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■特命調査班 〜マル調〜「原発の町 匿名の“巨額寄付”とは」 2011/07/13 放送

 水曜シリーズ「特命調査班 〜マル調〜」です。

 ある自治体の決算書。

 その中に、12億3,000万円というひときわ巨額のお金があります。

 実はこれ、全額寄付金、それも匿名の寄付なんです。

 一体、誰がなんのために…

 「マル調」が調べていくと、背景には原子力発電所の存在が浮かび上がってきました。




 美浜町丹生漁港。

 午前4時半。

 漁港を出た船は、1キロ沖合の定置網へ。

 漁場は関西電力美浜原子力発電所を間近に望む。

 「大敷網」とよばれる美浜町に伝わる伝統漁法で、ハマチやトビウオなどを揚げていく。

 原子力発電所ができておよそ40年。

 漁業の町は原発と共に歩んできた。

 <漁師>
 「1回(原発)作ったら、やっぱしうちらでも民宿とか生活の生計立てるのに、基本っちゅうもんができとるんで、それに乗らざるをえんちゃうのかな」

 海に面して建つ民宿街。

 夏は海水浴客で賑わうが、原発の定期点検で訪れる技術者たちも大切な顧客だ。

 <民宿経営者>
 「点検があるごとに『三菱電機』とか『重工』さんとか、いろんな方が来られるので、だいたいもう決まってそこを宿にしているから」

 町は、様々な形で原発の恩恵を受けてきた。

 <元美浜町議 松下照幸さん>
 「ずーっとあの運動場の向こうまでがそうですね」

 元・美浜町議の松下照幸さん。

 「マル調」は原発町政を象徴する施設に案内された。

 <松下照幸さん>
 「これが体育館で。人口1万人の町が作るような施設ではない」

 美浜町総合体育館の建設費は「電源三法交付金」で賄われた。

 これは、国から発電所のある自治体に支給される。

 人口1万人あまりのこの町に支払われた交付金は、これまでに219億円に上る。

 体育館だけではない。

 交付金は学校や図書館、福祉施設、道路など町民の生活に密着する様々なものにかたちを変えて町を発展させていった。

 また交付金のほかにも町は毎年、関西電力から法人町民税や固定資産税なども受けていて、実に町の税収の半分を関電に依存している状態だ。

 長年、反原発を訴えてきた松下さんは、こうした「原発マネー」が支配する町の状況を懸念する。

 <松下照幸さん>
 「もう、みんな村社会で、大きなカネが動いていて原発経済が地域を席巻してますから、その流れをよどませるような発言をすることはタブーに近い」

 ところが税金という表立った収入以外にも、原発に関係があるとされる金が町にもたらされているという。

 それは…

 <マル調>
 「当初の予算では1万円で補正もされていないんですが、決算段階では10億円に跳ね上がっています」

 町に入ってくる巨額の寄付。

 しかもその寄付は、なぜか『匿名』だった。


 3基の原発が立ち並ぶ福井県美浜町。

 この町には国からの交付金や電力会社からの税金のほかにも、巨額の「寄付金」がもたらされてきたという。

 「マル調」は役場で町の予算と決算の資料を調べた。

 <マル調>
 「これですね、平成19年度の資料なんですが、当初の予算では1万円で補正もされていないんですが、決算段階では10億円に跳ね上がっています」

 2007年度は10億2,000万円。

 2006年度は12億3,000万円。

 町の収入総額は毎年80億円前後なので、その年は収入の1割以上が寄付金だったということになる。

 しかしこの寄付、これだけ町の財政に大きな影響を与える額にもかかわらず、誰からのものか記されていない『匿名』の寄付なのだ。

 元美浜町議の松下さんは、この寄付の出元を町にたずねたのだが…

 <松下照幸さん>
 「行政側にただしますとね、『(寄付を)出す側がやっぱり“明らかにしないでほしい”という条件で出している』と。だけど、それはどこが出しているかは明白な話しなんですけどね」
 (Q.どこですか?)
 「やっぱり電力会社(と考えている)」

 また、町で聞いてみても…

 <美浜町民>
 「匿名でっちゅうのは他のところは考えにくいんで、まあ原発関連のあれからじゃないのかなちゅう思いはありますけどね、やっぱりね」

 電力会社からの寄付というのが、もっぱらの噂のようだ。

 これに対し関西電力は「地域との共生の観点から、必要に応じて適切な協力を行っている」とするにとどまり、「協力」の中身や時期については「コメントできない」としている。

 そこで「マル調」は、寄付金の出元を探るべく町長を直撃した。

 <美浜町 山口治太郎町長>
 「私の口からは明確にすることはできないんですけどね」
 (Q.電力会社から?)
 「いや、それも、あのー、この全部が電力会社か他の企業が若干でも入っているのか、大部分が他の企業かは、そこらへんもお答えは差し控えさせていただきたい」
 (Q.電力会社は入っている?)
 「それも私の口からは何もお答えできない」


 しかし「マル調」が調査をすすめると、この寄付には不可解なところがあることがわかってきた。

 寄付は、ある特定の期間に集中して行われていたのだ。

 それは…

 「出納整理期間」。

 4月から5月の地方自治体が年度ごとの会計を事務処理する期間で、この期間内の入金は決算書だけに記載されることになる。

 つまり、この巨額の寄付は議会では事前に審議されず議員らは決算書で初めて目にすることになるのだ。

 これでは、議会で使い道などについてチェックできないのではないか。

 町長にただすと…

 <美浜町 山口治太郎町長>
 「決算書自体は審議にかけてますから。数字自体は明確になってくるんですよ」
 (Q.問題はない?)
 「問題はないですね」

 しかし地方行政の専門家は、こうした期間のカネのやりとりについて疑問を呈す。

 <関西学院大学経済学部  林宜嗣教授>
 「いきなり決算の中でドンと出てくるから、どうしても説明責任が軽くなる。うがった見方をすれば出納整理期間中に寄付を求めることがあったとすれば、説明責任を希薄にするテクニックという具合に考えられても仕方がない部分がある」

 さらに匿名でのカネのやりとりは、住民の不信感を招きかねないと指摘する。

 <関西学院大学経済学部 林宜嗣教授>
 「匿名にするということになってくるとですね、なにかこう舞台裏で、密室でそういうやりとりをしているという印象をどうしても持ってしまうんですね。情報をもっとオープンにするということが、まず出発点でしょうね」

 原発のあり方を問われる今、岐路に立たされる原発立地自治体。

 もし電力会社と町との間に不透明な金の流れがあるとすれば、住民の疑心を招きかねないことになる。




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