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CO2:全原発停止で排出量16%増 福島10基では3%

 国内の商業用原発全54基を停止して火力発電に切り替えた場合、二酸化炭素(CO2)排出量が1年間で最大2.1億トン増えることが12日、環境省の試算で分かった。温暖化防止の京都議定書では、日本は08~12年の温室効果ガス排出量の平均値を1990年比6%削減する必要がある。CO2を出さない原発がすべて停止すると、排出量を90年比16%押し上げ、巨額の排出枠購入を迫られることになる。江田五月環境相が同日の衆院復興特別委員会で明らかにした。

 政府は原発に対する新たな安全評価を実施し、定期検査で停止中の原発も確認後に運転を再開させる方針。ただ、立地自治体の不信感は強く、来年3月末までに自治体が再開を了承しないと、全原発が停止しかねない。

 環境省によると、原発を全基停止し、火力で代替した場合、CO2排出量は年1.8億~2.1億トン増加する。国内の温室効果ガスの排出総量は90年度の12億6100万トンに対し、09年度は12億900万トンで4.1%減にとどまる。6%削減を達成できない場合、「排出枠」を海外から購入する必要がある。国内排出枠取引価格は1トン1200~1300円で、排出増の全量を排出枠購入で相殺すれば、最大年2700億円の負担が生じる。

 一方、東京電力の試算によると、福島第1、第2原発の10基を停止、火力で代替した場合、排出量は年約4100万トン増え、国内の排出量を約3%押し上げることも判明した。排出枠購入でコスト増は年500億円超。浜岡原発を停止した中部電力も年1200万トンの排出増を見込み、年150億円超のコスト増となりそうだ。

 環境省の試算が電力各社の火力(石炭、石油、LNG=液化天然ガス)の平均値で算出したのに対し、東電は石油、中部電はLNGで換算。東電については、CO2排出量が石油より約4割少ないLNGも使うため、現実の排出量は試算より少なくなりそうだ。

 ただ、長期的に原発の稼働が低迷すれば、温暖化対策との整合性を問われるのは確実。政府が掲げる20年の排出量を90年比25%削減する目標についても、見直しが検討課題となりそうだ。【立山清也】

毎日新聞 2011年7月13日 2時31分

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