ハーグ条約:子の利益、十分検討を 返還拒否は限定的

2011年5月20日 11時51分 更新:5月20日 13時23分

 ハーグ条約への加盟方針が20日に閣議了解され、政府は必要な国内法整備に着手する。外務省によると、外国から子供を連れ去ったとして日本政府に寄せられた事例は今月現在で米英など4カ国で209件。条約に加盟していない現状では、連れ去った親は元の国に戻れば、誘拐罪などで訴追されるリスクを負う。世界では年約1300件が条約に沿って処理されているといい、国際結婚の増加を背景に、国際ルールへの参加は時代の要請とも言えるだろう。

 だが、日本人母が子を日本に連れ帰るケースが目立ち、中には子供や母が父から虐待を受ける例も多いという。条約は、子供を肉体的・精神的危険にさらす場合には返還を拒否できると定めるが、世界的には裁判所による返還拒否決定は20%。拒否決定は限定的だと言わざるを得ない。

 こうした実態から「条約加盟は子の利益につながらない」(ある法律家団体)との声がある。一方で、法務省幹部は「日本だけ例外規定を甘くすれば、国際世論の批判を浴びる」と懸念する。この間にも日米では、離婚後に日本に連れ帰られた子供を取り戻そうとした米国人夫が日本の警察に逮捕され、逆に米国の裁判所で日本人の元妻に5億円弱の支払いを命じる判決を得た例も出ている。

 今回の加盟方針は、米欧主要国からの「外圧」を受けて、菅直人首相がG8(主要8カ国)首脳会議の「手みやげ」として準備を急がせたとの指摘が政府内で出ている。早期の立法化と条約加盟を楽観する見方もあるが、法整備に当たっては親の切実な声にも耳を傾け、子の利益を真に追求するための十分な検討が必要だ。【石川淳一】

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