東京電力福島第1原発事故の要因になった長時間の全交流電源喪失について、内閣府原子力安全委員会のワーキンググループ(WG)が93年、炉心損傷に至る恐れがあると指摘しながら「考慮する必要がない」とした国の規制指針を追認する報告書をまとめていたことが13日、分かった。WGは当時非公開で、報告書も開示されなかった。不透明な原発の安全対策が改めて論議を呼びそうだ。
WGは原子力施設事故・故障分析評価検討会に設けられ、5人の専門委員、東京電力など「外部協力者」4人の計9人で構成。全電源喪失は外部電源と非常用電源がいずれも失われる現象で、米国では実際に起きた。そこで、WGは91年10月~93年6月、国内外の全電源喪失の事例や規制内容を調査、検討した。
報告書では、「全交流電源喪失が長時間に及ぶ場合、炉心損傷など重大な結果に至る可能性がある」と指摘。しかし、(1)日本では過去に事例がない(2)国内での外部電源喪失の頻度は米国の10分の1と少なく、30分以内に復旧できる(3)非常用電源の起動に失敗する確率も低い--などと分析。「電源系統の信頼性は現状で高く、全電源喪失の発生確率は小さい。原子炉が重大な事態に至る可能性は低い」と結論付けた。
報告書について、内閣府の加藤重治審議官は同日の会見で「当時、どのような議論があったのかを洗い出したい」と述べた。【岡田英】
毎日新聞 2011年7月13日 22時13分