きょうの社説 2011年7月14日

◎全国知事会議 復興前進へ地方の総力を
 秋田市で開催された全国知事会議は震災復旧や原発対応をめぐり、政府批判一色となり 、菅政権のもとでは国と地方の信頼関係がおぼつかない現実が鮮明になった。菅直人首相はようやく会見を開き、原発に依存しない社会の実現を訴えたが、原発再開への道筋はあいまいなままで、地方の疑問には答えていない。頂点に達した地方の不信感は首相が退陣しない限り変わらないだろう。

 全国知事会は東日本大震災直後に緊急対策本部を設置し、支援物質の提供や職員派遣な どで被災地を支えてきた。対応が後手に回り、迷走を繰り返す政権の現状をみれば、今後の復旧、復興でも知事会の役割の大きさは変わらない。東北では地域主導の復興が求められており、その着実な実行へ向け、知事会としても地方の総力を結集する必要がある。被災地から地方を再生させる大きな構想も併せて示してほしい。

 全国知事会議では、復興特区の早急な制度設計、復興基金の創設に加え、原発の安全基 準や防災対策重点地域(EPZ)の見直しなど、国に求める22項目の提言が採択された。住民の避難範囲が広がった福島の事故をみれば、原発防災は市町村以上に広域自治体である県の責任が重くなったといえる。隣県との連携もこれまで以上に問われることになる。

 原発に関しては知事の間で温度差もみられ、立地自治体の方が慎重に言葉を選ぶ傾向が うかがえた。住民同士の対立や運転トラブルなど、原発と歩んできた地域にはそれぞれ重い歴史がある。今まで原発に関係してこなかった地域が「脱原発」をいきなり叫んでも簡単に同調できない心情も理解できる。知事会はそうした認識の違いにも配慮し、丁寧に意思統一を図る必要がある。

 今国会で国と地方の協議の場が法制化され、6月に社会保障と税の一体改革をテーマに 初めての協議があった。消費税の配分をめぐり、国と地方が財布を奪い合うような印象だったが、地方の声を国政に反映できる仕組みが整ったことは大きな意義がある。地域主導の復興を後押しするためにも、知事会は政策提言力に一段と磨きをかけてほしい。

◎台湾観光客が回復 「通年型」に持ち込みたい
 兼六園や立山黒部アルペンルートなど北陸の主要観光地を訪問する台湾からの観光客が 、東日本大震災の影響による一時の落ち込みを乗り越え、6月に急回復を果たしたのは、風評で生まれた不安感にせき止められていた需要が、金沢経済同友会の訪問団派遣、現地旅行会社やメディアの招聘などをきっかけとして「解放」されたからだろう。これからも官民挙げて積極的に北陸の魅力と安全性の発信に取り組み、この勢いを持続させたいところだ。

 例年、台湾から北陸を訪れる観光客数はアルペンルートの「雪の大谷」を見ることがで きる時期にピークを迎え、その後は落ち込む傾向があった。だが、今年は「春の北陸へ行きたかったけれど、見送った」という人がまだ残っているはずだ。秋の紅葉や冬の雪景色といった観光資源をあらためて強く売り込み、そうした需要を上手に取り込むことにより、季節限定の観光地から脱皮し、課題であった「通年観光」の実現につなげてもらいたい。

 日本政府観光局の2010年の集計では、台湾からの観光客数が最も多かった月は7月 であり、8月以降の数も春とさほど変わらない。実際、東北などの紅葉の名所は、台湾でも人気観光スポットとしてよく知られているという。北陸も、夏以降も台湾からの観光客の目を引き付けることは不可能ではないはずだ。

 台湾からの夏以降の誘客を図るため、石川県は、谷本正憲知事が近く訪問してトップセ ールスを展開する計画を立てている。富山県は先ごろ担当幹部を派遣し、旅行会社や航空会社に旅行商品の販売などを要請した。これらに続く取り組みも考え、波状攻撃で震災による「取りこぼし」をカバーしていきたい。

 台湾に比べれば、韓国や香港などからの観光客の回復はまだまだといった状況のようだ が、これらの国・地域にも「台湾の人々は既に北陸に戻っている」という情報を伝える必要がある。「日本全体が危ない」という風評を消し去るために、これ以上のアピール材料はないだろう。