを見て、入れて、音を聞くみたいなのがあると思うんですけど、そういうのがなく。なんだろなwinnyとかで適当に文字列っていうかまぁ、入れて出てきたファイルとかっていうのは何も分からない、音だけの印象しかないじゃないですか。だからそういう意味でのピュア性はあると思うんですけど。」



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マルチネレコードはそのピュア性と繋がっているのか

ト「よりピュア、生っていうか、単に面倒くさくないので、CD焼かなくていいし、外の、まぁジャケットも一応作ってはもらうんですけど、音楽が来て、それを直にパソコンでDTMした人が作ったのを僕が受け取って、サーバーにおいて、それを配信して各所に送っていくっていうのはすごく効率的だとは僕は思うんです。」

梅「まぁそれってmp3が当たり前の世代におけるピュアだとは思うんですけど、CDとかの複製技術って、もともとの音楽があってそれをより多くの人に届けるための技術だよね、CDとかって焼いて落としてCDとして直接手渡すみたいな包装があると思って、例えばもとの音っていうか、クラシックのコンサートとかって分かりやすいと思うんだけど、生のコンサートの体験とは別に記録した物に加えて、演奏者やら指揮者のコメントやらなんやらジャケットやらも付属してくるっていうことで、生のものとは違う付加価値がついたりする。で、mp3は色々な現実の付属品をなくすことができるので、そういう流通っていうか、よりmp3がクリアかもしれない。」

ト「だから、そういういろいろ面倒な事やらないで、ジャケットイメージと音があります、で、こういうレーベルから出てます、聞けます、みたいな。全然廃盤とかないわけですから。一応サーバーにある以上、永久的に好きな時に落として聞けますみたいな。っていうのは一番ピュアっていうか自然な感じ。それが一番音楽を届けるのにはいいんじゃないかと思ってやっている。」



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マルチネのオリジナル性とは?


梅「あれ結構音楽のアーティストの人たちってCDとかがオリジナルっていう人もいるし、コンサート自体が一番自分の伝えたいあれだって言う人もいるし。…だからマルチネはそのへんは、どこなんですかね。」

ト「おぉ、どこ?えー、だからそれをやって落として、やって、…オリジナル?まぁ落として、再生して各自分のプレイヤーでPCとかで再生したときが一番オリジナルだと思ってますけど。」

梅「うーーーん…。わかんない。だから映像のフィルムも、映画とか単純にフィルムとかフィルムがなくなってきたらデジタルに移行していく中で、デジタルで撮ったんだけどこの上映会で一回しか上映しませんみたいな、そういうの取り入れたりしてもいいのかなと思うんだよね。」

ト「そういう希少性を上げてくみたいな?そうですねそういうのも、クラブイベントとかだと、そこ仲間内でしか回さないで、クラブだけみたいな、そういう歌うプレイみたいなのも結構あるんで。そういう価値の付け方もありとは思うんで。」

梅「イベントを体験するっていうのはそれだけで一過性なわけじゃないですか、mp3出なかった残念だなーって。もともとイベントっていうのは希少性を持っていて、だからmp3を聞けるところを限定するみたいな、そういった一過性みたいな価値はどんどんいいんじゃないかな、イベントと双方で。」

ト「だから普通にパソコンで聞いて落として聞くじゃないですか、それとあとその曲をイベントでDJが使って別の曲と繋げて聞く場合は明らかにマルチネで落として聞いたことがある曲でも雰囲気とかイメージとかがその場に合わせてどんどん変化していくみたいなそういう部分が結構面白いっていうのはあります。」



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tomadくんの本音は!マルチネのコンセプトを聞きたい!

梅「うーん…笑。なんか、結構tomadくんのマルチネのコンセプトを聞き出そうと試していて、でもなかなかこう、はぐらかす、というか。」

ト「え、ははは笑。コンセプト…。何をやりたいかっていうと、やっぱりポップミュージックというか、それは多くの人に聞いて欲しいわけですよ。」

梅「あぁポップミュージックってなんだかんだで格好いいじゃんっていうスタンスの人多いですよね、tofubeatsくんとかも。それを結構聞きたいと思っていて。」

ト「で、ポップミュージックってまぁ色々あると思うんですけどロックとかだったら、1人の女の子を打ち出して、いやアイドルか、アイドルだったら女の子を打ち出して、いろんなタイアップとかをして、いろんなところに経路を作って売り出すみたいな、そういうやり方もあるじゃないですか。でもそうするとビジュアル先行になっちゃう、売り出し方が。」

梅「ビジュアル先行?…歌っている人のかわいさとか?」

ト「そう。そういう音にあんまり注目がいかないみたいなそういう部分での苛立ちみたいなのはあって、それで「読む音楽」で書いたのだと、ガバキックとかスネアとかがキャラクターの構成要素見たいになっているって書いたじゃないですか。だからそれを利用して、音を使ってキャラクターを立ててそれをどんどん広げていきたい。だからサウンドっていうか音の表面を中心にしてイメージを作りたい。他のビジュアルとかにあんまり左右されないで音を中心としてみんなに聞かれるものを作りたいっていうのはあります。」

梅「音を中心にしてっていうのはつまり、AKB48で言うならば歌っている人とかプロモーションとかとは別に」

ト「別に、それを排除して音楽がまず最初に楽器の音があってその変化があって、それを中心に生み出されるイメージをどんどん広げていきたい。」

梅「結構すごい、現実的なピュアな音楽の」

ト「まぁそうですね。」

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Tomadくんからしてマルチネレコードの作品たる基準は。どういうアーティストを選ぶの?

ト「自分と話が合いそうっていうか、インターネットをよくやっていそうな人を中心に、デモとか来てもブログとかで調べてインターネットを結構やってんなぁ、みたいな笑。あぁなるほどなるほど、みたいな。」

梅「ブログの更新率が高いとか笑?」

ト「そうですね笑。で、音も面白いなみたいなのも天秤にかけつつ。」

梅「スピードキングラジオでもなんか同じようなこと言っていたよね。演歌をやっている人でもインターネット好きだったら全然いいです、みたいな。」

ト「そうですね。」



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マルチネの音楽性に関してはインターネットは関係ない?

ト「音楽性はあんまり幅広く聞いてもらえそうなやつというか、自分の耳で選んで、やってる。基準はまあ曖昧なんですけど。デモmp3とかを聞いていいなーとか思って、且つブログとかも楽しそうにやってんなーって人を。」

梅「ブログ超重要だね笑」

ト「あの、重要なんですよ笑。デモが来た段階ではその人がどこまでいけるかなとか、どこまでやる気があるか、今後多くの人に聞かれるかとかは音だけだと、まぁ発展途上なんで分からない部分もあるので。やっぱブログで結構面白いことを書いていたりする人とかはやっぱ音も探究心があるっていうか笑、徐々に面白いように行く傾向があるんですよね笑。」

梅「マルチネレコードで音を発表したい人はめっちゃブログを更新しなきゃいけない、みたいな」

ト「いや別に笑。出したい人は更新したほうがいいかもしれない笑。」



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音だけ、絵だけでは上手い人には適わない!


梅「なんか面白いな、って思ったのは、結構音楽の感じでは音楽以外の所様相を切り離して音楽のピュアなっていうのを求めつつも、選ぶ基準はインターネットとかを見て音楽以外のとこの面白いところを見ている、みたいな。そのアンビバレントな。」

ト「だから完全に音だけでピュアにめっちゃいいのを作ろうって人はそれなりにいるわけですよ。で、そこには敵わないんで、それもありつつのインターネットで面白い人がそういうのを作っていたらやっぱより皆に聞いてもらえる可能性はあがるじゃないですか。」

梅「なんかすごい今シンパシーを感じた…!Pixivとかでいろんなめちゃくちゃうまい高校生とかには敵わないなみたいな笑。技術的にめちゃくちゃうまい人とかは本当に以上にいるんですよ。結局、ポストポッパーズでも、破滅ラウンジでもカオスラウンジでもそれが試行している美意識とはまた違っていて。」

ト「で、まぁインターネット的ってなにかわからないけど、よくやっている人はそれ以外の人よりはインターネット的だと思うんですけど笑、だからその部分だけを信じてしかもネットレーベルだしそれでいいか、みたいな。」



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話題変えてみよう。初めて買ったCDとか…。

梅「あのー、初めて買ったCDの話とかする?」

ト「あ、はい笑。僕はモー娘。ですけど。」

梅「あぁそうか、この前もなんか話したなぁ。Tomadくんはモー娘。の…なに?」

ト「なんですかね、…「ハッピーサマーウェディング」とかですかね。そこらへんの中後期の。」

梅「僕は川本真琴の「川本真琴」っていうアルバムを初めて買いました。…モー娘。を初めてASAYANで聞いたときにLOVEマシーンの時で、ゴマキがちょうど出てきて、俺ゴマキと同じ年だんったんですけど、普通にかわいい女の子が普通にJ-POPで活躍していて。ばらばらに歌っていたのね、LOVEマシーン発表の時、ASAYANのなかで、で、なんか…ジェイソン?ジョンソンか。当時のモー娘。の色々な人が個別に録っていた。で、ふっふーとかしか言ってないのが普通に全然音楽と関係ないことをそれぞれやっているように見えたのね、なんだこれふざけているのかって。なんていうのかな、で、そういうの撮った映像とかが、じゃあLOVEマシーン発表です、っていう時に、全部合わさったときに再生された時、MAD映像みたいな感じで、録っている時の映像が大小さまざまに流れていて、非常に感動したんですよね。あ、LOVEマシーンかっけー!みたいな。」

ト「でも結構MAD的な部分はありますよね、声ネタとか作為的に入れるとか、掛け声をイェイとか。」

梅「っていうか俺DTMとか、人の声とかをDTMで操作するのとか知ったの、もしかしたらそれかもしれない。」




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生音がそんなに好きじゃない…!オペラにこなたの声とか…笑


ト「あぁ。やっぱり一回コンピューターを通したサウンドにロマンを感じるところはあるんですよね。普通ではありえないような刻み方とか、絶対これはコンピューターを使っているなっていうの分かるじゃないですか。コンピューターを使ってるってそれ分かるんですけど。まぁ単に、生音がそんなに好きじゃないっていうか。」

梅「あぁ!それめっちゃわかるわ…!そう、なんか人が普通に歌っている事って結構苦手なんですよね。なんか、何を例に出しても何もかも敵に回してしまいそうだけど、なんだろな。オペラ。オペラとかすごいものだとは思うんだけど、なんでもっと…こなたの声とか入ってこないかな、とか。なんつーんだろ。そこの美しさとか、音楽の素晴らしさって分からなくて。うーん。それが刻まれて音ネタになって初めて認識できるんだよね。だからやっぱりビートマニアが好きなんですよ。人の声とか押して出るからさ、あれ。」

ト「あぁーなるほど。そこで刻んでるみたいな。」

梅「そうそうそう。R&Bとかハウスとか普通にビートマニアで知ったしさ。でもtomadくんって結構ゲームしないんだよね。」

ト「そうです、ビーマニは全然苦手意識が。一回やってあんまり、っていうか。なんだろうな…楽器的なものがすごい苦手で。」



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楽器経験


梅「え、あの、楽器とかやってたんですかぁ?笑」

ト「いや、全然出来なかったんです。音楽の点数が悪くて。全然吹けないんですよ、ピアニカとか。」

梅「ピアニカめっちゃ似合いそうだけどね笑。」

ト「かなりもう、どたっちゃって。フルートとかやっても、普通に吹いてても、それジャズ?なのみたいに言われたりして。だから本当にコンプレックスが。そういう部分の嫌悪感が今出てるのかもしれないです。」

梅「そうかぁ。僕とかも普通に風景画とか書いたら普通にそんなに上手くないんだよね。素人より上手いけどー、みたいな。講評とか、絵描いた人の絵を先生が上手い順に並べるんだけど、多分20人中7位とか、そこらへんのコンプレックスは認める。あー、それも共通してるんだ、へー!本当に音楽は学んだりしないの?」

ト「学ぶ…、ないですね。僕はほとんどもう作れないんで、作っている人を見て、もうちょっとこうやったほうがいいんじゃない?とか、上から言うような立場でやってるんですけど笑。」



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tomadくんと嘘くんの共通性


梅「だから嘘くんと結構かぶるんだよね。年齢も一緒だしさ。」

ト「でも、やっぱり嘘くんがいろんな人を集めてやってきたのはすごいっていうか、今までに全然ない流れだったんで。」

梅「共通意識みたいなのはある?似てるなていうか。」

ト「似ているなっていうか、まぁあんまりよく分からないなっていうかいびつっていうか、なのに面白そうっていうか。似てるなって感じではないんですけど。そういうネットで知り合った人がグループを作って集まってなんかやろうとしてるのっていうかそこの意味では共感してますね。…いびつっていうか今まで見たことない、梅ラボさんとかが出てきて、なんなんだろうこれっていうのはあります。」

梅「でもなんでいびつになっちゃうんだろう。ぐちゃぐちゃ混ざっているものを作ろうとしてやっているわけじゃなくて、自然発生的にそういう人が多いのね、pixivでも。それはマルチネとかでもそうなのかなぁ。」

ト「そう、だからやっぱりすごい勢いで情報を自分で浴びるのかもしれないですけど、それをどうにか形にしようとしている感じっていうか。」

梅「SNSやっている人とかのスタンスのほうが普通なのかね。」

ト「僕の場合とかもあんまり絞らないで、どんどんRSSリーダーとかあるじゃないですかブログが流れてくるのを絞らないでがーって見まくるみたいなそういうスタンスがやっぱり。それでもいろんなところとかあんまり関係ないのに繋がってくるように見えてきて、そこで浮かび上がってくるものを出している感じがしますね。」


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インターネットの面白さをまとめる、tomadさんや黒瀬さんみたいな人の重要性

梅「まとめスレ的な…」

ト「そうですね。一時期2ちゃんとか見てましたけど、もう今は大体みんなまとめスレをブクマの多い順に見れば大体話題には乗れる。」

梅「そうだよね、まとめスレ的な存在は変に重宝されているというか。例えばpixivとかでも色々な面白い人がいるけど、いざ自分が始めようとすると全然わからないから、とりあえず藤城くんのブクマしているものとかを辿るのとか。情報があまりに過多なのは当然で、それをまとめる人がっていうのはある。」

ト「そうですね。多すぎるからあんまりどこを見たのがいいかわからない状態っていうのはあると思って、それをレーベルなり、藤城嘘っていうフィルターを通したのだけを見ていけばなんか面白いんじゃないか、っていうか。信頼、実感みたいなのがみんなの中あるんじゃないですか。」

梅「内部にコミットしすぎているひとがやっても面白くなくて、全然関係ない人がやっても寒いだけだろうし。その情報過多なものをどれだけやるのかって重要ですね。世代的な話になるけど、僕とtomadくんと嘘くんていうのは5歳ほど離れていてちょうど平成生まれとか言われだしたりしたんだよね。だから僕25歳で、85年生まれなんですけど、すごい微妙な位置なんですね。30代の人とかって結構pixivとかtwitterに抵抗あるんですけど、平成生まれの人はそれが当たり前にある。自然に。僕はその両方でなくって、ツールとしても使っているし、っていうのもあって。マルチネとかは情報過多な世界をどのようにやっているのか。」

ト「でも、梅ラボさんの絵とか見ているとやっぱりそういうのまとめている感じとはちょっと違うんですよね。情報過多ていうかそういう感じがしますね。明らかにそれを無理やりまとめている感じがするんですね。」

梅「うーん。美術の文脈でそういうのをやっている人はあんまりいなくて。自分の年より結構上の人とは決定的に共有できていない気がして、インターネット上ででしか体現できないアッパーな感じ。」

ト「世代で別れてしまうのはしょうがないっていうか。当たり前っていうか」



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上の世代に対してどう提示していくのか、スタンスは?

梅「まぁ普通に戦ったら惨敗するのは目に見えているし、全然違う価値観を提示できるという自信もあるんですけど、ただそれが言葉にならないっていうのもあります。高橋コレクション日比谷の展示は結構冷静に受け止められたというか、懐かしい感じがするとか言われたりしたけど、破滅ラウンジに関しては素で引いていたというか。勿論引かせればいいってわけじゃないですけど、それが個人で出力出来たらいいなってのはあります。」

ト「上の世代に対して…?上の世代も巻き込めたらいいなっていか、インターネットの面白さにいきつつも、僕も影響されるみたいな。だから敵対意識とかは全然持ってないです。」



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質問コーナー

2人に質問です。破滅ラウンジに森美術館でバイヤーやっている人が見に行って、日比谷のカオスラウンジとか黒瀬さんの活動の流れから、美術的なコンテクスト上に乗りつつある現象を見てどう判断するのかって僕も気になっていたんですけど。で、話を聞いたら「金にならないね」って答えが返ってきたんですね。で、tomadさんがやっているレーベルも、果たして今大学生で卒業してそのレーベルで食っていくのかっていうのが気になって。結局カオスラウンジのことに関して言えば今の美術とは西洋の資本主義の流れの中で組み立ってきたものなのでその流れに対して今後やっていくのか、今後どう食っていくのか。

梅「金の話かー…。まぁ僕は単体で作品を作って売れたら勿論金になるわけですけど、カオスラウンジって、すごい…得に破滅ラウンジなんかどっから買えばいいんだよ、みたいな。人を買うのか?とか笑。確かになんでこんなに金取ってないんだろうみたいな感じですよね。」

ト「はぁ…。僕のレーベルの場合はもっと微妙っていうか、今の段階ではほとんどお金には出来ていなくて、ほとんど赤字っていうか自分が楽しいからやっている遊び的な部分もあるんですけど。でもずっとフリーでやっていていいのか、とかあるところではちょっとお金を取ったほうが面白くなる部分もあるんじゃないかって。だから、お金を儲ける重視ではなくて、お金っていうのを絡めたら面白くなるところもあるし、そういう部分を大きくしていけたらそれはそれで楽しいのかなと思うんですけど。」

梅「僕の個人的な意見としては、お金が回っている世界っていうのはそれはそれで狭いクラスタだと思うんですよね。だって僕らからしたらお金が回っている世界って結構遠い世界に聞こえるんですよね。美大の人間とか結構そうなんですけど。自分の絵が売れるとか、自分の作品が社会に繋がるとか結構遠い世界に思っている人が多くて、それはまぁ自分を売ることに真剣じゃないって批判出来るんだけど、見方を変えれば作品を売り買いされている世界とインターネットの世界と美術の世界とアートの世界もあれば、ギャラリーの世界もあり、っていうので、それぞれ重なっている部分もあるんだけれど、別の部分もあって。インターネットのことが資本の流れに乗るかとか、どうそれを使うのかって、どういう作品を作るか、どういう展示を作るのかっていうのと同じくらい内容が変わってくることだと思うんだよね。お金を儲けられないけどどうしたらいいの、っていうのじゃなくて、資本っていう選択肢をどう作品にとりこんでいくのってことだと思う。」

ト「そうですね。だからまぁネットレーベルっていう、今のところ僕のマルチネレコードは無料で聞けているからこんだけ多くの人が聞いてくれて、楽しんでくれている部分って絶対あると思うんですよ、それで面白い動きとか言われている部分もあると思うんですけど、それはそれで。面白いからやっているだけであって。ただそれでも時々ちょっとフリーだから落としてるんじゃないのか的な、あんまり曲のクオリティーはそんなんじゃないけど、みんなフリーだから聞いているんだみたいなのもあるんですよ、そういう批判も。でもそういうのに対する反抗心みたいなので、今後お金を取る方向にいく可能性も少しはある。」



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質問なんですが。例えば、梅沢さんやtomadさんが自分たちが35歳になった時想像、というか、イメージはどんな感じなのか。夢というか、伺いたい。


ト「35歳問題…。僕の場合全く分からないですね。もしかしたら死んでるのかもしれない笑。なんかまぁただ、全然将来設計的なのは見えないんですけど、だから分からないですよね…。とりあえず、今は面白いと思ったことをずっとやっているだけ、みたいな。」

梅「就活とかするんすか?」

ト「就活も多分しなきゃいけないんですよ。」

梅「リクナビとかもブクマしてんの?」

ト「リクナビも、まぁ登録しろみたいなの大学に言われて…」

梅「まぁ僕はリクナビのURL一度も踏まないで卒業したんですけど」

ト「まじすか笑。それすごいですね。まぁ、マルチネレコードとかを法人化して社長になっているとかはほとんど…。今の現状だと難しいですけど、そういうことが出来ていればそれはそれで楽しいと思うんですけど、ただ出来るかどうかっていうのは現状では、どうなんだろうな。まぁやりたいっていう願望はあるんですけど、それがマルチネレコードではないにしても、なんだろうな、レーベルとして音楽をどう届けるのとかを考えたり、そういう役目を担いたいっていうのはあるんですけど。それがまぁ企業として成功しているかっていうのは全く今の段階では分からないですね。」

梅「普通にイベントとか主催するオーガナイザーとかにはならないんですか?」

ト「まぁ、なったところで、それだけでどうにかなるかってのも分からないし。だからまあとりあえずは今面白いことをやって、それでほとんど将来は見えていないです。」

梅「僕は普通に35歳とか、消えてるか、消えてないかですよね。まぁ消えてないように頑張るしかないですよね。普通にアーティストって10年たったら今いる線にほとんどいなくなっているみたいな世界なんで、その自分の作品と自分の考えるイメージをいかに持続しつつ、消えないように頑張るかみたいな感じですね。当然食えてなきゃ意味がないし。そこは、…考えます!」


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