【今だから語れる涙と笑いの私の酒人生】大槻ケンヂ(ロックミュージシャン&作家)
【芸能】
2011年7月13日 掲載
中野が地元の“中央線人間”なんでシャレた店を知らないんです。
――ミュージシャンの酒の飲み方はすごそうだが。
んもぅ、ひどい人はひどい! 僕も経験ありますけど、ライブででかい音出して「ワー!!」って叫んで体も脳も興奮して寝られないから、ライブ終わってから翌日の昼まで飲んでる人はザラにいた。僕は食べながら飲んで12時には帰るタイプですけど(笑い)。後日談で、どこのバンドが大喧嘩したとか聞いてましたね。
――女絡みの失敗談は?
20代の頃、女の子をどうにかしようと飲みに連れ出しても、僕、サブカル系オタク系の人間なので、その頃凝ってたUFOの話しちゃって。アダムスキー型とかコアな(笑い)。で、どうにもできなかった。ミュージシャンの中には「オレは六本木でしか飲まねえ」って人は多いけど、僕、地元が中野の“中央線人間”で、飲むのは中野、高円寺、阿佐ケ谷だからシャレた店を知らない。
亡くなられた飯島愛ちゃんから20年前に「友達がアンタのファンだから今から行くからぁ」って電話がきた夜、誰もが逃げ出しそうなスモーク張りのシルバーのベンツが僕の住まいの前に止まって、愛ちゃんが運転席から「どっか飲みに連れてってよぉ! あたしは運転だから飲まないけどさ」って。“どうしよう”って焦った僕は高円寺の「時代屋」ってどうでもいい飲み屋に連れてっちゃった。居酒屋だけど一応、洋風。股下ギリギリのボディコンに日焼けした愛ちゃんが店に入った時の店員さんのポカンとした顔、今でも覚えてます。結局、僕のファンという子とはうまくいかなかった。「時代屋」で引いちゃったんだろうなあ。
●最近は通風で酒は控えめに
――年を重ねて持病があり、最近は酒を控えなければならないらしい。
実は、痛風なんです。30代の頃はビールを2缶飲んでからライブに出てました。気が弱いから、ちょっと飲んでから人前に出たくて、2本飲むとテンションが高くなる。で、ステージの最中もお客さんにあおってもらって1缶を一気飲みする。痛風になっても、発作は起こしてないんですが、全身悪くてガタガタな状態だから「飲んでライブやったら死ぬな」と思った。
ハードロックって本当に疲れるんです。ライブの後って、軽トラックに「ボン!」と追突されて倒れたくらいに疲れてる。オタク系だから基礎体力ないし、ハードロックやりながら酒を飲むのは本当に危ないんですよ。2時間半も絶叫して、お客さんをあおるMCでも叫ぶので、ステージで飲んだとたんプチッと血管切れるかもしれない。なのに、最近もお客さんに「一気! 一気!」って懐かしの80年代一気飲みを盛り上げてもらって飲んでます。それがお客さんとのコミュニケーションっていうか盛り上げになるから。でもお客さんのほうも「そろそろオーケン、危ないんじゃないか」って心配して見てるけど(笑い)。
今は、50歳になったら弾き語りのライブしようかと思って、その時のためにアコースティックギターの練習を地味にやってます。お酒はやめられないだろうから、ゆくゆくはギター一本持って、土地土地の酒場で弾き語りツアーをやれたらいいかなあなんて。
▽おおつき・けんぢ 1966年生まれ。82年、ハードロックバンド・筋肉少女帯のボーカルでデビュー。バンド活動の傍ら、サブカルのコラム、小説など作家業でも活躍。小説「グミ・チョコレート・パイン」が大ヒット。8月6日(土)、ROCK IN JAPAN FESに筋肉少女帯がライブ出演。最新アルバムはバンド「特撮」の「5年後の世界」が発売中。