2011年5月19日 11時34分 更新:5月19日 12時22分
内閣府が19日発表した11年1~3月期の国内総生産(GDP)速報によると、物価変動の影響を除いた実質GDP(季節調整値)は前期比0.9%減、年率換算で3.7%減となった。マイナス成長は2四半期連続。東日本大震災でサプライチェーン(部品供給網)が寸断され、主力の自動車生産が減少した上、家計や企業心理の冷え込みで設備投資や個人消費も落ち込んだ。実質GDPのマイナス幅は市場の事前予想(マイナス2%程度)を超え、震災が日本経済に与えた打撃の大きさが鮮明になった。
与謝野馨経済財政担当相は同日の会見で「今回のマイナスの大部分は震災の影響」と指摘。その上で、世界経済が回復していることなどを根拠に「当面は(生産停滞など)弱い動きが続くが、日本経済の反発力は十分強い」と回復軌道への復帰に期待感を示した。ただ、部品供給網の復旧の遅れなどから4月以降も生産活動に支障が出ており、市場では4~6月期もマイナス成長が続くとの見方が大勢だ。
1~3月期のGDPの内訳を見ると、全体の6割を占める個人消費は0.6%減と2期連続のマイナスとなり、全体を押し下げた。震災以降、新車の出荷が滞り、自動車販売が落ち込んだほか、自粛ムードの広がりで外食や娯楽支出などが急減。震災が年明け以降、緩やかながら回復基調が続いてきた消費を直撃したことを印象づけた。
また、東北地方の工場被災や部品供給網の寸断、停電などによる企業生産活動停滞を受け、民間在庫が減少し、GDPを0.5%分押し下げた。震災に伴う企業心理の冷え込みを反映し、設備投資も0.9%減と6期ぶりのマイナスに転落した。
一方、外需はアジア向けを中心に堅調で、輸出は0.7%増と、10年10~12月期(0.8%減)から改善。内閣府は「震災がなければ、さらに輸出が伸びた」と分析した。一方、原油高などを主因に輸入も2.0%増となり、外需全体のGDPへの寄与度はマイナス0.2%だった。
物価の動きを反映し、より生活実感に近い名目GDPは、前期比1.3%減、年率換算で5.2%減だった。
同時に発表された10年度の実質GDPは前年度比2.3%増で、リーマン・ショック前の07年度以来のプラス成長となったが、政府見通し(3.1%)には届かなかった。総合的な物価指標である10年度のGDPデフレーターは1.9%減で、1955年の統計開始以来最大の下落幅となった。【坂井隆之】