2010年12月25日21時39分
農林水産省は、安値となっている2010年産米を31万トン、来春までに順次買い上げる方針。備蓄を理由に挙げるが、真の狙いは米価急落を止めて農協や野党の批判をかわし、下落分も補償する戸別所得補償の費用が予算を超えて膨らむのを防ぐことにある。 買い上げ費用はまず、全国のコメ農家の7割(生産量ベース)が豊作時の買い上げのために積み立てた基金から出す。作況が「やや不良」の10年産には本来使えないが、制度を変更。約200億円を投じて13万トンを買い、飼料などに使う。残る18万トンは備蓄名目で国費を200億〜300億円投じる。95万トンの備蓄を5万トン増やすほか、備蓄のうち古い05年産の13万トンを10年産に差し替える。
10年産米の卸売価格(60キロ、10月)は前年同月比15%安の1万2781円。さらに下がると、戸別所得補償の費用が足りなくなる可能性がある。ただ戸別補償は本来、農家所得を直接補償しつつ米価は需給に委ねる政策。米価維持策との併用は、補償費負担とは別に「人為的に高めた米価」も消費者に強いる。安くなった国産米も外国産より依然高く輸出にも不利に働く。
減反(生産調整)にも影響する。現行の戸別所得補償は減反に参加した農家にのみ支払う仕組みだが、米価維持策は参加しない農家にも利益をもたらす。減反参加率を下げれば、さらなるコメ余りという悪循環の可能性を高める。(山本精作)