例えば、中学生に喫煙をやめるよう先生が諭す場合、好きな先生に言われるなら効果があるが、嫌いな先生だと、むしろ逆効果になることもある…
▼山岸俊男編『社会心理学キーワード』が挙げる例だが、この後者のようなケースを斯界(しかい)では<ブーメラン効果>と呼ぶらしい。実感としても分かる気はする
▼さて、昨日、菅首相が「段階的に原発依存を脱し、将来的には『原発なしでやっていける社会』を目指す」と表明した。具体性には欠けるけれど、やっと、ビジョンらしきものを語った形ではある
▼では、この問題で大要こう語っているのは誰か? 「過渡的エネルギーとしては、ある程度の期間は原子力に頼らざるを得ないが、できるだけ早くクリーンなエネルギーに転換する基本方針を打ち立て、それに向かっていくのがリーダーの責任」(ニコニコ動画のサイトから)
▼実は小沢元民主党代表だ。「菅嫌い」の筆頭のはずだが、似通った意見ではないか。やはり、「菅嫌い」だが脱原発の方向は同じという人は野党にさえ少なくない。だが、<ブーメラン効果>まではいかずとも、その方針で連帯という話には一向にならない
▼首相の口から出ることに同調するのは、<嫌いな先生>の説諭を聞き入れるような気分かもしれぬ。でも、この国の未来がかかる分岐点なのだ。好悪の感情を超えた「政治の時」だろう。